なぜ新潟や石川が「人口日本一」だったのか? 都道府県の人口推移から見る、日本近代化の歴史(4/4 ページ)

» 2018年04月22日 11時00分 公開
[辰井裕紀ねとらぼ]
前のページへ 1|2|3|4       

今より小さかった東京に多摩地区が移管される

 ちなみに当時の東京府は、現在の東京23区の大部分と伊豆・小笠原諸島というやや狭い範囲を行政区域としており、多摩地区は神奈川県の管轄でした。

 1893年に三多摩地区が東京府に移管され、ほぼ現在の区域が出来上がります。その結果、前年の人口135万6800人から25万人ほど増やして、160万8700人で2位に。同年の新潟県170万6400人に約10万人差まで迫りました。


ついに東京がトップの座に(1897年)

 そして1897年、東京が176万2100人として1位に。新潟は172万3400人と2位に落ち、10年間守っていた首位を帝都に明け渡しました。


都道府県人口1位の変遷 当時の日本で最も高い建物、凌雲閣。1890年に竣工した(Wikimediaより)

北海道が東京を抜いてまさかの人口1位!(1945年)

 このあと、ずっとずっと東京の1位が現在まで続くのですが、実は例外的に、1度だけ東京が1位から陥落したことがあります。

 それは1945年。当時日本の人口は7199万8104人となっていましたが、1位は北海道で、351万8389人。2位の東京都は348万8284人でした。

 これは太平洋戦争で都市部が疎開によって人口を減らし、逆に北海道らが疎開先に選ばれ、人が集まったからとされています。ただしこれ以降、現在まで東京都は1位を明け渡したことはありません。


都道府県人口1位の変遷 ほぼ空襲を免れた、札幌市街「昭和20年の記録(札幌市教育委員会)」より

かつて1位の石川県は、34位にランクダウン!

 ここで都道府県人口1位遍歴をおさらいしましょう。今ではなかなか「人口1位になった」とは思えない意外な県が並びます。


都道府県人口1位の変遷 1886年には年始と年末の二度調査があったので、大阪は4期分トップ。

 そんな、かつて1位だった県は、当時より大きく順位を減らしているところも多くなっています。

 2017年10月1日現在で見ると、大阪府の3位(882.3万人)や愛知県の4位(752.5万人)は良いほうで、北海道は532万人で8位、広島県は282.9万人で12位。長らく栄華を誇った新潟県は226.7万人で15位。石川県に至っては、114.7万人で34位と下位に沈んでいます。


島根県の人口は2166年にゼロになる!?

 右肩上がりで人口が増えていた過去とは違い、いまは人口減少社会です。

 テレビ番組「月曜から夜ふかし」で島根県統計調査課・鳥取県統計課のデータをもとに算出したところによると、島根県が2166年、鳥取県が2184年に人口がゼロになるという試算まであります。


都道府県人口1位の変遷 2050年のランキング。首位・東京が突出。大阪が4位に落ちるといわれる(国立社会保障・人口問題研究所「日本の都道府県別将来推計人口」(平成19年5月推計)より)


都道府県人口1位の変遷 2005年からだとここまで減る。秋田の人口は半分以下に。国立社会保障・人口問題研究所「日本の都道府県別将来推計人口」(平成19年5月推計)より環境省が作成

19世紀の人口分布のほうが、理想的だった?

 東京一極集中は人やモノの移動・輸送効率を高め、生産性向上につながるともいわれるものの、子育ての難しい東京に集まることにより、出生率のさらなる低下が危惧され、さらに災害時のリスクヘッジがなくなるなど、弊害も多く伝えられます。

 実は人口が分散していた過去のほうが、日本の健全な発展において理想的であったと言う学者が多く居ます。いま考えると意外な都道府県が人口1位の座をリレーしていた過去の人口分布が、東京一極集中になりすぎない日本をつくるための参考になるかもしれません。

 いままで辛酸をなめてきた日本海側も、アジアの経済力が増大する中で地理的な近さがチャンスと捉えられ、国も日本海側港湾の機能別拠点化を推し進めています。


都道府県人口1位の変遷 経済発展するアジア諸国との重要な拠点となる、日本海側の港

 東京以外に、人口の減らない県がこれからどれだけ出てくるか。それは、この国全体が元気で居続けられるかどうかにも関わっている気がします。


辰井裕紀


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news028.jpg 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
  2. /nl/articles/2411/19/news126.jpg 元「おニャン子」内海和子、娘・ゆりあんぬの“胃の粘膜ぶっ壊す”食事に激怒! 有名飲食店に謝罪し「出禁にして」「違う星の人そんな気がしてなりません」
  3. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  4. /nl/articles/2411/19/news083.jpg 「恐ろしい」 北海道の道路標識 → “見落としたら絶望”のとんでもない表示に衝撃走る 「普通にホラーでは?」
  5. /nl/articles/2411/18/news019.jpg 優しそうな“おかっぱ頭”の男性→プロがカットしたら…… “別人級の仕上がり”が470万再生「えっ!? って声出た」「EXILEみたい」
  6. /nl/articles/2411/19/news114.jpg 平愛梨、“夫・長友佑都選手”に眠れなくてLINE送信→“まさかの返信”に「なんやねん」「もう寝るしかない」
  7. /nl/articles/2411/18/news025.jpg “無給餌”で育てたメダカが2年後、驚きの姿に→さらに半年後…… 放置しておいたビオトープで起きた“奇跡”に「ロマンを感じる」
  8. /nl/articles/2411/18/news120.jpg 「天才が現れた!」 森永が教える“秋らしい”お菓子の作り方→たこ焼き器を使ったアイデアに「すごいすごい可愛い」
  9. /nl/articles/2411/19/news009.jpg 固い着物をリメイクしてみたら…… 生まれ変わった“まさかのアイテム”に「しゅげー!」「凄い素敵です」
  10. /nl/articles/2411/19/news062.jpg 「上げ底の先」 その名に偽りなし、高専の文化祭に出現した「限界節約ホットドッグ」が本当に限界だった
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた