あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 起業編:大日本技研に聞く(1/5 ページ)
ガレージキットメーカー「大日本技研」をご存知だろうか。そのユニークな製品の発想方法とは? 「Fate/Zero」のアノ銃や「PSYCHO-PASS サイコパス」の銃も制作している。
キャラクタービジネスというと、大手玩具メーカーが展開するのものだというイメージはないだろうか? しかし、素人がサイドビジネスからはじめて起業、いわば家内制手工業の規模でキャラクタービジネスを展開している大日本技研というガレージキットメーカーがある。前編では、そのユニークな製品の発想方法と、キャラクター製品を企画、製造、販売するまでの実際を聞く。アニメ「機動戦戦士ガンダムSEED」や「Fate/Zero」のアノ銃にまつわる逸話も。
(気になる後編はこちら→関連記事:あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 実践編)
社名は「アップルシード」から
―― 本日は、皆さんも必ず一度は買ったことがあるのではないでしょうか。マンガやアニメなどに登場する人物やアイテムのキャラクター製品のお話です。立体化するにはどういう過程を経れば良いのか、版権や当日版権などと聞いたことはあるけれども具体的にはいったいどんなものかなど、その道10年以上というベテラン、ガレージキットメーカー、代表取締役の田中誠二氏にうかがいます。テーマが大きく話題が多岐にわたりそうなのですが、フィギュアの作り方といった技術的なことは関連書籍におまかせして、主にビジネスという側面からお話をうかがおうと思っています。まず手始めに、インパクトのある「大日本技研」という社名の由来から教えてください。
田中氏 社名は、士郎正宗先生のマンガ「アップルシード」に登場する企業「大日本技研」からきています。当社の公式ホームページのURLに、www.poseidon.co.jpを取得しているのは、作中「大日本技研」と書いて「ポセイドン」と読ませているためです。活動初期は、主に士郎先生の作品からアイテムを作っていたので、社名を「大日本技研」にすれば、潜在顧客の知名度が「いきなり100%になるのでは?」という期待がありました。もちろん私自身、士郎先生のファンですし。それで登記する前に、この名前を使って良いかどうかを確認したのですが、原作者の士郎先生、版元の青心社さんともに「やめておいたら?」と言われてしまいまいました。
「田中さんが制作するものはちゃんとしているというのは分かっているし、真剣に取り組んでいるのも知っているから、『大日本技研』を使うのはかまわないけれども、ずっと使い続ける社名が『大日本技研』で本当に良いの?」と今後、ほかの作品の製品展開がしにくくなるのではないかなど、自分がまだ若かったこともあって心配していただいてのことだったのですが、自分としてはこれしかないと心に決めていたので、「大丈夫です! 絶対後悔しませんから!!」と、懇願して社名にさせてもらったんです。
「アップルシード」は、「攻殻機動隊」の100年後の物語ですので、「攻殻」にも大日本技研は登場しています。セリフにも社名が出てくるところがありますので、テレビから「大日本技研が……」などと流れてくると、一瞬、我が社のことかと思って、どきっとしますね。
酒屋からガレージキットメーカーへ転身
―― アマチュアの時代もあったわけですよね?
田中氏 大学を卒業してから10年ぐらい、京都で酒屋をやっていました。大学は美術系の夜間部に通っていたのですが、実家が酒屋だったので卒業前から昼間は手伝っていました。兄弟はみな家を出ていて最後に末っ子の自分しか実家に残っていなかったので、そのまま卒業後は自然に酒屋を継ぎました。フィギュア制作などは趣味でやっていたのですが、本業のほうがだんだんと近所に進出してきた量販店に押されて売り上げが少なくなり、あるときから副業のほうの売り上げが追い抜いてしまったんです。それで、ガレージキットの売り上げ、経費などだけに使うための専用口座を銀行に作ってあったのですが、サイドビジネスとしてやっていて、「もし資金が300万円貯まったら法人化して有限会社にしよう」「1000万円貯まったら株式会社にしよう」と計画していたのが実行できたんですね。当時は、株式会社の設立に1000万円が必要だったんです。もし売上が逆転することがなかったら、今頃、京都でコンビニの店長をやっていて、サンライズさんやニトロプラスさんのキャラクターグッズの棚を作っていたかもしれません。
フィギュアが人気になった作家さんがメーカーから原型制作の依頼が来て本業をやめてフリーの原型師になったり、コミックマーケットで人気になった同人作家さんがプロのマンガ家としてデビューというケースは多いと思うのですが、自分のように起業してガレージキットメーカーになったというのは珍しいケースだと思います。
フィギュアはあまり売れなかった!?
―― いま大日本技研のラインアップを見ると、武器やロボットのイメージが強いのですが当初からそういったものを得意としていたんですか?
田中氏 いやーそれが、ガレージキットを作り始めた頃は、フィギュアなどを作っていたんですよ。
―― え!? そういうイメージはなかったです。なんでやめてしまったんですか?
田中氏 あんまり売れませんでした……。
―― あ、触れてはならないところでしたか。ということは、田中さんはプラモデルやフィギュアを作るところから始めたということなんでしょうか?
田中氏 私は、ちょうどガンプラ(アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル)世代に当たるのですが、ガンプラはおろか、自動車や飛行機、船なども含めてプラモデルをほとんど作ったことがないんです。模型に関わるようになったのは、大学の造形演習の課題として石粉粘土でフィギュアを作ったのがきっかけです。「フィギュアを作るのっておもしろいかもな」と思っているタイミングで、高校時代からの友人が、作ったフィギュアをガレージキット化するからといって、手伝いを頼まれました。そうこうしているうちに、私もその道に進んだという……。でも、友人が大学卒業後、他業種に就職して模型の世界からは足を洗ってしまい、私だけ続けることになるとは思いませんでした。
―― なるほど、フィギュアはいまひとつの人気だったとのことですが、大日本技研の武器系ガレージキットは好評ですよね?
田中氏 当初作っていたのはアニメキャラなんですが、リアル寄りのファンタジー系のフィギュアが私本来の作風だと思っています。ガレージキットの制作者にも得意分野があって、小型の作品だけ作る人も多いのですが、私はアマチュアフィルムのプロップ(小道具)製作を手伝っていたことがあるので、1メートルを超えるアイテムも作ったりしていました。アニメ「魔法騎士レイアース」に登場する剣を作ったこともありますよ。実はフィギュアよりもこの剣が人気で、120本販売しました。
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