コラム
» 2017年07月26日 11時00分 公開

「インターネット」が初めて国語辞典に載ったのはいつなのか?(2/3 ページ)

[西村まさゆき,ねとらぼ]

国語辞典はコンピューターをどう表現したか

 では、インターネットの説明でもよく使われている「パソコン」という言葉そのものはいつ頃から使われはじめたのだろうか?

 調べた国語辞典のうち初版から改訂版がほぼ全てそろっているもので、「パソコン」が収録された年代をまとめてみる。

  • 『三省堂国語辞典』1982年
  • 『広辞苑』1983年
  • 『岩波国語辞典』1986年
  • 『新明解国語辞典』1989年

 おおむね、1980年代には全て収録されている。いちばん早いもので1982年。おそらく「パソコン」という言葉自体はそれ以前、1970年代頃から存在はしていたと思われる。

 日本における「パソコン」のイメージを形作ったのはなんといってもNECのPC-9800シリーズだろう。このシリーズが最初に発売されたのが1982年。くしくも、三省堂国語辞典に「パソコン」が収録されたのと同じ年だ。この1982年ごろから、パソコンという言葉が普及しだしたと考えてもいいかもしれない。

 「新明解国語辞典」では、1989年の第四版から、パソコンは「パーソナルコンピューターの圧縮表現」という説明で「パーソナルコンピューター」へ誘導、さらにパーソナルコンピューターの項目では「コンピューター」に誘導している。ちなみに、「マイコン」「マイクロコンピュータ」も同じように「コンピューター」の項目へ誘導しており、全ての説明をコンピューターの項目でおこなう形になっている。で、最新の第七版で「コンピューター」を見てみると。

『新明解国語辞典』第七版 2011年

コンピューター(3)〔computer=計算をする装置〕「電子計算機」の日常語的表現。コンピュータ。「ミニ-(5)・スーパー-(7)・ポケット-(7)・オフィス-(6)・-組版(8)(7)・-社会(6)・-犯罪(7)・-化(0)」〔かぞえ方〕一台・一基 -ウイルス[8]〔computer virus〕〔コンピューターで〕ネットワークなどを通じて、他のシステムに入り込み、自己増殖したり、格納してあるファイルを破壊したりするプログラム。ウイルスになぞらえていう。-グラフィックス[8]〔computer gra-phics〕コンピューターを用いて図形や画像を作ること。自動車や飛行機の設計、衣服のデザイン、コマーシャルフィルムやアニメーションの制作など、さまざまな分野で利用されている。CG。オフィス-[6]〔office computer〕事務室で各人が卓上で用いる小型の事務処理用のコンピューター。オフコン。ニューロ-[6]〔neuro computer,neuro=神経系の〕動物、特に人間の能の神経細胞〔=ニューロン〕の回路網が持つ学習・連想などの情報処理機能を、既存のコンピューターを用いて模倣したもの。 パーソナル-(8)〔personal computer〕 個人用の非常に小さい電子計算機。パソコン。〔マイクロプロセッサを内蔵した比較的安価なものを指す〕 ホスト-(6)〔host computer〕複数の電子計算機から成るシステムの中心となる最上位の電子計算機。マイクロ-(7)〔microcomputer〕集積回路により極めて小型化した電子計算機。マイコン。〔その中枢部はマイクロプロセッサ・記憶装置などから構成される。各種の機械に制御用として組み込まれることが多い〕「-を内蔵した空調機・-で制御する・自動車に-を搭載する」


 これでもかというほどくわしく説明している。ただ、オフコンとかちょっと懐かしい。これは、オフィスコンピューターのことだけど、いま「オフコン」なんて使ってるのはそんなに見かけない。会話では普通に「会社のパソコン」「業務用のパソコン」みたいな言い方をするのではないか。いわゆる死語の1つだとおもうけれど、そういう言葉が残ってるところも面白い。

 衝撃的なのが『三省堂国語辞典』だ。「マイコン」の項目を古い方からしらべてみると……。

『三省堂国語辞典』第三版 1982年

マイコン(名)〔←マイクロコンピューター〕板チョコ一切れの半分ぐらいの大きさに、ふつうのコンピューターと同じ性能をつめこんだ、小型のコンピューター。機械や装置に組み込んで使う。


 1982年の三版だと、マイクロコンピュータのおそらく集積回路(?)の大きさを表すのに「板チョコ一切れの半分」としている。コンピューターをお菓子に例えるフレンドリーさ、三省堂国語辞典らしさである。これが、1994年の四版になると……。

『三省堂国語辞典』第四版 1992年

マイコン(名)〔←マイクロコンピューター〕(理)チューインガム1枚ぐらいの大きさに、ふつうのコンピューターと同じ性能をつめこんだ、小型のコンピューター。機械や装置(ソウチ)に組み込んで使う。


 進化している! 板チョコがチューインガム1枚になった。

 さらにもっと最近になるとどうなるのか? 最近のコンピューターは、どんどん小さくなっており、それに伴い集積回路もとんでもなく小さくなっている。比喩表現も進化しているのか? チューインガムより小さいお菓子……さくらんぼ餅か?

『三省堂国語辞典』第七版 2014年

マイコン(名)〔←マイクロコンピューター〕[情]LSIを用いた超(チョウ)小型のコンピューター。機械や装置に組み込んで使う。


 大きさの例えをやめた! 集積回路の大きさがどんどん小さくなり、近い大きさのお菓子がなくなってきたというのもあるかもしれない。

 最近の集積回路の大きさは、何かに例えようとすると、仁丹とか、ふりかけの海苔の四分の一ぐらいとか、塩粒とか、例えても結局よく分からない例しかない気がする。例えをやめたのは賢明な判断だろう。

 解説からコンピューターの進化がよみとれるというのはワクワクしてしまう。

 技術の進歩ということでいうと『新選国語辞典』も興味深い。

『新選国語辞典』机上版 1982年

電子/

-計算機けいさんき[名]多くの電子管と電気回路とを組みあわせて、各種の数値計算を自動的におこなう機械。コンピューター


 『新選国語辞典』は、1980年代に出たものから1994年に出た七版まで一貫して電子計算機を「電子管と電気回路を組み合わせ」たものだと説明してきた。電子管。真空管のことだろうか? レガシーな雰囲気は否めない。しかし、2002年に発売された八版から説明をかえた。

『新選国語辞典』第八版 2002年

電子/

-計算機けいさんき[名]トランジスターや集積回路を組みあわせて、各種の数値計算を高速度で自動的におこなう機械。一般に、数値計算だけでなく、記憶・判断などの機能をそなえ、自動制御・事務管理・データ処理などを行う。コンピューター。


 やっと出た、トランジスター。ただ、2002年の時点でトランジスターをメインに使っている電子計算機はどれぐらいあったのかちょっと分からないけれど、とにかく、電子管がトランジスターにかわった。

 国語辞典の世界の電子計算機も、少しづつ進化している。

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