ドイツ語圏の人たちが日本のアニソンを流ちょうに歌うワケは?海外オタク見聞録

YouTubeでドイツ語圏の人たちがアニソンやボカロ曲を日本語で流ちょうに歌っているのを見ますが、日本語とドイツ語は実は音が近いようです。

» 2012年11月22日 12時24分 公開
[松岡洋,ITmedia]

 最近、テレビで外国人観光客への街頭インタビューをよく見かけるようになりました。銀座や秋葉原でのインタビューが多いのですが、特に秋葉原では日本語で応じている方が多いのに気が付かれたでしょうか?

 10年くらい前には日本語を話せる人が非常に珍しかったのですが、最近は日本語を話せる方も多くなってきており、特に若い人ほどその傾向が強いようです。国際交流基金の最新版(2009年度)の調査によれば、教育機関で日本語を学んでいるのは約365万人、前回調査の2006年からは22%の増加となっています。

 この資料によれば、日本語学習の目的として上位から「日本語そのものへの興味」、「コミュニケーション」、「マンガ・アニメに関する知識」と並んでおり、秋葉原でのインタビューで日本語率が高いのもうなずけます。

 海外の動画投稿サイトYouTubeでは日本語でアニソンやボカロ曲を歌っている動画を時折見かけますが、中でもドイツ人やオーストリア人といったドイツ語を母語とする人たちがきれいな日本語で歌っています。これまで筆者が会ってきたさまざまな国の人たちの中でも、ドイツ語圏の人たちが流ちょうな日本語を話すのをたびたび目にしてきました。

 語学の習得には文法や語彙も重要ですが、会話をするためには聞き取ってそれを復唱する訓練が非常に重要になります。英語やフランス語では日本語にはない音が多数あるのに対し、ドイツ語やスペイン語では比較的少ないために聞き取りやすく復唱に有利なのです。ということでドイツ語圏やスペイン語圏の人にとっても日本語を聞き取りやすいのではないか、という仮説に思い至りました。

 そんなとき、東京ゲームショウの夜に開催されたInternational Partyで日本在住のあるドイツ人と出会いました。「狼と香辛料」の賢狼ホロが好きということで意気投合し、ゲームの話などをするうち言葉に詰まり「日本語でいいですか?」と聞いたところ、流ちょうな日本語で返事が返ってきたのです(それまで私は中国人と思われていたらしい!)。

 そこで、日本人にとってはフランス語や英語よりもドイツ語やスペイン語の方が発音しやすいが、その逆はどうなのか確認してみることにしました。

―― なぜ日本に?

「日本のアニメをみて育ったので、日本に来るのは自然の成り行きです」

―― 日本語の勉強を始めたきっかけは?

「アニメで興味を持ち、オリジナルのアニメを観たかったからです」

―― きれいな日本語を話していますが、どこで習ったのですか?

「フォルクス・シューレ(日本語に訳すと市民講座)で10代の頃から習い始めました、高校時代に日本へ留学、その後大学を出て日本で仕事するために来ました」

―― ドイツ語と日本語で使う音が近いと思うんですが、ドイツ人からみてどうでしょう。

「無い音もあるけど近いと思います、ただイントネーションは逆ですが」

―― ドイツ人がきれいな日本語を話すのは、音が近いことが有利になっているのではないかと私は考えているんですが。

「それは思いますね、その意見には賛成します」

International Partyの様子

 まだ私の仮説を補強する材料は乏しいですが、例えば年末になるとあちこちでベートーベンの第九が聞こえてきます。ドイツ語になじみのない方たちがカタカナ表記したドイツ語の歌詞を覚えて歌ってもそれなりに聞こえます。ドイツ語で使用する音が日本語のそれに近いのであれば、逆にドイツ語圏の人が日本語の歌を歌っても同じになるのではないか? そのように考えると、YouTubeでドイツ語圏の人たちがアニソンやボカロ曲を日本語で流ちょうに歌っているのも納得がいくのです。

 10代のころに夢中になったものは、その後の趣味、嗜好に大きな影響を与えます。1980年代に欧州に日本のアニメが大量に輸出され、非常に人気となりました。そのころ子どもだった彼らが成長し、夢中になったアニメの輸出国日本にやってきているのです。

著者紹介

松岡洋は日本のポップカルチャー情報を発信するONETOPI「日本のポップカルチャー」のキュレーター。1980年代に「月刊アスキー」に寄稿。海外で起きている日本ブームについて「なぜ日本に魅せられたのか」を調査している。本連載「海外オタク見聞録」ではその調査で得られた情報やエピソードを紹介する。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」