ボカロ小説で「普段はできないことを全部やりました」 ネット育ちの文芸作家・木爾チレンさんが「蝶々世界」で描いたもの (1/3)
「中高生時代に『神』と呼ばれてました(笑)」――インターネットで小説を書き始め、やがて文芸の世界に飛び出した一人の若手作家はボカロ小説「蝶々世界」で再びインターネットに出会った。
7月末、「蝶々P」の楽曲をオムニバス短編にした小説「蝶々世界」(一迅社)が発表された。蝶々Pはメジャーデビューも果たしている人気のボカロP。一方、小説の作者・木爾(きな)チレンさんは、近年とみに注目を浴びている新潮社の新人賞「女による女のためのR−18文学賞」出身で、純文学も得意とする若手作家だ。
ネットで話題のコンテンツを中高生向けに小説化する流れは最近すっかり定着した感がある。フリーゲーム「青鬼」のように小説がシリーズ累計30万部を超えるヒットを飛ばし映画化されるケースもある。こういった流れは、以前記事で紹介したようなボーカロイド楽曲の小説化から始まっている。
そして「蝶々世界」もまさしくこのジャンルの作品なのだが、読んでみるといろいろな意味で既存のボカロ小説とは違うのだ。そもそもオムニバスであり、共通する特定の主人公がいない。架空の世界である「蝶々世界」で、さまざまなオリジナルキャラクターたちが恋愛したり傷ついたりする姿が、順繰りに描かれていく。しかも内面描写の筆致は、あまり他のボカロ小説では見かけない繊細なものだ。
さらに印象的なのは、作者の木爾さんが原曲の歌詞を元に、自由にイマジネーションの翼を広げていること。描かれているのは、例えば――好意を隠して同性の友人と遊ぶ女の子(「蜂蜜檸檬」)、保健室の先生に好意を抱く心臓病の美少女(「眠り姫の心拍数」)――こうしたキャラクターは、原曲には存在しない。
一方で、これらの設定からもうかがえるように、木爾さんが乙女ゲームや“百合”などの女性ファンの多い近年のエンタメジャンルに通じているのがよく伝わってくる。ボカロ小説の読者に10代の女の子が多いのは有名な話だが、意外にもそういう作品はあまりないのだ。
冒頭で紹介したように、木爾さんは2010年に第9回「女による女のためのR−18文学賞」を受賞し作家デビューした。同賞は「ここは退屈迎えに来て」が話題を呼んだ山内マリコさん(第7回受賞者)など、先鋭的な女性作家を輩出している。こうした文芸系の作家がボカロ小説を手がけるのはちょっと珍しい。
木爾さんは一体どういう経緯でボカロ小説を描いたのか。本人に会って聞いたのは、インターネットで小説を書き始めて、やがて文芸の世界に飛び出した一人の作家が、ボカロ小説で再びインターネットに出会う物語だった。
「あまりにファンすぎて」 きっかけは蝶々Pからの推薦
――今回ボカロ小説を執筆されたわけですが、ニコニコ動画はいつから見ていますか。
木爾チレン(以下、木爾) 私が大学1年生のときに、ニコニコ動画が登場したんです。ボカロは出てきた瞬間から大好きで、「初音ミクの消失」「ハジメテノオト」「タイムリミット」……やっぱり初期の曲の思い入れが強いですね。特に好きだったのが、蝶々Pとryoさんでした。
昨日、EXIT TUNES ACADEMY(※ボカロPが多数出演するライブイベント)に行ってきたのですが、あまり初期の曲がプレイされなくて、ちょっと寂しかったです。でも最近の楽曲では、HoneyWorksなんかも聞きますよ。「スキキライ」とかは大好きです。
――蝶々世界を書くことになったきっかけを教えてください。
一迅社の担当編集者・塩貝麻衣子さん(以下、塩貝) 元々は、蝶々先生(※蝶々P)の推薦だったんです。小説化のお話をした際に、彼から「ファンに木爾チレンさんという小説家がいて、彼女のように自分の曲が好きな人に書いてほしい」と言われたのがキッカケでした。
――蝶々Pはもともと木爾さんをご存知だったんですね。
木爾 あまりにファンすぎて、以前にファンレターを出していて……それでだと思います(笑)。
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