輸送は人力、飛ばすまでが一苦労! 琵琶湖のほとりで「鳥人間コンテスト」の舞台裏を見てきた(3/5 ページ)
機体が待機していたスペースには、なんだか巨大な木の枠がそのまま残されている(当然後で回収される)。これは何かというと、機体のパーツを分解して輸送する際に使う木の枠なのだ。機体の主な材料は軽量なウレタンやビニールなどが使われているため壊れやすい。どの機体も主翼や尾翼を取り外した状態でトラックで運ばれてくるため、この枠は必須なのである。
ほかにも、機体の準備をしていたとおぼしきテントの周辺には、整備用の素材が積まれている。例えば、フレームに巻きつけて外装にするビニールは、太いロールがそのまま持ち込まれていた。ほかにも山のように積まれたウレタンのブロックなど、機体を構成する材料があちこちに置かれている。さながらF1のピットのような状態だ。
羽ばたきや木製機、滑空機部門は個性の塊
このように会場の至るところに飛行機の素材が落ちているので「なるほど、最近の人力飛行機は全部ウレタンとビニールでできているのか……」と納得していたところ、全く質感が異なる木製の飛行機を発見!
この機体は、「木工の街 大川」チームが飛ばす「木のきもち号」。木と木を組み合わせる組子、曲げた木を組み合わせる曲げ木、薄くスライスした木材を組み合わせる突板など、木工技術を駆使して作られた機体だ。特に杉の木を削って作ったパーツを組み合わせ、4日間をかけて作った垂直尾翼はほとんど民芸品。聞けば地元の建具屋さんや商工会議所の若手が中心になって構成されているチームだというから、本物のプロの技である。
また、今大会ではお笑いコンビ・三四郎の小宮さんが搭乗した「チームハマハマ」(※)が用意した機体は、V字型の尾翼がポイント。2枚の尾翼が同時に動くことで上下左右の方向に機体をコントロールできる。この方式の利点は尾翼の枚数が減るので構造重量が軽くなることなのだが、その分機体のコントロールが難しくなる。本来はプロが乗るので問題なかったが、今回は小宮さんが乗るのでセッティングには気を使ったとのこと。
※出場30回以上を数える常連チーム
チームハマハマでは小宮さんが乗ることを考え、乗り込みが確実にできるようにコクピット周りを改装。また、ほかの機体に比べて主翼が大きいため、飛行自体も比較的安定している。その主翼は体重の上下移動で羽ばたかせることができるのだが、これは天候と風向き次第である。
ところで、着水した飛行機ってどうなるんでしょうか?
取材に行く前から気になっていたのが、「飛行が終わって着水した機体はどうするのか?」という点である。
大会のルール上、いつかは機体が琵琶湖に落ちるのが鳥人間コンテスト。しかし、落ちた機体はその後どうなるのだろうか。まさか琵琶湖にそのまま捨てるわけでもないだろうからどこかで回収するのだろうが、それはどうやって……? この疑問を解消するべく会場内をウロウロしていたのだが、それは案外簡単に分かった。
プラットフォームの右側、観覧席のある側はコンクリートで舗装された護岸になっている。着水した飛行機は、この護岸部分までボートでひかれてくるのだ。
引き上げられたパーツは解体され、トラックに詰め込んで即座に輸送される。なんせ次々に飛行機が飛ぶので、この引き上げ&解体スペースが詰まると大会自体がパンクする。だから機体パーツをその場に置いておくことができないのだ。
また、機体のフレーム自体は来年の大会で再利用するチームが多い。着水した飛行機はただのゴミではなく、何度も使う大切な部品なのである。
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