マンボウ最弱伝説はウソ? 「着水の衝撃で死ぬ」「朝日が強すぎて死ぬ」などの真偽を研究者が判定:司書メイドの同人誌レビューノート
今回はマンボウ研究家が調査結果などをまとめた「マンボウの都市伝説-噂の根源と真偽- ver.3」をご紹介。
「ジャンプで死ぬ」「朝日が強すぎて死ぬ」――など、さまざまなうわさがささやかれているマンボウ。マンボウを生で見たことがあったかどうかさえあやふやな私ですが、なぜか頭に残る強烈なうわさの数々。今回紹介するのは、もはや「都市伝説」と言って差し支えのないマンボウのうわさを、マンボウ研究家さんがずばっと判定する同人誌です。
今回紹介する同人誌
「マンボウの都市伝説-噂の根源と真偽- ver.3」 A5 20ページ 表紙・本文モノクロ
著者:海星夏輝
本当は割と強い生き物、それがマンボウ
いきなり結論から申し上げますと、
- 「マンボウは寄生虫を落とすためのジャンプの着水の衝撃で死ぬ」→ウソ
- 「マンボウは朝日が強すぎて死亡する」→ウソ
ですって! 良かった……マンボウは割と強い子でした。
さらに、
- 「ライフル銃や銛が貫通しない」→真実
えーっ! マンボウはそんな一面も持ってるんですね……。
作者さんは、大学院でマンボウ研究をしたマンボウ研究者さんです。学問としてマンボウと向き合ってこられ、都市伝説の検証方法も論文に当たったり、自分の目で確かめたりと堅実です。検証された都市伝説は全部で27個。そのひとつひとつに根拠を求め、「真実」「一部真実」と判断したものは、ソースとして論文名や資料名をきちんと添えています。誠実にマンボウに、そしてマンボウの都市伝説に向き合っていらっしゃる!
マンボウの姿を正確に伝えるためだけにコツコツ尽くす
一方で、マンボウのうわさをTwitterで発見すると、最初の発言者までたどって接触し、本人から「話のネタとしてツイートしただけで、根拠はない」との証言を得るなど、アクティブな手法も駆使しておられます。それもこれも「マンボウの明らかになっている科学的知識を、より正確に人に伝える」ため……!
作者さんがマンボウ研究を始めたきっかけは「マンボウ研究なつものがたり−岩手編-」という同人誌に記されており、お若いころに戸惑いながらも、ひたむきにマンボウ研究に取り組んだことが丁寧につづられています。
マンボウ愛は研究にとどまらず、こうして地道に調べたことを本にまとめて、間違ったイメージを正そうと、コツコツと活動を続けていらっしゃいました。しかし2014年に、なんとマンボウ都市伝説が大きく揺れ動く事態が発生しました。「マンボウは簡単に死なない」という情報が、一気に世の中に広がりだしたのです。奇跡の逆転劇! しかしそれは、多数のフォロワーを抱える人によるTwitterでの発言が発端。作者さんのあずかり知らぬところで、起こった出来事だったのでした……。
さらにその後、テレビなどでも「マンボウは弱くない」といった特集が組まれることに。その時の作者さんの心境は「筆者が文献に基づいた否定的な情報を提示しなくても、世の中の人はネタはネタであることに気付いたのである。正しい知見が広まったのは嬉しいことだが、筆者の行った行動は何だったのだろうと少し虚しくもなった」というものでした。うう……、うれしいけれど複雑なお気持ち、お察しします……。
都市伝説を追うなら今! ネット情報を紙にまとめる意味
本には、2013年ごろを境にマンボウに関するうわさのバリエーションがぐっと増えたことが、図も交えて解説され、マンボウ都市伝説の盛り上がりが見て取れます。また、2010年のウィキペディアでは「着水した衝撃で死に至ることがある」と書かれていたのですが、2013年には削除されたことなど、時とともにマンボウを取り巻くうわさが変わってきたこともしっかりと記述されています。
司書としては、この「紙に残っている」ことがものすごくうれしいんです。上記のウィキペディアの例もあるように、ネット上の情報は流動的です。日々、変わっていくさまを観察し、まとめて本として残してくれることで、情報が確かなものとして残っていき、後から振り返ることができる。この「振り返り」にはタイミングも大事で、「ものすごく流行っていたけれど、当時を知る人もいなくなり、いつしか忘れさられてしまう」といったことがあると、調べたくとも、もうたどりようがなくなるんです。
こちらの本は、マンボウ都市伝説のこれまでをしっかりと探りつつ、新たな情報も追加しながら、現在のver. 3まで更新されてきました。近年、まだまだマンボウにまつわるニュースが届いているそうです。次はどんな情報がでてくるのか、楽しみになってしまいます。
サークル情報
サークル名:マンボウなんでも博物館
Webサイト:http://ushimanbou.ichiya-boshi.net/manbou-nandemo-museum.html
Twitter:@manboumuseum
ダウンロード販売:http://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ140226.html(ver.1 16ページ分の内容が読める)
今週のシャッツキステ
著者紹介
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作者さん「動いているところを想像してみてもらえるとうれしい」。
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