あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 起業編大日本技研に聞く(4/5 ページ)

» 2012年10月25日 10時04分 公開
[種子島健吉,ITmedia]

アニメエンディングクレジットに登場

―― なるほど、そのときの売り上げで「儲かった」でおしまいでなく、技研の未来が切り拓かれたのですね。発想の転換で、フィギュア制作時代には考えられなかった、大逆転劇ですね!

田中氏 一度うまくいくと、どんどん良い方向へいくようで、「TRIGUN」と同じ少年画報社さん刊、平野耕太先生のマンガ「ヘルシング」に登場する「ジャッカル」という銃も制作しました。その後、「ヘルシング」がアニメ化されると聞き、アニメ制作会社に「参考にしてください」と「ジャッカル」のサンプルを送りました。マンガというのは、けっこうコマによって登場する銃の形状が変わってしまうことがあり、造形の際に苦労することがあるのでアニメ版の作画に役立ててもらおうと思ったんです。送ったマンガ版「ジャッカル」は、アニメ版の設定のベースにしてもらえました。だから、アニメ版「ヘルシング」のエンディングには「大日本技研」がクレジットされているんです。

画像 マンガ「ヘルシング」に登場する「ジャッカル」を立体化した「無可動版 ジャッカル」(絶版)。アニメ版制作の際に、作画参考になるようにと送ったことで、アニメに大日本技研がクレジットされることになったという。東京マルイ製「ベレッタ92Fミリタリーモデル」を組み込むことで、ガスブローバックさせることができる「ブローバック版 ジャッカル」(絶版)もある

画像 「ジャッカル」のパッケージ。原作者、平野耕太先生の書き下ろしイラストを使用している

※すべての画像は大日本技研、あるいは版権元に当記事で使用するための許可を得て掲載しています。転載はご遠慮ください。


常識に縛られずに自由な発想で

―― それはうれしいことですね。そのように認知されるようになった、成功したといい換えても良いと思うのですが、一番の成功の秘訣はなんだったのでしょうか?

田中氏 やはり同業他社がいなかったから、これが大きな要因ではないかと思います。模型の世界の人は、模型やガレージキットというものは、何分の一という「スケール物」であるという固定観念があります。もう自分のことは忘れてしまわれているかもしれないのですが、以前師事していて、今でも私が師匠だと思っているモデラーの速水仁司先生に、「ゴングを1/1で、中にエアガンを組み込めるように作ろうと思っているのですがどうでしょうか?」と聞いたことがあります。そうしたら、「なんで1/6スケールモデル(ドールのサイズ)で作らない?」と心底、不思議がられました。

 ガンプラなら1/144、1/100、フィギュアなら1/8、1/6で作るものであるというのが模型の世界の一般常識ですから、マンガやアニメに登場するアイテムを原寸で作るという発想がないのです。だからといって、ガンマニアでモデルガンのカスタムをやっている人が「ゴング」を作れたかというと疑問です。実銃と同じく1/1が前提だとはいえ、モデルガンのカスタムには、プラ板やパテの素材を使ってモデルを作り上げるフルスクラッチという概念がないのですね。モデルガンやエアガンの世界では、多くのカスタムパーツが発売されていてパーツ交換や改造をするのが主流なんです。

 先ほど話したように、私はプラモデルをほとんど作ったことがなかったので模型の世界の一般常識をすり込まれておらず自由に発想できたし、銃が好きでなおかつフィギュア制作の経験もあった。そのため、両方のジャンルの間にぽっかり開いた隙間に、上手く入り込むことができたんです。技研の顧客は、アニメ好きで、銃好きで、ガレージキット好きというそれぞれは多数かもしれないけれども、すべてが被る人は少数というピンポイントな顧客層です。ただ、そのピンポイントなところへの製品投入は我が社しかしていない。競合他社がない状態ですから、顧客は多くても過当競争気味のアニメ関連製品に比べて堅実だといえます。

流行をどう捉えるか

 プロになりたいという人は技術はそれなりにあると思います。でも、陥りやすいのがそのときの流行にいってしまうことです。例えば「エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)」が流行ればエヴァキャラだらけになります。そこで慣れていないと、設定イラストのままのポーズで作ってしまうんですね。そうなるとただでもエヴァキャラだらけの中で、確実に埋没してしまいます。だから、「設定画のままがそのキャラなんだ」というのではなく、ポーズ、衣装などを工夫することで自分なりの味付けをする必要があるんです。

 もしそれでも流行に乗るというのなら、短いスパンで誰よりも先に徹底的に乗り続けるとか、ほかの人は作らない大きいスケールで作るとか、そのキャラの一般的なイメージと違った方向性でエロティックにしてみるとか、とにかく違い、差異をつけることです。私の場合は自分が好きなことと、みながやっていないことがちょうど合致しているところを見つけることができたということなんですね。

「機動戦士ガンダムSEED」にもデザイン協力

―― 2次元(マンガ)から3次元(ガレージキット)が作られて、3次元(ガレージキット)を参考にまた2次元(アニメーション)が作られてというのはおもしろいですね。しかし、作品にクレジットされるのは大日本技研としても快挙だし名誉ですよね。

田中氏 社名といえばアニメ「機動戦士ガンダムSEED」にもあるんですよ。やはりデザイン協力としてなのですが、エンディングに「大日本技研」の文字がクレジットされています。

―― え! MS(モビルスーツ)の武装デザインでもしたんですか?

田中氏 これといって新たに「SEED」のために何かしたのではないのですが、デザイン協力に「インパクトのある会社名があったらおもしろいじゃないか!」という理由でクレジットされたらしいんです(笑)。ちなみに、地球連合軍が使う制式拳銃の設定画には、製造メーカーとして製作した社名が刻印されていて、これが大日本技研を意味するPOSEIDONになっています。これは、ファーストガンダムに登場する「連邦軍制式拳銃」を作って当日版権を取得してJAF-CONというイベントで限定販売した際に、これを平井久司さんに贈らせてもらったのがきっかけです。その「連邦軍制式拳銃」を参考に「連合軍制式拳銃」を作画したということで、デザイン協力という理屈は一応ついています。まあ、キャラクターデザイン担当の平井さんの趣向なのですが、「コレは技研で商品化しなさい!」というメッセージだとひとり合点して、キャラホビで「連合軍制式拳銃」のガレージキットをリリースしました。

画像 アニメ「機動戦士ガンダムSEED」の「連合軍制式拳銃」(イベント限定販売品)。アニメ「機動戦士ガンダム」(ファーストガンダム)に登場する「連邦軍制式拳銃」を大日本技研が立体化。それを参考にして作画された、「連合軍制式拳銃」の立体化という入り組んだ事情によるガレージキットである。そのため、「SEED」のエンディングクレジットには「大日本技研」の社名があるという

 そのように勝手に採用していただいたこともあれば、こちらで勝手にやってしまったこともありました。アニメ「最遊記」の「昇霊銃」(絶版)を作ったことがあったのですが、テレビ版のディティールを細かくして技研モデルにしてしまったところ、映画版では技研モデルに準じて描かれることになりました。あのときもクレジットにデザイン協力として入れていただいたのですが、アニメーターさんの余計な仕事を増やしてまったのではないかと、なんだか申し訳なかったです。造形中はついつい楽しくなってしまって、原作のデザイン以上に凝ったデザインにしてしまうことがあるんですね。

 技研のホームページで「50人のリクエストがあればその銃を作ります」という企画もしたことがあります。最終的にニトロプラスさんのPCゲーム「吸血殲鬼ヴェドゴニア」の銃剣付ハンドガン、「レイジングブル・マキシカスタム」を制作することになったのですが、その打ち合わせにうかがったところ「いついらっしゃるかと、お待ちしてました」と迎えられてビックリしたという。ニトロプラスのみなさんは銃器関係がお好きで、「レイジングブル・マキシカスタム」が技研の次回作候補になっていたのもとっくにご存じだったんですね。

 ニトロプラスさんとはその後もお付き合いさせていただいていて、PCゲーム「ハローワールド」には技研オリジナルデザインの「雷閃(らいせん)」が登場しています。登場の経緯は、「雷閃」は技研オリジナルデザインなので、次回作に使ってもらえないかと提案したところ劇中の小道具として採用してもらえたというものです。せっかくだからと、パッケージを「ハローワールド」版にしたバージョンの「雷閃」も販売しました。

画像 大日本技研オリジナルデザインの「雷閃」(絶版)。内部に、東京マルイ製電動ガンM16シリーズが組み込み可能だ

 特に女性キャラの持つ銃を制作する際は心がけているのですが、版権契約の話をする中でパッケージにキャラの画像を使用できるようお願いしています。やはり製品の箱が並んだとき、その箱が銃だけのヴィジュアルなのか、銃を持ったキャラクターのヴィジュアルなのかで分かりやすさ、見た目の印象がまったく違って売り上げに影響大なんですね。

画像 「雷閃」の「ハローワールド」バージョンパッケージ。女性キャラのヴィジュアルは、ゲーム中のシーンを組み合わせたもの。パッケージヴィジュアルは銃単体のものよりも、キャラクターが構えているもののほうが販売実績が良いそうだ

画像 こちらは士郎正宗先生のマンガ「ドミニオンC1」に登場する「セブロMN-23」のパッケージ。イラストは、士郎正宗先生の書き下ろしを使用している

※すべての画像は大日本技研、あるいは版権元に当記事で使用するための許可を得て掲載しています。転載はご遠慮ください。

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