あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 起業編大日本技研に聞く(1/5 ページ)

ガレージキットメーカー「大日本技研」をご存知だろうか。そのユニークな製品の発想方法とは? 「Fate/Zero」のアノ銃や「PSYCHO-PASS サイコパス」の銃も制作している。

» 2012年10月25日 10時04分 公開
[種子島健吉,ITmedia]

 キャラクタービジネスというと、大手玩具メーカーが展開するのものだというイメージはないだろうか? しかし、素人がサイドビジネスからはじめて起業、いわば家内制手工業の規模でキャラクタービジネスを展開している大日本技研というガレージキットメーカーがある。前編では、そのユニークな製品の発想方法と、キャラクター製品を企画、製造、販売するまでの実際を聞く。アニメ「機動戦戦士ガンダムSEED」や「Fate/Zero」のアノ銃にまつわる逸話も。

(気になる後編はこちら→関連記事:あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 実践編

社名は「アップルシード」から

―― 本日は、皆さんも必ず一度は買ったことがあるのではないでしょうか。マンガやアニメなどに登場する人物やアイテムのキャラクター製品のお話です。立体化するにはどういう過程を経れば良いのか、版権や当日版権などと聞いたことはあるけれども具体的にはいったいどんなものかなど、その道10年以上というベテラン、ガレージキットメーカー、代表取締役の田中誠二氏にうかがいます。テーマが大きく話題が多岐にわたりそうなのですが、フィギュアの作り方といった技術的なことは関連書籍におまかせして、主にビジネスという側面からお話をうかがおうと思っています。まず手始めに、インパクトのある「大日本技研」という社名の由来から教えてください。

田中氏 社名は、士郎正宗先生のマンガ「アップルシード」に登場する企業「大日本技研」からきています。当社の公式ホームページのURLに、www.poseidon.co.jpを取得しているのは、作中「大日本技研」と書いて「ポセイドン」と読ませているためです。活動初期は、主に士郎先生の作品からアイテムを作っていたので、社名を「大日本技研」にすれば、潜在顧客の知名度が「いきなり100%になるのでは?」という期待がありました。もちろん私自身、士郎先生のファンですし。それで登記する前に、この名前を使って良いかどうかを確認したのですが、原作者の士郎先生、版元の青心社さんともに「やめておいたら?」と言われてしまいまいました。

 「田中さんが制作するものはちゃんとしているというのは分かっているし、真剣に取り組んでいるのも知っているから、『大日本技研』を使うのはかまわないけれども、ずっと使い続ける社名が『大日本技研』で本当に良いの?」と今後、ほかの作品の製品展開がしにくくなるのではないかなど、自分がまだ若かったこともあって心配していただいてのことだったのですが、自分としてはこれしかないと心に決めていたので、「大丈夫です! 絶対後悔しませんから!!」と、懇願して社名にさせてもらったんです。

 「アップルシード」は、「攻殻機動隊」の100年後の物語ですので、「攻殻」にも大日本技研は登場しています。セリフにも社名が出てくるところがありますので、テレビから「大日本技研が……」などと流れてくると、一瞬、我が社のことかと思って、どきっとしますね。

画像 お話をうかがった大日本技研、代表取締役の田中誠二氏。かたわらにあるのは、氏が制作中の「PDFクラフト スコープドッグ1/1」(の左脚部)である

画像 「アップルシード」に登場する社名「大日本技研」使用を許可してくれたという、士郎正宗先生の近著「INTRON DEPOT 5 -BATTALION-」。青心社刊。A5判変型並製。価格2520円。大判仕事集シリーズ「INTRON DEPOT」シリーズの8年ぶりの新刊で、「アシュラファンタジー」「ファイアーエムブレム」「RF-ONLINE」など6つのゲームやアニメ企画に関する氏の仕事が完全収録されている

※すべての画像は大日本技研、あるいは版権元に当記事で使用するための許可を得て掲載しています。転載はご遠慮ください。


酒屋からガレージキットメーカーへ転身

―― アマチュアの時代もあったわけですよね?

田中氏 大学を卒業してから10年ぐらい、京都で酒屋をやっていました。大学は美術系の夜間部に通っていたのですが、実家が酒屋だったので卒業前から昼間は手伝っていました。兄弟はみな家を出ていて最後に末っ子の自分しか実家に残っていなかったので、そのまま卒業後は自然に酒屋を継ぎました。フィギュア制作などは趣味でやっていたのですが、本業のほうがだんだんと近所に進出してきた量販店に押されて売り上げが少なくなり、あるときから副業のほうの売り上げが追い抜いてしまったんです。それで、ガレージキットの売り上げ、経費などだけに使うための専用口座を銀行に作ってあったのですが、サイドビジネスとしてやっていて、「もし資金が300万円貯まったら法人化して有限会社にしよう」「1000万円貯まったら株式会社にしよう」と計画していたのが実行できたんですね。当時は、株式会社の設立に1000万円が必要だったんです。もし売上が逆転することがなかったら、今頃、京都でコンビニの店長をやっていて、サンライズさんやニトロプラスさんのキャラクターグッズの棚を作っていたかもしれません。

 フィギュアが人気になった作家さんがメーカーから原型制作の依頼が来て本業をやめてフリーの原型師になったり、コミックマーケットで人気になった同人作家さんがプロのマンガ家としてデビューというケースは多いと思うのですが、自分のように起業してガレージキットメーカーになったというのは珍しいケースだと思います。

フィギュアはあまり売れなかった!?

―― いま大日本技研のラインアップを見ると、武器やロボットのイメージが強いのですが当初からそういったものを得意としていたんですか?

田中氏 いやーそれが、ガレージキットを作り始めた頃は、フィギュアなどを作っていたんですよ。

―― え!? そういうイメージはなかったです。なんでやめてしまったんですか?

田中氏 あんまり売れませんでした……。

―― あ、触れてはならないところでしたか。ということは、田中さんはプラモデルやフィギュアを作るところから始めたということなんでしょうか?

田中氏 私は、ちょうどガンプラ(アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル)世代に当たるのですが、ガンプラはおろか、自動車や飛行機、船なども含めてプラモデルをほとんど作ったことがないんです。模型に関わるようになったのは、大学の造形演習の課題として石粉粘土でフィギュアを作ったのがきっかけです。「フィギュアを作るのっておもしろいかもな」と思っているタイミングで、高校時代からの友人が、作ったフィギュアをガレージキット化するからといって、手伝いを頼まれました。そうこうしているうちに、私もその道に進んだという……。でも、友人が大学卒業後、他業種に就職して模型の世界からは足を洗ってしまい、私だけ続けることになるとは思いませんでした。

―― なるほど、フィギュアはいまひとつの人気だったとのことですが、大日本技研の武器系ガレージキットは好評ですよね?

田中氏 当初作っていたのはアニメキャラなんですが、リアル寄りのファンタジー系のフィギュアが私本来の作風だと思っています。ガレージキットの制作者にも得意分野があって、小型の作品だけ作る人も多いのですが、私はアマチュアフィルムのプロップ(小道具)製作を手伝っていたことがあるので、1メートルを超えるアイテムも作ったりしていました。アニメ「魔法騎士レイアース」に登場する剣を作ったこともありますよ。実はフィギュアよりもこの剣が人気で、120本販売しました。

画像 田中氏も当初はファンタジー系のフィギュア制作をしていたという。こちらは、アニメキャラではなく新紀元社刊「幻獣ドラゴン」の挿し絵を立体化したものだ

画像画像 アニメ「魔法騎士レイアース」の剣を立体化したもの。左の赤い剣が「光の剣」、右の緑色の剣が「風の剣」

※すべての画像は大日本技研、あるいは版権元に当記事で使用するための許可を得て掲載しています。転載はご遠慮ください。
       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/19/news126.jpg 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  2. /nl/articles/2503/18/news196.jpg 「ひどすぎ」 東京ディズニーランドで“約100人のドジャースファン”が一斉に“迷惑行為” 「やめてほしい」と物議
  3. /nl/articles/2503/18/news208.jpg 「月桂樹銀賞を最年少受章」28歳のバイオリニストが死去、路上に倒れているところを車にひかれる 「純粋で素晴らしい演奏家」共演者が追悼
  4. /nl/articles/2503/19/news041.jpg 「このクオリティーでこの価格」 ワークマン“780円トートバッグ”に支持続々 「コスパ最強」「大正解でした」
  5. /nl/articles/2503/18/news051.jpg ペットボトルをカット→底にエノキタケを押し込んで12日後…… 「わあ〜」“驚きの姿”に「もっと早く知りたかった」
  6. /nl/articles/2503/19/news042.jpg 本当に同じ駅なのか……!? “3番線”と“4番線”で全く違いすぎる“ホームの光景”に思わず二度見 「素っ気なさすぎて草」
  7. /nl/articles/2503/19/news043.jpg 普通のショートヘアかと思いきや→女性が髪をかき上げると…… 「うぉぉぉぉ!!」“まさかの姿”が430万再生「憧れるレベル」
  8. /nl/articles/2503/19/news082.jpg 「これで550円?!」 算数が苦手な民宿オーナーが提供する“激安夕食”が目を疑うレベル、「近くなら毎日通ってる」と驚きの1600万表示
  9. /nl/articles/2503/18/news071.jpg 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  10. /nl/articles/2503/19/news125.jpg マクドナルド、新たなコラボキャラの“シルエット”を公開 すぐ分かっちゃう正体に「懐かしすぎる」「大好きだから嬉しい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  2. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  3. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  4. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
  5. ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  6. 「絶対当たったわこれ」→「は?」 ガリガリ君の棒に書かれていた“衝撃の文章”に「そうはならんやろ」 投稿者に当時の思いを聞いた
  7. コメダ珈琲店で「軽い食事」を注文 → 出てきた“まさかの実物”に思わず大仰天 「逆詐欺ですね」「軽食という名の主食」
  8. 最恐雑草“ヤブガラシ”根元をハサミでチョキッと切ると…… “驚愕の結末”に「すごい」「知りませんでした」
  9. 「笑い過ぎて涙が」 小学生次男、宿題で先生に不正を疑われる→まさかの原因が530万表示 「じわじわくる」 投稿者に話を聞いた
  10. 大阪梅田駅で撮影された“奇跡のような光景”に「今まで見たことない」「本当に贅沢な眺めだ」 全ホームにマルーンカラーが整列
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に