「BANANA FISH」アニメ化を記念して、元書店員がブックフェアの打線を組んでみた

世界により深く潜ってみませんか……?

» 2017年11月26日 11時00分 公開
[青柳美帆子ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 名作少女マンガ『BANANA FISH』が2018年にアニメ化しますね。かつてアッシュ・リンクスに夢中になり、最終巻を号泣しながら読んだ老若男女は「マジかよ〜!」と叫んだことでしょう。私もその1人です。

BANANA FISH 2018年にフジテレビ「ノイタミナ」で放送…!! (C)吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

 ド傑作のアニメ化ゆえに、宣伝にも力が入っています。池袋駅のサイネージに大きく表示された「BANANA FISH」の文字。本作の連載は1985〜94年ですので、2017年にアニメ化の文字を街中で見ると、時空が歪んだ気持ちになってきます。ちなみに最近の池袋は時空が歪み続けており、「封神演義」(1996〜2000年)アニメ化や「少女革命ウテナ」(1997年)企画展の宣伝がバンバン出ていてドキドキします。


 『BANANA FISH』は、主人公のアッシュと英二の絆、男たちのバトル、憧れや執着や嫉妬という男同士の濃密な感情、幸福な出会いと悲しい別れ、当時の病んだアメリカの社会背景――などなど、ありとあらゆる面白い要素をギュっと詰め込んだ“全部盛り”のエンターテインメント作品です。

 アニメ化を契機に「原作沼」にハマるのもおすすめですが、世界により深く潜っていける本を読んでみるのはいかがでしょうか?

 「BANANA FISH」ファンで、元書店員、現出版社の編集者であるロボさん(30代男性※仮名)に、架空のブックフェアリスト「『BANANA FISH』からひろがる読書」を教えてもらいました。


作品内で直接、間接的に言及されているもの

ナイン・ストーリーズ海流のなかの島々ヘミングウェイ全短編2
  • J・D・サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』(新潮文庫)
  • アーネスト・ヘミングウェイ『海流のなかの島々』(新潮文庫)
  • アーネスト・ヘミングウェイ『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪―ヘミングウェイ全短編2』(新潮文庫)

【ロボさんコメント】『ナイン・ストーリーズ』は言うまでもなく外せない1冊です。“BANANA FISH”の由来となる「バナナフィッシュにうってつけの日」が収録されています。ヘミングウェイの作品群は作中人物が愛読しています。「君はヘミングウェイの小説に出てくる豹の話をしてくれたね」――ヘミングウェイを読んだ後で「BANANA FISH」最終話を読むとさらに泣けるはず。


先行作品へのオマージュ

AKIRA格闘する者に○
  • 大友克洋『AKIRA』(講談社)
  • 三浦しをん『格闘する者に○』(新潮文庫)

【ロボさんコメント】大友克洋の影響はよく指摘されていることではありますが、物語の構造や先行作品との関係性を考えるうえで非常に重要です。『AKIRA』は、謎のクスリが物語の中心にあるという共通点があります。さらにアッシュ、オーサー、ショーターの関係性を金田正太郎、島鉄雄、山形に重ねてみると面白い。ちなみに外伝の「光の庭」にでてくる伊部の姪(めい)の名前は、言うまでもなく先行作品へのオマージュです。『格闘する者に○』は漫画を読んでいると、絶対に「ニヤッとする」一節があります。


作品世界をより楽しむために

ストリート・キッズライ麦畑でつかまえてティファニーで朝食を
チャイナタウンチャイナタウン・イン・ニューヨーク孤独の要塞
  • ドン・ウィンズロウ『ストリート・キッズ』(創元推理文庫)
  • J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(白水Uブックス)
  • トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』(新潮文庫)
  • S・J・ローザン『チャイナタウン』(創元推理文庫)
  • ピーター・クォン『チャイナタウン・イン・ニューヨーク―現代アメリカと移民コミュニティ』(筑摩書房)
  • ジョナサン・レセム『孤独の要塞』(早川書房)

【ロボさんコメント】作品の舞台や社会をより楽しむためのセレクト。中でも『孤独の要塞』は『BANANA FISH』と同時代のポップカルチャーがわかります。


病んだアメリカ

アメリカン・サイコギャング・オブ・ニューヨークカリフォルニア物語病むアメリカ、滅びゆく西洋
  • ブレット・イーストン・エリン『アメリカン・サイコ』(角川文庫)
  • ハーバート・アズベリー『ギャング・オブ・ニューヨーク』(ハヤカワ文庫)
  • 吉田秋生『カリフォルニア物語』(小学館文庫)
  • パトリック・J・ブキャナン『病むアメリカ、滅びゆく西洋』(成甲書房)

【ロボさんコメント】『BANANA FISH』で描かれている「病んだアメリカ」を知るための4冊。映画化もされた『ギャング・オブ・ニューヨーク』は漫画よりだいぶ前の社会を描いているのですが、その後につながる「犯罪都市」がどのように成立したのかを知るのに重要な1冊。


ベトナム戦争とその後の物語

本当の戦争の話をしようカチアートを追跡してホーカス・ポーカスエリオットひとりあそびディエンビエンフー
  • ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』(文春文庫)
  • ティム・オブライエン『カチアートを追跡して』(国書刊行会)
  • カート・ヴォネガット『ホーカス・ポーカス』(ハヤカワ文庫)
  • 水樹和佳子『エリオットひとりあそび』(ハヤカワ文庫)
  • 西島大介『ディエンビエンフー』(小学館→双葉社)

【ロボさんコメント】『BANANA FISH』の背景にあり、全ての始まりともいえる「ベトナム戦争」。この戦争はさまざまな物語を生み出しています。


ドラッグ文化

サイケデリック・ドラッグドラッグ・カルチャー―アメリカ文化の光と影呪術師と私アマニタ・パンセリナコインロッカー・ベイビーズ
  • L・グリンスプーン、J・B・バカラー『サイケデリック・ドラッグ』(工作舎)
  • マーティン・トーゴフ『ドラッグ・カルチャー―アメリカ文化の光と影 1945-2000年』(清流出版)
  • カルロス・カスタネダ『呪術師と私―ドン・ファンの教え』(二見書房)
  • 中島らも『アマニタ・パンセリナ』(集英社文庫)
  • 村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』(講談社文庫)

【ロボさんコメント】クスリとしての“BANANA FISH”をめぐるドラッグとその周辺文化あれこれ。『コインロッカー・ベイビーズ』をあげたのは、この作品のキーワードに「ダチュラ」というのがあるけれど「バナナフィッシュ」の原型が「ダチュラ」(ブルグマンシア)の突然変異株という設定があるためです。


友愛性、あるいは魂のむすびつきについて

私の居場所はどこにあるの?少女まんが魂
  • 藤本由香里『私の居場所はどこにあるの?―少女マンガが映す心のかたち』(朝日文庫)
  • 藤本由香里『少女まんが魂―現在を映す少女まんが完全ガイド&インタビュー集』(白泉社)

【ロボさんコメント】「アッシュと英二の関係はBLなのか?」は永遠のテーマですが、アッシュと英二に表象される関係性は、マンガという表現形態の中でさまざまに描かれてきています。少女マンガで人々の魂がどのように描かれてきたのかを知るのに最適な2冊です。


アッシュの安らぎの場所

未来をつくる図書館死ぬまでに行きたい世界の図書館世界の夢の図書館
  • 菅谷明子『未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告』 (岩波新書)
  • 株式会社伊勢出版編『死ぬまでに行きたい世界の図書館』(笠倉出版社)
  • 『世界の夢の図書館』(エクスナレッジ)

【ロボさんコメント】天才アッシュ・リンクスが心を安らげる場所として、印象的に描かれるニューヨークの図書館(作中では「ニューヨーク市立図書館」と表記)。実際にどのようところなのかを知るのに最適。『死ぬまでに〜』『世界の〜』の写真はすごくきれいです。


ニューヨーク案内

ぼくのニューヨーク案内ストレンジャー・ザン・ニューヨーク街道をゆく39
地球の歩き方 ニューヨーNEW YORK NEW YORK! 地下鉄で旅するニューヨークガイド,
  • 植草甚一『ぼくのニューヨーク案内』(晶文社)
  • 四方田犬彦『ストレンジャー・ザン・ニューヨーク』(朝日新聞社)
  • 司馬遼太郎『街道をゆく39 ニューヨーク散歩』(朝日文庫)
  • 地球の歩き方編集室『地球の歩き方 ニューヨーク』(ダイヤモンド・ビック社)
  • 地球の歩き方編集室『NEW YORK, NEW YORK! 地下鉄で旅するニューヨークガイド』(ダイヤモンド・ビック社)

【ロボさんコメント】作品の主要舞台ニューヨークを案内してくれる本。どれも読んでも面白いです(「地球の歩き方」はオマケで入れました)。地下鉄ガイドは、作中の銃撃戦と合わせてぜひ読んでくださいね。ただ、これは最近のガイドなので、作中の時代とは線が変わっている可能性もあるかも。


BANANA FISH自体を知らない人へ

【ロボさんコメント】「いまの若い人は『BANANA FISH』自体を知らないかも」というコメントも耳にしたので、現在連載中で映画化もされた『海街diary』を起点にした紹介もいいかもしれません。

 内容がリンクする『ラヴァーズ・キス』を手始めに、『吉祥天女』→『河よりも長くゆるやかに』→『カリフォルニア物語』→『BANANA FISH』という順で読んでいくのがおすすめ。「家族の物語」→「ジェンダーとサスペンス」→「友愛性」→「病んだアメリカ」という流れで吉田作品に伏流するテーマを一通り読めます。ついでに絵の変化もみえて楽しいです。


 「残念ながら絶版本も多く、ブックフェアとしては実際は成立しづらいかも」とロボさん。しかしこれを全部読めば『BANANA FISH』がより深く理解でき、より深く楽しめること間違いなしです!

 ちなみに私はというと、このリストの中で3冊しか読んでいませんでした……。修行します。

青柳美帆子

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2406/12/news077.jpg フジ「アンメット」、池脇千鶴のサプライス姿が激変しすぎて“最も衝撃” イメージ覆す“肉づきたるみ顔”に「わからんかった」「びっくりして夜中に声出た」
  2. /nl/articles/2406/12/news126.jpg 185センチ木村沙織、生放送で櫻坂46メンバーの横に立つと……朝8時51分に驚きの光景 「あれ? 子供が混じってる?」「親子すぎる」
  3. /nl/articles/2406/12/news029.jpg 「1匹いたら100匹いる」「発生しなかったら奇跡」 ビオトープに侵入し崩壊させる“ヤバイ奴”の駆除方法に反響
  4. /nl/articles/2406/12/news013.jpg 「めちゃくちゃ怖い」 3LDKの一軒家→外に出ると…… まさかの危険すぎる設備に「どうやって運ぶの?」
  5. /nl/articles/2406/11/news026.jpg 「これどうやって使うの?」→「考えた人マジ天才」 セリア新商品の便利な使い方に「これ100円でいいんですか!?」
  6. /nl/articles/2406/12/news024.jpg パパが1歳娘を寝かしつけ開始、途中で様子を見てみると…… 驚きの展開への娘の反応に「可愛すぎて語彙力無くなる」「仲良し親子」
  7. /nl/articles/2406/12/news023.jpg 新婦入場をスマホで撮影する父、一番いいシーンでまさかの……? 大爆笑の展開に「歯磨き中に吹いてしまったw」「結末わかってたけど笑ったw」
  8. /nl/articles/2406/11/news023.jpg 食べた後のパイナップルのヘタを植える→3年後…… 驚きの姿に「凄すぎます」「家庭菜園レベチ」と138万表示
  9. /nl/articles/2406/11/news013.jpg 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. /nl/articles/2406/12/news116.jpg ヒロミ、“6000万円超の超高級外車”に乗る→即ロックオンされてしまう “営業トーク”の嵐には「ポラリス10台分か」「乗る男になったらすげぇな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「虎に翼」、共演俳優がプライベートで旅行へ “決別中”の2人に「ドラマではあまり見ることが出来ない全力笑顔」
  2. 「ハードオフには何でもある」 → 4万4000円で売られていた“とんでもないモノ”に「これは草www」「見てるだけでワクワクする」
  3. 釣りから帰宅、持ち帰った謎の“ニュルニュル”を水槽に入れてたら…… いつの間にか誕生した意外な生き物に「すごおー」「どこまで育つかな!?」
  4. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  5. 「さざれ石に苔のむすまで」何日かかる? 毎日欠かさず水やりし続けてまもなく1年、チャレンジの結果に「わびさび」「継続は力」
  6. 朝ドラとは雰囲気違う! 「虎に翼」留学生演じた俳優、おなかの脇がチラ見えな夏らしいショットに反響「とてもきれい」
  7. フードコートでふざけたパパ、1歳娘に怒られる→8年後の“再現”が1185万再生 笑えるのに涙が出る光景に「大きくなった!」「泣ける」
  8. 1歳妹「ん」だけで19歳兄をこきつかい…… 「あれで分かるにいに凄い」「ツンデレ可愛い」マイペースな妹にほんろうされる姿が280万再生
  9. 「ベランダは不要」の考えを激変させた“神建築”が200万表示 夢のような光景に「こんな家に帰りたい」「うっとり」
  10. 三重県沖であがった“巨大マンボウ”に漁港騒然…… 人間とサイズ比較した驚愕の光景に「でっか!!」「口から何か出てますね」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  2. 「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”
  3. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 同情せざるを得ない衝撃の光景に「私でも笑ってしまう」「こんなん見たら仕事できない」
  4. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  7. 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は…… 斜め上のキュートな活用術に「超ナイスアイデア」「こういうの大好きだ!」
  8. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  9. JR東のネット銀行「JRE BANK」、申し込み殺到でメール遅延、初日分の申込受付を終了
  10. サーティワンが“よくばりフェス”の「カップの品切れ」謝罪…… 連日大人気で「予想を大幅に上回る販売」