インタビュー
» 2018年08月09日 11時00分 公開

「エンタメ業界は“在野の才能”を見つけ出せていない」――アニメ原作公募プロジェクト「Project ANIMA」宣伝Pに聞くエンタメ論(1/2 ページ)

あなたが心に秘めていた作品がアニメになるかも。

[青柳美帆子,ねとらぼ]

 「2020年代を代表する作品の創出をめざすとともに、次世代を担うアニメ作家を幅広く募集します」――経験・経歴・作品形式“不問”の公募プロジェクトが、DeNA主体でスタートしています。その名も「Project ANIMA」

 DeNA・創通・文化放送・MBSが、サテライト・J.C.STAFF・動画工房の3社と手を組み、公募で寄せられたオリジナル企画をアニメ化していく大規模プロジェクト。つまり「自分の考えた世界が、プロの手によってアニメになる」可能性が誰にでも開かれているというわけです。

 8月1日からは、第3弾の「キッズ・ゲームアニメ部門」の募集もスタート。ANIMAの宣伝プロデューサー有田真代さんに、「ANIMAが生まれるまで」と「エンタメのトレンド」を聞きました。

オリジナル作品がアニメになる「Project ANIMA」。キービジュアルは『クズの本懐』の横槍メンゴ先生

Project ANIMAが生まれるまで

――2018年2月から本格スタートした「Project ANIMA」。オリジナルのアニメ原作を公募するという、かなり珍しい企画です。どういった経緯で企画は立ち上がったのでしょうか。

 DeNAは小説投稿サイトの「エブリスタ」や漫画アプリ「マンガボックス」などを運営しています。そこでも、積極的にオリジナル作品を作り上げる取り組みをしていました。例えばエブリスタ発のWeb小説『奴隷区』や『京都寺町三条のホームズ』は書籍化を経てコミカライズ、アニメ化を果たしています。

 ただ、小説や漫画にはアプローチできても、アニメをオリジナルで作り上げる――という方向にはアプローチしていませんでした。そこでタイミングよく創通さん、文化放送さん、MBSさん、そしてアニメスタジオ3社との縁があり、すごいスピードでプロジェクトが立ち上がりました。

――毎年存在感のあるオリジナルアニメは生まれていますが、まだまだ“原作もの”の方が本数としては多い印象です。なぜ「オリジナルのアニメ原作創出」が必要になってきているのでしょうか?

 アニメに限らず、映画やTVドラマなどでも各社が原作を探していて、人気のある作品は取り合いになっているのが現状です。原作ものだと原作ファンは少なくとも見込めるから、ビジネス的な勝算を立てやすい。一方で「ガンダム」や「マクロス」など、時代を代表するようなシリーズはやっぱりアニメオリジナルなんですよね。クリエイターが作りたいものを作ってヒットにできればそれが一番いい。第1弾に参加してくださった河森正治監督も、「オリジナルの火は絶やしたくない」と仰っていて印象的でした。

プロジェクト第1弾には「マクロス」シリーズで知られる河森監督も参加(2017年12月のプロジェクト発表会で撮影)

 また、エンタメビジネスが「IPビジネス」に寄っていっている側面もあります。作家さんにとっても、漫画や小説などの紙のパッケージだけではなく、その外の展開があった方が作品が読まれやすくなっている。アニメや実写、ゲーム化などマルチメディアで展開することで、“IPを広げていく”という考えが一般的になっています。

 さらに海外市場の拡大も、オリジナルアニメの重要性を高めています。これまでのエンタメビジネスは国内のファンを相手にするのが主流でしたが、中国をはじめとして海外市場が伸びています。映像作品の配信事業者も増えているなか、世界中で作品のファンを最大化するためにも、原作をもっていることの意味は大きくなっていますね。

――キービジュアルは『クズの本懐』の横槍メンゴ先生を起用しています。ファンタジーのような、SFのような、ジュブナイルのような、いろいろなイメージが湧いてくるイラストですね。

 私がこの企画に参加して、初めにした仕事がキービジュアルの依頼でした(笑)。ANIMAはオリジナル企画なので、スタジオさんの名前はあるけれど、プロジェクト自体のカラーがあるわけではありません。決まっていたのが「2020年代のアニメファンにささげる」「男女ともに愛される作品を募集したい」というキーメッセージ。そこで、若いエンタメファンに人気があり、なおかつ男性からも女性からも支持されている作家さんにお願いできればと考えました。そこで「……メンゴ先生だな……!」と。

 はっきりとしたイメージがあるわけではないので難しいオーダーだったと思うのですが、メンゴ先生はステキなイラストを仕上げてくれました。もともとメンゴ先生は、ボカロ動画の絵師としても活躍されていました。「普段は1人の仕事だから、他のものから広げる作業は楽しいです」とおっしゃってましたね。

在野にはたくさんの才能がいる

――募集テーマは第1〜3弾でかなり傾向が違いますね。

 一緒にプロジェクトを進めていただける制作会社さん3社と相談しながら決めていきました。サテライトさんと言えば「SF・ロボットアニメ」。J.C.STAFFさんは「異世界・ファンタジー」。そして8月1日から募集開始の第3弾「キッズ・ゲームアニメ」は動画工房さんです。

――第1回のテーマは「SF・ロボットアニメ」でした。どれくらいの応募がありましたか?

 最初の目標としては「1000件くらい集まるといいね」と話していたのですが、蓋を開けてみれば数千件の応募をいただきました。応募方法は「小説・脚本」「マンガ」「企画書・その他」形式のどれも受け付けていたので、小説や漫画を送ってきたり、ルーズリーフに手書きで書く人がいたり、直筆のイラストを添付していたり、学生時代に8ミリフィルムで作った映像を送付したり……と、予想した以上にバラエティに富んでいました。

 すごいなと思うのは、「面白い!」と感じる作品の中には、添付ファイルを開いて一目見た瞬間に分かるものもあるんですよ。タイトルとペンネームだけでもセンスが感じられるし、作品の売りを作者さんがはっきり自覚されているものは、あらすじもきっちりまとまっていて過不足がない。「しっかり作り込んでくださったんだな」とうれしくなりますね。

7月には第1弾の入選作品が発表。さまざまな形式での応募があった(Webサイトより)

――応募者の年齢や性別に傾向はありましたか?

 属性は応募時に聞いていないので、傾向は分からないですね。ただ、持ち込み会を開催したときの感じでは、下は学生さんから上は50代までいらっしゃいました。男女比は7:3〜6:4というところでしょうか。「これは明らかにプロの人の別名義だ……!」というものも見受けられます。持ち込み会では地方も何か所か周ってきましたが、「すごい才能がまだまだ在野にいる。でも、それを私たちが見つけ出せていないんだな」と痛感しました。

――才能を見つけ出せていない。

 これはエブリスタでたくさんの作者さんと交流を持つうちに思ったことなのですが、意外なヒット作になるのは「それまで小説を書いていなかった人の作品」だったりするんですよ。例えば最初は読み専だった主婦の方が、「自分にも書けるかも?」となんとなく書き始めたら、多くの人から反響を得る……なんてことが少なくありません。エブリスタでは掌編のコンテストを定期的に開催し、書籍化しているものもあるのですが、「プロの作家なんて雲の上の世界で、自分とは関係ないと思ってました」という声をいただくことがあります。

 「プロと自分は違う」と感じているけれど才能はある、いわゆる“在野の才能”を見つけていくシステムが、エンタメ業界ではまだ不十分なのかもしれません。小説では「小説家になろう」をはじめとする投稿サイトがその役割を担っていますが、アニメにはない。アニメが大好きな人がアニメの脚本家になりたい! と思っても、どう1歩を踏み出せばいいのか分からないのではないでしょうか。そういう埋もれた才能を見つけ出す役割を、ANIMAが果たせたらいいなと思っています。

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