ぞわり! 魚の骨格標本を集めた写真集「魚骨 UO BONE」のリアルさに思わず鳥肌司書メイドの同人誌レビューノート

美しくも荒々しい姿に驚きと畏怖を感じます。

» 2016年11月27日 13時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 今日のご飯は何にしますか? 温かい麺類やお鍋がおいしい時期ですね。それから、ほかほかの白いご飯に焼き魚もしみじみおいしい晩秋……。満腹になったその後で、お皿に残った魚の骨をしみじみ見つめてしまうような同人誌に出会いました。

今回紹介する同人誌

「魚骨 UO BONE」vol.1 A5 20ページ 表紙・本文カラー

著者:いぞらど


同人誌「魚骨 UO BONE」同人誌「魚骨 UO BONE」 白々と深海を泳ぐそのままのような姿と、みっしりつまった歯にぞわっ!

クリーチャー!? いえ、ただの魚です

 まずは写真をご覧ください。「うわ、なんですかこれ!?」と私はのけ反ってしまいました。こちらは魚の骨格標本を撮影した写真集です。黒を背景に浮かび上がる白い骨、レントゲンのような陰影のついたモノクロの写真と、淡く黄色みを帯び、細部の作りまでじっくり見ることのできる2通りのパターンで、いろいろな角度から骨格標本に迫ります。図鑑だって、魚屋さんだって、とかく魚の横顔だけを見ることが多いのですが、鯉の正面顔ってこんなに四角いんですね……。

同人誌「魚骨 UO BONE」 「四角い叫び」とでも名付けたいようなシルエットです

迫力と困惑。魚ってこんなでしたっけ?

 とにかく「私の思っていた魚と違う!」というイメージの瓦解の連発です。あああ、こんなにたくさんの歯を備えている魚がいるんですか。これ粘液を伴って、ホラー映画で陰から襲ってきそうなお顔立ちではないですか。ちょっと特撮映像「巨神兵東京に現わる」を彷彿(ほうふつ)とさせます……。

 タチウオは長い顎を持っているのに、前歯もものすごく強そうなんです。くるんと丸みを帯びた歯のラインはさくっと獲物に突き刺さりそう。その上、歯の先は釣り針みたいにかぎ状になっていて「狙った獲物は逃がさない」的な気概を感じる前歯です。タチウオって、皮がきらきらして、身はくせのない味で……と食べることしか考えていなかったのですが、「一対一で戦ったら負けるかもしれない」とさえ考えてしまう、魚の新たな一面と否応なく向き合ってしまいます。

 日常の中で出会う魚って、食用か鑑賞のどちらかのパターンで出会うのが常で、それらはすっかり手のひらの中に収まる形でイメージが固定されていました。でもこの本に登場する魚たちは、身をそぎ落とした骨格だけになったことで、「魚が生態系の中で他者を捕獲して生きている」という当たり前の、でも見落としていたことを眼前にぱっと見せつけてくれます。

同人誌「魚骨 UO BONE」 かぎ爪みたいな前歯に注目です

細部と見つめ合う、造形美

 骨格の写真を見つめていると、ぞわりと背中に寒気が走ります。それは写真の中に意外な凶暴性を感じたり、固定概念と違う作りを見たときの驚きと畏怖。それが骨格になって、しかも細部までありありと映し出されることに、ぞわぞわが止まりません。

同人誌「魚骨 UO BONE」 あー! 襲われたらひとたまりもなさそうな迫力……

同人誌「魚骨 UO BONE」 こんな歯ってありですか!? インパクト強すぎです!

 一方で、華奢(きゃしゃ)な小骨が規則正しく並んでいるさまや、向こう側が透けて見えるほど薄い骨を、美しいとも思います。エゾクサウオの複雑な、それでいて流線型の骨格は、力強い水墨画の趣を感じますし、皮や肉という質感を無くしたウミスズメの骨格は、精巧なペーパークラフトのよう!

 自然のものが、あるがままそこにあるだけで、恐怖と美しさを持っていることを見せつけられる写真集です。作者さんの骨格標本の実物は近々イベントで見ることができるそうなので、間近でじっくり眺めて見るのも新たな発見があるかもしれませんね。

同人誌「魚骨 UO BONE」 モノクロの流線が優美に見えます

サークル情報

サークル名:いぞらど

次回参加イベント予定:博物クリスマス(2016年12月12〜18日)


今週のシャッツキステ

シャッツキステ モノクロの写真……メイド服も白黒の組合せ! と、背中合わせで意味深な雰囲気を狙ってみたものの、この後「腕を組んだりしてみたい!」「もっとこう、前に手を伸ばす感じで!」と撮る方、撮られる方の要望が謎な方向にエスカレートしていったのでした……

著者紹介

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

関連キーワード

同人誌 | 写真 | 写真集


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」