“艦娘”ともっと戦いたい「艦これ」提督のための「日本海軍ウォーゲームガイド」矢尽き刀折れるまで一緒に奮戦しよー!(2/4 ページ)

» 2013年08月15日 11時55分 公開
[長浜和也,ITmedia]

かつての賑わいが戻ってきたボードウォーゲーム業界

 さあ、この境地までたどり着いてしまった提督諸君! より史実に近い「それらしい」海戦を経験してみたい諸君は、これから紹介する「その先の世界」のウォーゲームに足を踏み外し、いや、足を踏み入れてほしい。ああ! 分かっている! 諸君のほとんどが「艦娘」を育てるためだけにがんばっていることは! でも、君たちの1000分の1だけでもいい。400人の提督がボードウォーゲームの世界までたどりついてくれるだけでも十分だ。ぜいたくは言いません!

 ここでは「“艦これ”から先の世界を知りたいけれど、ボードウォーゲームは初めて」という提督諸君でも、難しくなく時間もかからず、しかし、史実の海軍戦略と洋上作戦、そして、海戦戦術を「それらしく」模擬体験できるウォーゲームタイトルを紹介しよう。ウォーゲームが社会的ブームとなって、かの朝日新聞が「軍国主義の復活」と危険視するほどだったころから30数年、ブームが沈静化して当時のゲームベンダーも専門誌も姿を消し、一時期はウォーゲームそのものの絶滅したかに思えたが、現在、当時の勢いを取り戻しつつある。

 日本語のウォーゲーム専門誌が2誌(別冊的な季刊誌や流通を限った小規模雑誌をいれるとさらに増える)も発行を継続しているほか、SNSによる情報告知によって、会場が満席になるほどの定例会を行っているウォーゲームサークルも少なくない。ゲームタイトルそのものも、米国のゲームや、日本のゲーム雑誌の付録として多数流通するほか、ヤフオク!やeBayなどで過去の旧作が購入できるなど、ウォーゲームの入手性は依然と比べて格段に改善している(ただし、プレミアがついて価格は高騰気味だが)。

 そこで、比較的入手しやすいゲームタイトルだけでなく、新旧の名作を広く紹介したい。また、入門に適したゲームに加えて、本格的なウォーゲームに興味を持った提督諸君のために、より上級者向けの「名作」ウォーゲームも各カテゴリーごとに挙げてみた。

平成の日本ウォーゲームを支える2大専門誌。左は国際通信社の「コマンドマガジン」とその別冊として隔月に発行している「ウォーゲーム日本史」で、右はゲームジャーナルの「ゲームジャーナル」だ。太平洋戦争海戦当時の連合軍のように、長い苦難のときを耐えに耐え、日本のウォーゲーマーを支えてきた貢献は大きい

3年間の太平洋戦争を3時間で疑似体験できる戦略級とは

Victory In The Pacific

 いきなり旧作で申し訳ないが、これほど簡単なルールで太平洋戦争全般を短時間で体験できるウォーゲームはない。ゲームに要する時間は3〜4時間とモノポリー並みだ。ゲームの説明は、こちらの記事を参考にしてもらいたいが、戦艦、空母、重巡は1艦1ユニット。軽巡は省略してるが、日本海軍の重雷装艦北上と大井は登場する。

 マップはエリア式で、制海権を確保したいエリアに艦隊を編成して出撃するのは、艦これと共通だ。戦闘は、ユニットに書かれた火力と同じ数のサイコロを振って、6(技能優秀だったり技術優秀だったりすると5か6)が出ると命中。命中した数のサイコロを振って出た目の合計が耐久力を超えれば撃沈と、簡単なルールながら、空母、戦艦、基地航空隊、陸軍の関係をうまくデザインしていて、それらしく艦隊を編成してそれらしく攻めていかないと日本も連合軍も勝てない。燃料や物資といった補給のルールはないけれど、圧倒的な戦力差で日本軍が消耗していくのは、デザイナーが考える太平洋戦争の勝因と敗因を明確に示している。

 出版から30年以上たつ作品だけに、入手はオークションが頼りになる。ただ、販売期間が長く流通量が多かっただけにeBayなどで出現する機会は比較的多い。ただし、ヤフオク!では、なかなか登場せず、落札価格もやや高めに振れる傾向がある。

Victory in the Pacificは、ヘクスを使わず不定形のエリアで区切り、軍港と基地を配置する。広さの“ものさし”的な区切りというより、太平洋戦争で主要な戦闘が発生した時期や場所に合わせた「ステージ」という概念に近い(写真=左)。戦争中に増援で登場する日本軍と(写真=中央)連合軍(写真=右)。どうみても連合軍は圧倒的

「真珠湾強襲」「太平洋空母決戦」(ISOROKU'S WAR 1941-1943)

 同様に太平洋戦争全般を扱ってルールとゲーム時間が比較的短くすむゲームで、かつ、現在も出荷していて入手が容易なゲームタイトルに「太平洋空母決戦」(ISOROKU'S WAR 1941-1943)と、「真珠湾強襲」がある。どちらも、エリア&ポイントマップと主力艦1艦1ユニットのシンプルな構成ながら、日本軍に補給の概念を持たせてあり、ジリ貧になると動けなくなる悲哀を味わうことになる。太平洋空母決戦は、ウォーゲーム専門誌「コマンドマガジン」を出版する国際通信社が入門書として毎年1冊ずつ発行する「ウォーゲーム・ハンドブック2012」の付録。真珠湾強襲は、やはりゲームジャーナル社が発刊してるウォーゲーム専門誌「ゲームジャーナル」39号の付録だ。それぞれ、本誌に参考記事を掲載していて、ゲームのルールや背景、ゲームデザインまで解説している。

「太平洋艦隊」(Pacific Fleet)

 太平洋戦争全般を扱う戦略級ウォーゲームで、より本格的で、現実的にプレイ可能で、補給に苦しむ日本軍を再現する“日本語ルールのある”上級者向ゲームタイトルを挙げるとするなら、「大日本帝国の盛衰」(ゲームジャーナル)、または、「太平洋艦隊」(ホビージャパン)が候補になる。どちらもヘックスマップで、主力艦2〜4隻で1ユニット。艦隊を動かすには補給ポイントを消費する。大日本帝国の盛衰では海上護衛戦も行える。ただ、個人的には、ルールが“より理解しやすい”太平洋艦隊を勧めたい。ホビージャパンのオリジナルとサンセットゲームズが再販したリバイバル版も、ともに絶版となって久しく、オークションに出現することも少ないので、入手性は甚だよろしくないが、燃料が枯渇して身動きが取れなくなる連合艦隊の苦悩を知るには最も適したウォーゲームだ。

ゲームジャーナルの「真珠湾強襲」は、「太平洋空母決戦」とともに現在でも流通していて購入可能な数少ない太平洋戦争全般を扱う戦略級ウォーゲームだ(写真=左)。「太平洋艦隊」(ホビージャパンのオリジナル版)は、補給システムを非常に厳しく設定したおかげで、中期から終盤になると、燃料が足らずに出撃させたくてもできない軍艦が増えてくる。また、空母戦で消耗した搭乗員の補充が追いつかずに出撃できない空母も続出する(写真=右)

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