日本で唯一のプロ鉛筆彫刻家ってなに? 鉛筆の芯を削って文字や模様を作るアートがすごすぎる

プロの仕事。

» 2015年07月12日 10時30分 公開

 山梨に拠点をおいて活動している山崎利幸さん。机に向かいながら一心不乱に行っている作業は、なんと鉛筆の芯にほどこす彫刻。そう、山崎さんは「鉛筆彫刻家」なのです。どうやって作ってるの? これ、本当に鉛筆を彫って作ってるの? あとから、くっつけてるんじゃないの? 鉛筆彫刻のあれやこれやが気になります。


画像 黙々と「削り」に打ち込む

画像 気の遠くなる作業

画像

画像 プロ鉛筆彫刻家山崎利幸さん

―― なぜ、このようなアートに目覚めたのですか?

山崎 5〜6年くらい前の夏、テレビでアメリカの彫刻家の作品を見て、精巧にできてるなー、と驚いたことがきっかけですね。そして、その年の暮れの大掃除の時に未使用の鉛筆がたくさん出てきたので、この機に削ってみようかな、という気軽な気持ちで始めました。

―― それで、削ってみてどうだったのでしょうか?

山崎 最初、普通のカッターナイフでアルファベットの「L」だけを削ったんですね。綺麗に作れると思ったらそうではなかった。芯がなんとなく「L」という形をしてるな〜という程度でした。もうちょっと綺麗に削りたいと思って、1本、1本トライしたところ、カッターだと限界があると気づいたんです。


画像 遠くだと分かりにくいけど、よーく見ると鉛筆のてっぺんにA〜Zのアルファベットが

 そこで、文房具屋で使える道具がないかと探しはじめ……、ある時、デザインナイフというものを見つけました。刃先が鋭角になっているので細かいところまで削ることができ、これはいい! と思ってね、今でも使っています。そうした試行錯誤のうちに現在では7〜8点の道具がそろいました。

―― ずいぶん道具が必要なのですね。

山崎 そうですね。まず、鉛筆の木のところだけを削って芯を丸い状態にする。次に、薄い板状にする。そして、そこに文字を掘っていきます。この3ステップでも、使用する刃物は全部違います。道具あって、そこから作品の精度が生まれ始めましたからね。


画像画像 種類の違うナイフで削るカスも大小さまざま

―― なるほど。では作品ですが、何が得意ですか?

山崎 文字が得意です。ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット。直線や直角が多いアルファベットは初心者にも向いています。曲線は難しいですからね。


画像 先端の文字から一文字作ったら、また木の部分を削って次の文字を作る

画像 近くで見るとこんな感じ。芯の太さが3ミリの4B鉛筆が削りやすく、見た目もいい

画像 お守りになりそう……

画像 漢字とひらがなの組み合わせだってお手のもの

画像画像 カーブのあるひらがなもお見事!

画像 書家が書いた文字を下書きせず、頭でイメージして削るそう

山崎 あと、彫っていて楽しいのは鎖のデザインです。


画像 鎖! 芸が細かすぎる

―― え? この鎖、ひと続きの芯からできているのですか?

山崎 もちろんです。ホームセンターに行き、さまざまなタイプの鎖を見て構造を知り、削ってみたんです。たくさん失敗しましたよ。今でもドキドキしながら削っています。うまくできたときは、よし!! と心の中で叫んじゃいますね(笑)


画像 こんなのどうやって作るの? と精巧な腕前とアイディアに脱帽!

―― 集中力が必要ですね。削っているときはどんなことを考えているのですか?

山崎 折れるという危険性はつきものなので、どの作品でも「折れませんよう」と思いながら削っています。この不安はいつになっても消えないのではないでしょうか(笑)。また、もらった人が喜んでくれるように、とか、びっくりしてもらえたらいいな、と思ってもいます。作品を注文してくれる方は、他の人と一緒にならないプレゼントをしたいからとおっしゃるのでね。


画像 3本でメッセージというところがニクい

画像 シャープペンの芯も作品に!

画像 シンデレラの気分になります

画像 秘密の部屋の鍵みたい

画像 幸せが訪れそうなオープンハート

画像 あの細い芯でグラスが!

―― 最後にプロ鉛筆彫刻家として、ひとことお願いします。

山崎 作品を見ていただき楽しんでもらえるとうれしいですが、鉛筆を使う機会が少なくなってきた昨今、筆記用具である「鉛筆」を思い出すきっかけにもしてもらえたらとも思っています。


 「自称・ケズラーです」と言う山崎さんは、生活にあるものをアート作品にして、私たちが忘れかけていることを思い出させてくれているのかもしれません。今後もどんな作品が飛び出すのか、期待できますね。

(茂木宏美/LOCOMO&COMO)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news039.jpg 母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた