「ボカロの名作クロスフェード」できる音楽サービス「Songrium」、産総研が公開

Web上の音楽コンテンツの関係性を可視化する音楽視聴支援システム。

» 2013年08月27日 18時32分 公開
[松尾公也,ねとらぼ]

 「気になってるボカロPのマイリス、ぜんぶ見ていきたいけど時間なくて」「あまり知られてない中性的な声質の歌い手を発掘したい」「YouTubeにあがってる洋楽アーティストの歌ってみたを見たい」……といったことに対応できる、いろいろとすごい音楽サービスが公開された。その名は「Songrium」。VOCALOIDを人間らしく歌わせる「ぼかりす」、ニコニコ動画のボカロ曲をサビだけ再生できる能動的音楽鑑賞サービス「Songle」の生みの親、産業技術総合研究所(産総研)の情報技術研究部門が作り上げた「新しい音楽と出会うための仕組み」だ。

 Songriumは、メディアインタラクション研究グループの濱崎雅弘主任研究員がプロジェクトリーダーとなり、デザインと実装で中核となった石田啓介インタフェースエンジニアに加え、後藤真孝首席研究員、中野倫靖主任研究員というぼかりすでおなじみの2人が加わったチームで開発・運用されている。

 昨年発表された「Songle」が、基本的に楽曲1つひとつを分析し、その音楽的構造をビジュアルで示しながら再生し、音楽への理解を深めるというものだったのに対し、今回の「Songrium」は、大量の音楽データの関係性を分析し、可視化することで、視聴者が音楽と出会う機会をさらに広げることを意図している。

 Songriumが収集、解析する楽曲データは膨大だ。10万曲以上のVOCALOIDオリジナル曲と、「歌ってみた」「踊ってみた」などの派生動画が54万本。さらに日々、自動的に収集・分析を続けている。毎月3000曲のボカロオリジナルが投稿されているため、この数字はさらに広がってくる。

 これだけ楽曲が増えてくると、聴くほうもたいへんだ。信頼できる「聴き専」の楽曲評価を参考にしたり、タグ検索したり、投稿システムに組み込まれたレコメンデーションに従ったりする。それでも追いきれないの実情だ。それに対し、音楽的な関係性に基づいて視覚的に整理し、さまざまなインタフェースで見たり聴いたりできるような仕組みが、Songriumなのだ。

 Songriumには3つのインタフェースがある。まずは「音楽星図」。オリジナルのボカロ曲を惑星と位置づけ、その周囲を巡る衛星として、歌ってみたなどの派生動画を配置(「惑星ビュー」)。人気度で惑星、衛星の大きさが変わる。さらに、ユーザーがそこから別の動画に矢印とコメントを付加することで、関係性を記述することもできる。配置としては、右上がアップテンポでノリのいいもの、左下がバラード的なものだ。アップテンポのものが人気なのが分かる。

画像 Songriumの「音楽星図」。楽曲の俯瞰図となる

画像 こちらが派生作品群を可視化した「惑星ビュー」。色や回転速度によって派生作品の量や種類が分かる

画像画像画像 派生作品群の色はオリジナル楽曲に対する派生関係の傾向を表す。例えば青色の回転軌道が目立つ楽曲であれば、歌いたくなる楽曲、赤色なら踊りたくなる楽曲と判断できる

 次に「バブルプレーヤー」。これは、期間で区切ったボカロの歴史を短時間でまとめ聴きできるものだ。期間とニコニコ動画のマイリスから、再生数を基準として連続再生できる。例えば2007年8月から2013年8月まで、250万再生以上のボカロ曲は31曲、これを8分49分でサビだけをクロスフェードで連続再生してくれるのだ。これには、Songleで培われた「サビ出し機能」が使われている。この背景には、VOCALENDARという、ボカロ関係のカレンダーが対応しており、ボカロ界のさまざまなイベントと連動していて、「この頃にこの曲は出てきたんだね」といった感慨にふけることもできる。任意のGoogleカレンダーと対応させることも可能だ。

画像 「バブルプレーヤー」では楽曲が増えていく様子をアニメーションで表示できる

 最後の1つは「歌ってみた」専用のインタフェース「歌声分析」。中野さんが開発した「男女度」を解析する技術を使い、歌い手の歌唱を「女っぽい」「男っぽい」でマッピングしている。画面の上のほうは女っぽく、下のほうは男っぽい。楽曲の中からボーカル部分だけを取り出し、その声を解析するという、高度な技術が実装されているのだ。この技術が発展すれば、ビジュアル系っぽいとか演歌っぽいとかいう歌い方で歌い手を選んでいけるかもしれない。

画像 女声っぽい派生作品が多い

画像 男声っぽい派生作品が多い

 対応する投稿サービスはニコニコ動画とYouTube。現時点でニコニコ動画はボカロ曲のみ、YouTubeはアーティスト公式ページにある楽曲のみだ。YouTubeでは対応するインタフェースは「音楽星図」のみ。楽曲数は1万1000曲、派生動画はおよそ40万本ある。

 SongriumにはChrome拡張もあり、ニコニコ動画やYouTubeにアクセスした場合に、その場でSongriumを使うことができる。また、スマートフォンでアクセスした場合には専用の画面が用意されている。

画像 動画プレーヤーに下にサビ出し機能を挿入して表示される。右隣の操作パネルから惑星ビューや矢印タグなどを見ることができるだけでなく、派生作品群のタグの要約表示(タグクラウド)や投稿日時順のグラフ表示(派生ヒストリー)も見ることができる

 なお、今回からSongleもニコニコ動画とYouTubeに対応するように強化され、対応楽曲が6000曲から一挙に60万曲に拡大した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  3. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  6. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  7. /nl/articles/2412/21/news005.jpg 藤本美貴、晩ご飯に手料理7品 多忙でも野菜とお肉たっぷりで反響 「お疲れ様です」「凄く親近感」【2024年の弁当・料理まとめ】
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」