綿密な描写でファンのハートを鷲掴み アニメ「荒野のコトブキ飛行隊」約2分かけて描かれた「隼」発進シーンが凄すぎた(1/2 ページ)
まさかレシプロエンジンの始動がここまで描かれる日が来るとは……。
2019年1月に放映開始したTVアニメ「荒野のコトブキ飛行隊」が、アニメファンのみならず軍事クラスタの間で大きな注目を集めています。なかでも第1話「月夜の用心棒」で描かれた約2分間の発進シーンの細かすぎる描写が好評で、放送から1カ月以上が経過した今も話題になっています。
荒野のコトブキ飛行隊は、「ガールズ&パンツァー」「SHIROBAKO」といったヒット作を送り出してきたアニメ監督、水島努さんが手がける最新作。西部劇を意識した荒野が広がる世界を舞台に、第二次世界大戦で活躍した戦闘機「隼」(一式戦闘機一型/キ43-1)を操る6人の少女たちで編成された「コトブキ飛行隊」の活躍を描いた作品です。
巨大な飛行船が「空飛ぶ航空母艦」になっていたり、いわゆる道の駅が「空の駅」と称して地上における飛行機の休憩所になっているなど、虚実をバランスよく配合した水島ワールドとも言える世界観が構築されています。
そんな「荒野のコトブキ飛行隊」が大きな注目を集めるきっかけとなったのが、第1話の中盤。コトブキ飛行隊を護衛として雇っていた飛行船が「空賊」の襲撃を受け、迎撃のために飛行船から発進するシーンです。
この約2分間というわずかな時間で多くの視聴者が魅了され、Twitter上で大きな旋風を巻き起こしました。
一般人には馴染みのない、ガチ勢でなければ伝わらないような細かい描写の数々。それらをただただ眺めて「はぇー、なんかすっごい」と感嘆するだけでは、もったいない! あの約2分間で、何が描写されていたのかを少しだけ紐解いてみましょう。
実は規格外!? 発進準備に整備班長ナツオが立ち会うワケ
敵機が目前に迫るなか、すぐに機体を発進させたいと焦るシーンですが、航空機の離陸は最も事故が起こりやすいタイミング。わずかな気の緩みすら許されない緊張の瞬間です。
航空機が飛び立つためには「揚力」という機体を上に持ち上げる力が必要になり、それを発生させるには時速200キロほどのスピードが必要になります。もし、この速度に到達できなければ滑走路をオーバーランしてしまうなど、「死」につながる重大事故が起きる危険があり、パイロットは機体を離陸しやすい最善の状態にして、発進させる必要があるのです。
迎撃のため、機体に乗り込むキリエ。しかしいきなり操縦桿(そうじゅうかん)を掴んだりはしません。まずは操縦席左手にあるレバーを動かして、前方にあるプロペラの角度(ピッチ)を調整します。角度によって、隼のスピードや燃費に大きな影響が出るので、状況に合わせて変化させる必要があるのです。
次に操作するのはコックピットの左手側にある「ミクスチャ・コントロール・スロットル(高空槓桿)」という器具。これはエンジンに送り込む燃料の濃度を調節する装置で、離陸や戦闘中は燃料を濃くして出力を向上させます。この時、エンジンの周囲を囲っているカウルフラップは、開放状態にしておきます。エンジンに風が直接吹き込んでくる状況になり冷却性能が高まります。
燃料計を見て、タンクに十分な量の燃料が入っていることを確認した後、エンジンに火を入れるイグニッション装置である「点火開閉器」の動作を確認。オフ状態である「閉」の位置までレバーを移動させてから、燃料タンクに圧力をかけてエンジンの端まで燃料を送り込みます。
ここまでやって、ようやくエンジンを始動できる状態になります。そうなんです、この隼……まだエンジンがかかってないんです。
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