「2010年代のオタクは、推しに毎日会えるようになった」 ”カップリング表記研究家”に聞く、奥深い同人文化の世界(1/2 ページ)
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「カップリング表記」とは、同人活動において日常的に使用されている「キャラクター間の関係性を表すもの」。世界初の「カップリング表記研究家」のタルトさん(@Tarte41)にカップリング表記の話を伺う連載、前回記事では研究を始めたきっかけや、普段の研究スタイルなどを伺っていきました。
今回はコミケカタログのカップリング表記という観点から見た同人文化についてさらに深く伺っていきます。
90年代の同人覇権は「スラダン」
タルトさんの「カップリング表記データブック」を読んでいて、自分のイメージと違う結果が結構ありました。90年代はなんとなく、「幽白」(幽☆遊☆白書)とかが一番人気なのかと思いきや「スラダン」(スラムダンク)が9連覇していたり。スラダンは一般人気がすごくあったのは知ってたんですけど、同人人気もすごかったというのは知りませんでした。
私も意外でした。幽白もそうですし、スラダンが人気の頃は「ウイング」(新機動戦記ガンダムW)が覇権なんじゃないかと思ってました。
面白い、分からない。同人人気でいうと、要素が多いからなんとなく幽白の方が人気あったんじゃないかなというイメージがあったんですが、幽白は覇権取れてないんですね……!
そうですね。カタログを見ると90年代半ばから後半にかけてはスラムダンクが圧倒的な人気で、いわゆるプロ作家(同人活動がもとで商業でも活躍するようになった作家さん)がここから多数出たという話も聞きます。
幽白も確かに人気だったんですが、時期がよくなくて、最初は「トルーパー」(鎧伝サムライトルーパー)、その後はスラダンという絶対王者に挟まれてトップジャンルには一度もなれていません。同じことがウイングにも起こっていて、ウイングは95年冬コミから98年夏コミまで6開催ずっと2位なんです。1開催で1000表記以上あったときもあったんですが、スラダンが強すぎましたね。調査していくと、こういった個人的な印象と実態の差が数値で見えてくる。そこも面白いんです。
「一般人気」と「同人(カップリング)人気」は必ずしもリンクしない
そして、やはりというかいつの時代も週刊少年ジャンプの作品は同人界隈において影響力が大きいです。今ちょうど2002年を調べてるんですけど、この年から「テニプリ」(テニスの王子様)がトップジャンルになってました。で、その前は「NARUTO」なんですよ。その前は「封神演義」。「あれ『ワンピース』は?」ってなりますよね。
ワンピースって発行部数とか見ても圧倒的な覇権漫画じゃないですか。もちろん一般人気もすごく高い。でも同人カップリングに関しては覇権ジャンルではなかった。もちろん同人でもすごく人気がある作品で、サークル数もカップリング表記の数も多いんですが、一度も1位にはなれていません。1位だったらいいという話ではないですが、結果だけ見ると幽白やウイングと同じシルバーコレクターになってますね。
ワンピース、めちゃくちゃ読んでいる人が多い中で、その割に同人は少ないってことなんですね。
単純に発行部数とコミケのカップリング表記数を比べてしまうとそうですね。「作品人気と同人(カップリング)人気は必ずしも直結しない」というのが面白いです。それのもっと顕著な例が「ドラゴンボール」で、こちらもあえて説明する必要のない超人気作品で、当然カップリングもあるんですけど、かなり少ないです。それよりも80年代は「キャプ翼」(キャプテン翼)に「星矢」(聖闘士星矢)だし、90年代はスラダン、封神演義、それに幽白なんですよね。
私は90年代を「JJS時代」と呼んでいて、「ジャンプ」「J事務所」「サンライズ」の三国時代だったんですね。そこに90年代後半からは「ゲーム」って新興国も立ち上がってくるんですが、もう1つ面白い流れもあって、それが「実写作品」です。
えっ実写作品っていうとドラマとか映画とかですか?
そうですね。90年代の終わりごろに「踊る大捜査線」が人気になって、そのあと2000年の「クウガ」(仮面ライダークウガ)から特撮の大きな流れが来ました。毎年やってた戦隊物とは違って仮面ライダーはしばらくやってなかったんですけど、クウガはそのドラマ性と俳優さんの格好よさに加えてバディものという合わせ技で一気に同人界の人気作品になってます。そして続く2001年、2002年には「ハリー・ポッター」という一大勢力が……。
おお! 来たハリー・ポッター!
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