「論文」と「レポート」は何が違う? どう書き始めればいい?
「人に読まれる文章」とは。
春も半ば、時折汗ばむ陽気もまざるようになり、夏が顔をのぞかせる時期になりました。みなさんそれぞれ、新しい環境にも慣れてきた頃かと思います。
特に、大学生にとって春の風物詩といえば「大学デビュー」です。痛い! 恥ずかしい! というイメージを持たれがちな大学デビューですが、「スタートダッシュ」と言い換えればずいぶんと素晴らしいものです。長い目で見れば、序盤からちんたら歩いてるよりよほど良いんじゃないでしょうか。
そう、大学デビューしたもののイマイチ女子から避けられているキミも、大学デビューしそこねた末脚型のキミも、一刻も早く最高のスタートを切るべきです。もちろん、大学生でないアナタも大丈夫。さあ今から準備しましょう。
……そう、論文を書く準備を。
そもそも論文って何よ
大学生が、卒業に際して「卒業論文」を書くことは、みなさんもご存じかと思います。でもでも、「論文」って、よく考えると何? どんなもの? と思ったことはありませんか?
もしかしたら、当の大学生も、「問題! 論文とは何?」と聞かれると、はっきりとは答えられないかもしれません。
実は、大学に入っても「論文とはどのようなものか」を教えてくれる機会はあまりありません。もしかしたら、現行の日本の教育制度下では、それは求められていないのかもしれません。
だからこそ、いま「論文」について知ることができれば、あなたは一歩抜け出すことができます。大人数の中に埋もれないためにも、ここでアドバンテージをゲットしましょう! 目指せ、知的な大学デビュー!
そこで今回は、「大学学問のバイブル」ともいえる名著『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』(戸田山和久)の内容に沿う形で、「論文とは何か」をご紹介します。単に論文だけではなく、上手で説得的な文章を書くヒントが埋まっているはず。「論文なんて書く予定ないよ!」という皆さんも、そう言わずにちょいと読んでいってください。
そもそも論文とは? レポートとの違いとは?
そもそも論文とは「学問的な研究の成果を発表する文書」のことです。
皆さんの中にも、レポートという形で研究なりをまとめたことがある人は多いと思います。そのようなレポートを書くとき、まずどんな文章で書き始めますか?
「そもそも私がなぜこのテーマを選んだのかというと……」
「まず、○○という言葉の意味を広辞苑で調べてみた。すると……」
これら皆さんにも見覚えのある書き出しは、論文においてはNGです。
大仰な言い方をすれば、「論文は、学問の発展に寄与するための研究報告」なのです。ゆえに、本人の個人的な心情などは不要。従って、研究のきっかけなどは書かないのが普通です(もちろん、高名な学者が遊びゴコロを忍ばせることはあります)。
また、これからより深く知ろうというテーマについて、辞書を持ち出すのは的外れなこと。もちろん、辞書を使って論文を読むのは歓迎されますが、字引に書いてあるような通り一遍の内容を論文に書く必要はありません。
では、論文ではどうやって書き出して、何を続ければよいのでしょうか。
論文の構成は、ざっくり「問題提起→先人の研究結果→それを受けた研究の報告」となります。ここから外れないことが、良い論文の第一歩といえます。そして、書き出しからいきなり本題へ。何の気取りも文学的センスもなく、「○○は、元来××のように考えられてきた。しかし……」のような感じでOK。素直にこの雰囲気を守ったまま、淡々と報告がたどるべきルートを通過していくことになります。
さて、書き出しについては分かりましたが、「論文」と「レポート」の最大の違いはどのような点なのでしょうか。
もちろん「レポート」という言葉に明確な定義はないのですが、ここでは授業の課題として提出が求められるような、まとまった文章のことと考えてください。学術雑誌に載るようなカンタンな報告はここでは除外します。
論文は、基本的に自分で課題を設定し、似たテーマの研究を洗い出し、その上で自分のオリジナルな発見・考察を述べることが求められています。
これに対しレポートは、ある程度方向性が決められた上で、その内容について調べて報告し、場合によっては自分の意見を付加する、という調べ学習的な要素が強いといえます。
つまり、レポートは既存の知識をまとめたものであり、論文は未知の情報を発見したことを報告するものである、といえるのです。「未知の情報を報告する」ことこそが論文の存在意義であり、そのオリジナリティーと正確性が論文の評価を決めます。
そして、完成した論文は無数にある学術系の雑誌に投稿されます。審査を通ると、無事雑誌掲載、発表という形になります。ここで論文としては完結です。ニュースにおいて「○○大学の研究チームによりますと〜」というフレーズが流れた場合は、大抵がどこかに発表された論文に由来する情報なのです。
さてさて、論文、ひいては大学の学問がどんな感じのものか、少しだけ分かっていただけたでしょうか。
「学者は発見とか証明とかしてて実力主義っぽいところがあるのに、書き出しとか細かいところにみみっちい」なんて思われたでしょうか? いやいや、基礎こそが大切。 学生レベルでも、「他人に読まれる」ことを前提とした文章を書くことは、今後にも役に立つ大事な練習になるはず。その点で、研究の道に進まない人にとっても卒業論文は意義深いものだといえるでしょう。
もし、ニュースで新しい学問的発見が登場したら、「地味で細かい作業の果てにこの成果があるんだなぁ」と思いをはせてみてください。
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