前情報不要! インド映画の最高傑作「バーフバリ 王の凱旋」を今すぐ見てくれ
今一番面白いやつ。
「バーフバリ 王の凱旋」の上映延長が決まった。2017年12月29日より全国公開され1カ月が経過しようとしている本作、1月26日以降の週も引き続き公開となる。
ハリウッドの製作費何億ドルといったビッグ・バジェット映画が1カ月もたたずにシアターをあとにする昨今、インド製作のいわゆるトリウッド映画の日本での興行期間としては極めて画期的なことといっていいだろう。
インド映画歴代興収の歴史を塗り替え、世界でも記録的大ヒットを飛ばしている「バーフバリ 王の凱旋」。本作は開始後間もなくでかでかと表示される「2」の数字を見れば分かる通り、2017年4月に日本公開された第1作「バーフバリ 伝説誕生」(DVD/BD発売済・Amazonビデオで配信中)に続くバーフバリ2部作、その完結編である。
ここで「なんだ2部作かよ前編見てないよ……」と思った方も安心してほしい。本作に「前編を見ていなければ意味が分からない」点はほぼ存在しないからである。ただもちろん、「1」を事前に見ておいたほうが本作をより楽しめるというのは事実。しかしはっきりといえることは、前編がAmazonから届くのを待っていたりする間に劇場の大スクリーンで見逃す機会を失うほうが間違いなく人生の損失だということだ。
加えていうなら私が「伝説誕生」を自宅のノートPC(12インチ)で見たあとにおぼえたのはすさまじい感動と、スクリーンで見逃したことに対する猛烈な後悔である。もしあなたの近場の映画館、「上映中」のページに本作が並んでいたのなら、以下の文章は無視してほしい。そして公開が終わる前に、劇場に走ってほしい。
絶対に後悔はしない。
「ラ・ラ・ランド」のようにスマートで、「ベイビー・ドライバー」のようにスタイリッシュ
以下拙い文章にて本作の魅力を述べるなら、古代インドの大国マヒシュマティにおける王子・バーフバリがとにかく強く、気高い物語である。従兄弟・バラーラデーヴァとの王権競争に勝利し、国を継ぐことになったバーフバリ王子はのちに王となるもののさだめとして、従者カッタッパを連れ放浪の旅に出る。河下のクンタラ王領に着こうというころ、突如襲撃してきた盗賊団に気高く立ち向かうクンタラ王国の王妹・デーヴァセーナの美しさ、そして強さに心を奪われた彼は身分を隠し、無能な使用人として王国に入り込むことに成功する。
時を同じくしてひそかにバーフバリの動向に監視の目を光らせていたバラーラデーヴァもまた、その嫉妬心からかデーヴァセーナを自らの后としようともくろむ。そこで王母・シヴァガミに頼みこみ、デーヴァセーナを自分の妻とすることを王母の名をもって宣誓させてしまう。王母による求婚の書簡を「自分のため」と信じて疑わないバーフバリ。真の心の強さを持った女性・デーヴァセーナ。王のため、息子のため、国のためにあらんとする王母・シヴァガミ。そしていまだ「国盗り」を諦めてはいなかったバラーラデーヴァとその父・ビッジャラデーヴァ。こうしてある種のギリシャ悲劇的な人間ドラマが切って落とされるのである。
本作のストーリーラインは明快であり、ストーリー的ないわゆる「プロットのひねり」というものは取り立てて多い方ではない。しかし本作がこれだけ熱狂的な支持を得た理由は、物語が普遍的であるがゆえに「とにかく面白く見せよう」「全ての絵を美しく作ろう」という製作側のすさまじい力量がはっきりと形になっているところにある。
とにかく目を奪われっぱなしになること確実のきらびやかな劇中美術は架空の王国に命を吹き込み、圧巻の殺陣は英雄たるバーフバリのみならず、あらゆるキャラクターに確かな存在感を与えている。特に人物間の確かな信頼関係が見て取れる戦闘中の武器の受け渡し、樹木を使用した戦術などは見ているだけで心が踊る。中盤に見られる弓を通したコミュニケーションの成立は本作のまさに白眉だろう。
またそれらの絵作りを気持ちよく見せるための工夫のひとつとして、徹底したテンポの良さがあげられる。決して日ごろから映画を見ていると、物語を調子よく進めるためか――とかく説明過多なセリフやご都合主義的な演出が見られることがままある。「バーフバリ」ではインド映画得意のダンスシーン、そしてそのバックで流れている音楽――その歌詞において物語、キャラクターの心情、バックボーンといった部分を説明、ないし補強することで物語をスピーディーに進行させ、かつ説得力をもたせることに成功している。
それはラブシーンにおいては「ラ・ラ・ランド」のようにスマートに、アクションシーンでは「ベイビー・ドライバー」のようにスタイリッシュ。とりわけバーフバリがとにかく鬼神のごとき強さを発揮するシーンで流れる思わず叫びたくなるような勇ましい音楽は、「マッドマックス 怒りのデスロード」の戦車群が高鳴らすドラミングのように観客の心を鷲づかみ、否応無しに物語に引き込んでしまう。
ミュージカルとアクションを併用した貴種流離譚、すなわち王たる者の血の物語を描くという点ではディズニー映画「ライオン・キング」が最も近い作品かもしれない。その結果「伝説誕生」のダイジェストを含めて2時間半超えという比較的長めな上映時間にもかかわらず、それを全く感じさせない。
「次はどんな絵を見せてくれるのか?」「次は?」「次は?」と、こちら側の興味も途切れることなく右肩上がりに上昇していく。更にそれに応えるかのように、アクションシーンの激しさや物語の強度も後に行けば行くほど加速していく。本作はまさにエンターテイメントそのものであり、胸を張って「楽しい!」といえる最高の作品である。
とにかく、まずは劇場へ
繰り返すように、本作は「伝説誕生」の続編である。ネタバレにならない程度に言うのであれば、前作に登場するあるキャラクターの語る長きに渡る回想が本作の前半部分であり、後半はその回想が始まる以前のシーンとなる。つまり時系列的に厳密な前編・後編ではないため、後編から見ても存分に楽しめるようになっている。
ゆえにオススメする。まずは「王の凱旋」を劇場で見る。その後あなたは否応無しに「伝説誕生」を見たくなっているはずだ。買うなり借りるなりして即座に見る。そしてもう一度、「王の凱旋」を見てほしい。あなたは真の王の名を叫ばざるを得ないだろう。そしてその湧き上がる胸のうちには、作中幾度も流れた雄々しい劇中歌が響いているはずだ。
また2月3日にはキネカ大森にて、「伝説誕生」「王の凱旋」2作連続の「絶叫上映」が予定されている。王の名を叫ぶにはうってつけの環境だ。荒ぶる神よ シヴァ神よ 広大無辺の守護神よ……バーフバリ!
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(将来の終わり)
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