先輩ばっかり私のこと好きになって甘えるの、ずるい 「やがて君になる」10話(1/2 ページ)

劇の台本の内容がエグすぎる件。

» 2018年12月07日 23時00分 公開
[たまごまごねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

やがて君になる (C)2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 人を好きになるって、なんだかとっても難しい。「やがて君になる」(原作アニメは、思春期に体験する「止められない恋」と「恋がわからない」気持ちを繊細に描いた作品。しっかり者なのに好きな人に甘えてしまう先輩と、人を好きになれない後輩の、ちょっぴり厄介なガールズラブストーリー。


やがて君になる


今までのあらすじ

 高校一年生の小糸侑(ゆう)と、二年生の七海燈子。クールで優等生な燈子は、侑のことをすっかり大好きになり、デレデレに。

 超完璧優等生に見えて、実は頑張りすぎている部分がある燈子。侑は彼女の支えになろうと考えて、生徒会を手伝うことに。

 生徒会は忙しい。燈子はテキパキ働く中、リフレッシュの相手として侑を選び続け、甘えていた。体育祭の準備中は、侑に激しくキスを求める。侑はそれが嫌ではなかった。

 けれども燈子の、侑からしてほしい、という言葉には応えることができなかった。「私を好きにならないで」というのが、燈子の侑への願い。侑はその言葉に縛られ続ける。


姉になりたいと思い続けて

 燈子が執拗に「生徒会劇」復活にこだわるのは、かつて死んだ姉がやっていたから。これが「姉を超えるくらいいいものを作ろう!」というものならまだしも、燈子の中にあったのは「姉そのものになりたい」という強い思い。

 本人は前向きかもしれないけど、どうにもポジティブじゃない。そのへん、脚本担当の少女・に(意識的ではないかもしれないけど)見抜かれていたようです。


画像 生徒会劇の台本は、ど直球に燈子をえぐるもの(4巻P16)

 叶のやり方は「演者に合わせて人物を作る」もので、主役は「自分がわからない・空っぽな子」になりました。

 台本の中の少女「私は誰になって生きていけばいい? 誰かにならなければ私には何もないのに」

 詳しいシナリオの内容は今後明らかになっていきますが、「他人から見た自分」をテーマに据えているのは、燈子の今の心の傷ど真ん中。「……叶さん こわいなあ 何もない少女の役……か」と燈子も複雑な表情。


画像 彼女の足かせは重すぎる(4巻P20)

 侑、沙弥香だけは、彼女の本心をわかりはじめています。現状を維持するか、変化するか。それぞれに決断が迫られます。

 にしても、燈子のみならず沙弥香と侑の立ち位置までなんとなく見抜いていた叶さん。この洞察力、いい作家になるよ。


好きにならないための抵抗

 侑は、燈子が抱いている「弱い自分も完璧な自分も肯定されたくない」という気持ちを察しています。だから、燈子からくるものは受け止めるけど、自分からは先輩に矢印を向けないよう、必死にブレーキを踏み続けています。例えばこのシーン。


画像 胸がチクっとするよ……(4巻P37)

 アニメ9話では、暴走しすぎた燈子が体育館倉庫で、侑にディープキスするほどに過剰なスキンシップを取ってしまいました。それに対しての「もうちょっと抑えなきゃ」「侑に嫌われたくない」という発言。以前から一貫して、侑に嫌われることを恐れ続けています。迷惑かけてごめんなさいと侑側の立場になって言わないのが、彼女が自覚していない甘えん坊なところ。

 侑はそれでいいし、今の関係が心地良いと思っている。ただここで「べつにそんなの」のあとに、「かまわない」とか「私もうれしい」とかの発言ができない。雨宿りの回で、一緒にいたことをつい「うれしい」と言ったときに、燈子の顔が凍りついたのが思い出されます。

 この作品は、侑がモノローグでも現状では「好き」という言葉を思い浮かべない点で徹底しています。いかに侑が自分の気持ちをだましだまし、そう思わないよう立ち回っているかが、回を追うごとにきつく描かれます。

 侑「わたしからは何もできない 先輩はいつもわたしのこと好き勝手振りまわすくせに」「この人はずるい」

 「ずるい」という言葉は、最初期には「わたしもそっちに行きたいのに」という、先に成長した燈子への軽い嫉妬のような意味を持つものでしたが、この時点ではそこに込められた意味はかなり変わってきているようにも見えます。


もういっぱいいっぱい

 侑は年齢の割に安定していて、ずっしり構えている感が描かれていました。少なくとも燈子より年上にすら見えるくらいには。これは侑の友人の菜月も思っていたようで「おまえいつもどこか余裕ある感じだった」と語っています。中学校のソフトボール部ではめちゃくちゃ頑張ったのに「勝っても負けてもおまえは一度も泣かなかった」らしい。

 燈子も彼女の「余裕」のようなところに甘えたいんでしょう。なんせ話していても、侑は「どうでもいい」感じで受け答えしてくれる。


画像 燈子にはこう見えている(4巻P79)

 興味がないと思われると安心する、という自己確認のような行動。自我がちゃんと育ってこなかった彼女は、聡明なようでものすごく幼い。だから侑が「本当のところで興味なんかない」でいてくれる様子を見て、踏み込んでこないことに安心する。


画像 (4巻P82)

 まあ、そう見えるように、侑が演じてますから。面倒くさいところも含めて、侑は燈子という人間に接しているわけで。実際のところは、感情は変化しています。

 侑「先輩と話すとざわざわする 菜月が言った通りだ 余裕なんてない だけど嫌な感じじゃない」

 電話越しでうれしくなっちゃうくらい、侑の気持ちは動いているのに。でもこの顔は、先輩には絶対見せない。


同性の恋人への視点

 女性同士の恋愛を、本人たち以外はどう感じているかの表現は、漫画・アニメだとさじ加減がとても悩ましいところです。あんまりそこに注力すると物語がそっちに引っ張られてしまうけど、ガン無視も難しい。

 この作品では、受け入れている人と、違和感を覚える人を登場させることで、微妙なバランスを描きました。


画像 いっそこのくらいオープンに言ってくれる方が楽(4巻P29)

 生徒会のメガネ少年・堂島は裏表ない元気な子。なので叶の台本の中で、ヒロインの恋人として沙弥香を当てはめてきた時、「え 女同士で付き合ってんの?」とすんなり言ってしまいます。

 中学校時代に女子の先輩とお付き合いしていて、今は燈子のことを好きな沙弥香からしたらなかなかえげつない状況。ただ堂島の次の発言が、彼の悪気のなさを示しています。

 堂島「いいんじゃないっすか? だって俺とか槙がやるより絶対その方が見に来る人多いでしょ」「キスシーンとかあんの?」

 飾らない、直球で素直な感想。男性の隠しきれない、でも嫌みのない性的な好奇心。こういう人もいる。

 同性の恋愛については、「普通じゃない」と言ってしまう沙弥香の先輩、既に同棲しているカップルの都と理子、侑の気持ちを嗅ぎ取って黙って応援する姉など、いろいろな距離からの観点が、物語の流れにあわせて織り込まれています。


       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  8. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  9. /nl/articles/2411/16/news077.jpg 大谷翔平、インスタ最新投稿で活躍シーンのハイライト公開 一瞬映る“妻・真美子さんと母・加代子さんの笑顔満開ハイタッチ”に注目
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた