ディズニー、ゲームパブリッシング事業から史上三度目の撤退へ 今後はライセンス貸与に専念

「Disney Infinity」生産中止が契機に。

» 2016年05月13日 20時17分 公開
[Minoru UmiseAUTOMATON]
AUTOMATON


ディズニー、ゲーム販売から撤退

 「Disney Infinity」シリーズのゼネラルプロデューサーであるJohn Blackburn氏は、公式ブログにて同シリーズの生産中止を発表した。Blackburn氏は、今回の決断を非常に困難なものであったことを強調し、ファンのこれまでのサポートに感謝の言葉を述べている。「Disney Infinity」は「アリス・イン・ワンダーランド」や「ファインディング・ドリー」のキャラクターが登場するプレイセットのリリースを6月に控えているが、これは予定どおり発売されるのだという。また、これに伴いディズニーは自社パブリッシングをやめライセンス貸与に専念することを、ディズニー・コンシューマー・プロダクトの代表であるJimmy Pitaro氏がWIRED誌に告白している。

熟考を重ねたすえに、コンソールゲームへのアプローチを変更し、これからはライセンスに専念することを決めました。Toys-to-lifeの市場は成長の余地がなく、開発費用の高い『Disney Infinity』の生産をやめるということになります。



Toys-to-lifeサイクルのおわり

 Toys-to-lifeとは、文字通り“おもちゃに生命を吹き込む”という意味を持つビデオゲームのジャンルのひとつだ。フィギュアやアクセサリーのような外観を持ちながら、コンソール機のNFCリーダーにあてるとゲーム内と連動する機能を持つ。2011年にアクティビジョン(現アクティビジョン・ブリザード)から発売された「Skylanders」シリーズがブームの火付け役となり、任天堂からリリースされている「amiibo」もこのジャンルとなるだろう。

ディズニー、ゲーム販売から撤退 画像出典: Nintendo of America

 Toys-to-lifeの市場の成長は著しく、任天堂やアクティビジョン・ブリザード、そしてもちろんディズニーもこのジャンルで多大な収益を得てきた。しかし売上が好調な時期からすでに「Disney Infinity」の生産におけるコストは懸念されており、最終的にその心配があたってしまう結果となってしまった。Pitaro氏がToys-to-lifeの市場に成長の余地がないと述べていた一方で、米国の調査会社NPD Groupの2015年のゲーム市場のデータでは、依然として同ジャンルは成長曲線を描いており、「Lego Dimension」や「amiibo」などの勢いはまだまだ衰えそうにない。そう考えると「Disney Infinity」はひとり負けしてしまった感も否めない。同作の開発の中心になっていた子会社であるAvalancheスタジオも閉鎖されることになり、300名ほどのスタッフが解雇されたようだ。



繰り返す歴史

 また、ディズニーがゲーム販売から手を引くと発表したことも大きなニュースだろう。ディズニーは1988年にWalt Disney Computer Software(以下、WDCS)として、家庭用ゲーム機向けに独自のゲーム事業を開始した。WDCSは当時既存のディズニーキャラクターを用いて、作品のスピンオフのようなかたちでゲームを開発していたものの、ゲームの品質の低さや映画とゲームの性質の違いをよく理解できていなかったことが原因で苦戦し、一度販売を休止していた。しかしながら1993年に「アラジン」や『ライオンキング』といった主要なディズニーのアニメーション作品をもとに他社に委託して開発・発売した作品が成功を収めると、自社で開発し発売する形態から他社にキャラクターを貸し出して開発・発売してもらうという形態を採りつつも再び自社でのゲームの開発にも尽力していった。1994年には新たにDisney Interactive(以下、DI)という名前に生まれ変わったが、ゲームの売り上げは思うように伸びず、家庭用ゲーム機向けのゲーム開発はまたも終了を迎えた。それからはまた他社へのディズニーキャラクターのライセンス貸し出しを増加させ、外部委託によるゲーム開発に注力していく。



 2003年になるとまたしても自社販売を再開することを選択し、Buena Vista Games (以下、BVG)を設立した。DI時代においては子ども向けのゲームに焦点をあてて開発を進めていたが、BVGではモバイルやオンラインなど、ゲーム開発との関係を強めていった。特にスクウェア(現スクウェア・エニックス)と協同で開発した「キングダムハーツ」は大ヒットし、現在でも人気のフランチャイズとなっている。その後BVGはAvalanche SoftwareやPropaganda Gamesといったゲームスタジオを買収、Fall Line Studioなどを設立しニンテンドーDSやWii向けのタイトルの開発を進めていった。2007年には、ディズニーはBVGの名前をDisney Interactive Studios(以下、DIS)に変え、新たなスタートを切ることとなる。DISでは「Disney Infinity」といったタイトルのほかにも「Epic Mickey」を代表とした本格的なディズニーライセンスタイトル、また「Pure」や「Split/ Second」のようなディズニー以外の大型タイトルも開発がおこなわれてきた。しかし、「Disney Infinity」のみならずディズニーのビデオゲーム部門の業績は芳しくなかった。結果として、ディズニーはまたしても自社販売をやめることになった。これでディズニーの歴史上3度目の撤退宣言となる。今後はライセンスの貸与に専念し収益を得ていくようだ。

 ディズニーとゲームはくっついては離れ、またくっついては離れるという合従連衡とも言える不思議な関係にある。世界的に絶大な人気を誇り、数々の有名シリーズのIPを保有しているディズニーでさえビデオゲームの世界では苦戦し続けていることは、興味深い事実ではある。まだまだエンターテイメントとしてディズニーが持つ影響力は強く、ぜひ4度目の自社販売を心待ちにしたい。



関連記事


関連キーワード

ディズニー | ゲーム | ゲーム開発 | 撤退


Copyright (C) AUTOMATON. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/14/news189.jpg 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. /nl/articles/2411/15/news009.jpg 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  7. /nl/articles/2411/15/news058.jpg 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  8. /nl/articles/2411/14/news023.jpg “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  9. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. /nl/articles/2411/15/news187.jpg 「2度とライブ来るな」とファン激怒 星街すいせい、“コンサート演出の紙吹雪”が「3万円で売買されてる」 高値転売が物議
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた