“艦娘”ともっと戦いたい「艦これ」提督のための「日本海軍ウォーゲームガイド」矢尽き刀折れるまで一緒に奮戦しよー!(4/4 ページ)

» 2013年08月15日 11時55分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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「え? ソロモン海戦? そうよ、奮戦したわ!」と一緒に言いたい水上戦ウォーゲーム

アイアンボトム サウンド

水上戦闘のウォーゲームでは個艦性能が細かく再現するアイアンボトムサウンドをあえて勧めたい。なお、付属するサボ島マップを利用した「サボイバル」という名作ミニゲームがあったことは豆知識

 戦艦同士の砲撃戦や、水雷戦隊が活躍する夜戦などを扱う水上戦ウォーゲームの入門タイトルは、ホビージャパンの「大日本帝国海軍」が定番、という意見は多い。艦隊陣形と機動を重視して、多数の艦艇を運用しやすくするため、極力シンプルにしたルールデザインが、多くの日本人ウォーゲーマーの支持を得て、空母戦の「日本機動部隊」と並んで、ベストセラーとなった。1986年に続編の「FLEET BATTLES」を出版して、日米英の全艦艇(八八艦隊やダニエルズ・プランで計画していた艦艇も含む)とシナリオを追加し、2004年にはサンセット出版から「聨合艦隊」として再販している。流通量が多かった大日本帝国海軍は、オークションで登場する機会も多い。

 しかし、1艦1艦に対する愛が深い“艦これ”提督には、個艦性能をより細かく再現する「アイアンボトム サウンド」をあえて勧めたい。堂々と戦列を組んだ戦艦群が遠距離から砲撃を打ち合う昼間海戦ではなく、暗闇で近距離から砲撃と雷撃を激しく応酬する夜戦に特化したウォーゲームだ。登場する艦船は、すべて砲塔レベルで数値化し、戦闘解決も、命中弾の判定から装甲の貫通判定、そして損害の程度を求めるといった、細かい手順で行っている。被弾や被雷によって砲塔や機関室が徐々に損害を受けて沈黙していくアイアンボトム サウンドは、艦これに近い感覚で戦えるウォーゲームとなるはずだ。

砲塔1基単位で数値化したアイアンボトム サウンドに登場する“艦娘”たち

幻のレイテ沖海戦

「幻のレイテ沖海戦」は2004年に出版している。自分の記憶では、太平洋戦争の戦術級水上戦のウォーゲームはこれ以降商業ベースで登場していないはずだ

 水上戦のウォーゲームでもうひとつ勧めたいのが、ゲームジャーナル11号の付録だった「幻のレイテ沖海戦」だ。主力艦は1隻1ユニット、巡洋艦以下は2隻から1個駆逐隊で1ユニット。アイアンボトム サウンドの「砲塔1基」のような精密さはないが、「射撃マーカー」(正確には射撃方位盤マーカーと呼ぶべきか)を用意することで、砲術指揮に現実と同じ要素を取り入れることに成功している。

 このウォーゲームでは、目標にした敵艦に通常射撃で命中すると、射撃マーカーが「狭叉」状態となって命中率が向上する。ただし、「狭叉」状態を維持するには艦の針路を変更できないなどの艦隊運動にも制約が発生して、艦隊指揮官は艦隊の機動と砲撃精度の確保とでどちらを有するのかを悩むことになる。これは、実際の砲術指揮でも同様だ。また、艦隊の針路変更も1ターンに2隻までと制限があり、これが実際には制御が困難だった艦隊運動の難しさを反映している。

 相反する砲戦指揮と艦隊運動のバランスをゲームシステムに取り入れつつ、シンプルなルールで海戦を再現しているので、大規模な艦隊を指揮しながら同航戦や反航戦の違いや、陣形と彼我の位置関係による形勢の有利不利を実際に体感できるだろう。艦娘たちが実際の海戦でどれだけの力を発揮するのかも確かめられるはずだ。

戦艦は1隻1ユニットで、甲板と舷側にそれぞれ装甲力を定めている。記載している火力を貫通力は副砲で(写真=左)、主砲の火力と貫通力、命中精度は別ユニットの射撃マーカーに定めている(写真=中央)。射撃を続けて「狭叉」になると射撃マーカーを裏返して命中精度が高くなる。しかし、狭叉状態を確保するには、艦の針路を維持しなければならず艦隊運動に制約が出る(写真=右)

蛇足といえば蛇足なんですが

 この記事を掲載した8月15日は日本人にとって「敗戦記念日」だ(そう、意識的にこの言葉を使っている)。「そういう日にこういう記事はどうなのよ」という意見は多々あるかもしれない。しかし、私はあえてこの日にこの記事を掲載したかった。

 かつて、日本は身の程知らずといえるほどに世界有数の海軍を所有していた。しかし、国際間の問題を武力で解決しようとしたために、その世界有数の海軍が文字通り消滅した。戦後の教育現場における平和教育にあって、軍事的なことは口にするのもタブーとされていて、太平洋戦争で民間人が悲惨な経験をしてきたことは知っていても、日本が巨大な軍事力を保有して、その軍事力がなぜ暴走し、そして、多くの兵隊とともに消滅していったかを知ろうとすると、それだけで教職員が危険視する時代があった。

 そういう時代と比べれば、かつて日本にあったことを艦これをきっかけに知ることができる現代はかえって健全だといえる。「どのようにして」日本海軍が消滅したのか。「なぜ」軍艦とともに多くのものが失われることになってしまったのか、その理由を知るのに、ウォーゲームほど身をもって体験できるツールはない。

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