銭湯を流行らせるには「ウニ推しおじさん」になれ―― 銭湯神ヨッピーが語る、ネットで「水風呂推しおじさん」が増える理由:【特集】ネットと銭湯サウナ(3/3 ページ)
インターネットと銭湯
そんなわけで「水風呂」の存在は銭湯・サウナにおける一番のストロングポイントでありつつも、その特性から同時にボトルネックにもなっている事を書いた。しかしながらそのボトルネックを乗り越え、徐々に銭湯、そして水風呂が広まりつつあるのにはインターネットの役割が大きいように思える。
「ウニ推しおじさん」「水風呂推しおじさん」に実際に遭遇するとうっとおしい事この上ないけど、そういったおじさん達がインターネットにおいて好き放題「ウニの良さ」「水風呂の良さ」を書き散らすぶんには誰の迷惑にもならないからだ。
そう、インターネットにおいて「好きなものを好きなだけ語る」のは誰の迷惑にもならないし、むしろ推奨される事でもある。飲み会の席で「いかに水風呂が素晴らしいか」という演説をはじめたら相手は終わるまで聞いてなければいけないし、おそらく次からは飲み会に呼ばれなくなるけど、ネットで書くのであれば問題ない。「そもそも読まない」「途中でやめる」という選択権を読者側が持っているからである。そうやって、今までは「対面だとウザがられるし控えめに推すくらいにしとくか……」くらいのテンションだった水風呂推しおじさんが、インターネットの普及と共に喜々として「水風呂の良さ」みたいなものを長文でゴリゴリ書きはじめたのである。
僕ももちろんそのうちのひとりだ。そしてそのおっさんの影響で水風呂に目覚めた人は、新しい「水風呂推しおじさん」として爆誕するのだ。水風呂に対するネガティブイメージをひっくり返された人ほど、「水風呂、いいぞ!」と人に言いたくなるのは想像にたやすい。
それに、「情報の充実」という観点でもインターネットの功績は大きい。「どこに良いサウナがある」「あそこの水風呂は天然水だ」なんてニッチな情報は、サウナ愛好家、銭湯愛好家が増えた今では雑誌なんかで特集される事も多いのだけど、愛好家人口がそこまで多くなかった頃にそういったニッチな情報の欠落を埋めてくれたのはやはりインターネットである。サウナイキタイに代表されるように、サウナの温度、水風呂の温度まで詳細に記載してあるサイトまで出来た。水風呂ジャンキーのQOLを上げるためにインターネット、SNSの存在はもはや不可欠なものである。
実際僕も、新しい水風呂を開拓する時はネットの情報を参考にすることが多く、テレビ雑誌新聞なんかから情報を得る事はほとんどない。インターネット万歳、である。
一過性で終わらない
そして最後にもう一度言っておきたいのだけど、「銭湯ブーム」「サウナブーム」などと言われているけれども、僕はこれを決して「ブーム」だなんて思っていない。まだまだ足りてないし、もっと多くの人に体験して欲しい。
それに一過性のものではありえないとも思っている。何故かと言うと、一度水風呂にハマれば完全に中毒になるからだ。交互浴をしたあとの、あの体の軽さを体験すると、2〜3日銭湯に行けないだけで体が重く感じてしまい(元通りに戻っただけとはいえ)、行きたくて行きたくて仕方がなくなる。それに、東京都であれば1回あたり460円という金額もそこまで大きな負担ではない。2日に1回行っても月あたり7000円くらいである。
健康にもいい。とは言え、「じゃあ健康にいいっていうエビデンスを出せ」と言われたら僕は研究者ではないので困ってしまうので「あくまで個人的な感想です」という文言を付け足しておきたいのだけど、「本当に効くのかなぁ?」と思う人は試しにTwitterで「ヨッピー 交互浴」で検索をかけてみて欲しい。恐らくは絶賛する書き込みが何百件というレベルで出て来るのでその辺を見てから判断して頂くのが良いかもしれない。
とにかく、騙されたと思って一度水風呂と熱いお湯に交互に浸かる「交互浴」を試してみて欲しい。もちろん「やってみたけどハマれなかった」という人は残念ながら居るのだけど、ハマった人は割とみんな「疲れが取れる!」「寝付きが良くなった!」「仕事頑張れる!」などポジティブな言葉を僕に送って来る。冒頭で、「国民全員が銭湯にハマればみんな健康になって医療費が減って、仕事の生産性があがってGDPが3倍になる」とか書いたのだけど、僕は割とマジで、国民みんなが銭湯にハマれば近い未来にそうなるんじゃないかって思っているのだ。
(ヨッピー)
「第4回ウェブメディアびっくりセール」出展のお知らせ
ねとらぼでは1月19日に二子玉川ライズで開催される「第4回ウェブメディアびっくりセール」で、初の同人誌「ねとらぼん」を頒布します。
テーマは「ネットと銭湯サウナ」。昨今人気に火がつき始めた銭湯とサウナ、そのブームの広がりにネットがどのように関わっているのか、コラムやエッセイ、インタビューなどさまざまな記事で見つめる一冊となっています。
総括コラムはヨッピーさん、銭湯サウナをテーマにしたエッセイは中川淳一郎さん、姫野桂さん、ちぷたそさんなど、ねとらぼがお世話になってきたライターが寄稿。インタビューには初のサウナポータルサイト「サウナイキタイ」の創始者2人に開設経緯と「ネット×サウナ」について語ってもらいます。
約50〜60ページ(まだ作成中につきアバウト)で、1冊500円。ねとらぼのサイト上でも一部の記事をピックアップして連載形式で掲載する予定です。
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