想定市場は275億円、海賊版の抑止にも 電子マンガの海外展開を支援する企業 「めちゃコミ」と「Renta!」2社が共同設立

海外向けに翻訳された正規の電子版を増やすことで、海賊版の抑止にもつなげるとのこと。

» 2019年05月29日 20時25分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

 海外で電子コミック配信事業を手掛けるアムタスとパピレスは5月29日、日本の電子コミックを海外市場で販売できるようサポートする共同出資会社「アルド・エージェンシー・グローバル株式会社」を設立すると発表しました。2社のノウハウを組み合わせて海外への取次販売や翻訳、ローカライズを代行することで、世界でまだ普及率の低い日本のコミックを事業展開するとともに、海賊版の抑止にもつなげていくとしています。

アルド・エージェンシー・グローバルを設立した、アムタス代表取締役社長の黒田淳氏(左)と、パピレス代表取締役社長の松井康子氏

 アムタスは2006年に電子コミック配信サービス「めちゃコミック」をスタートし、2015年に海外向け取次事業を開始、2019年には韓国配信事業者を子会社化。パピレスは2007年より電子書籍配信サービス「Renta!」を展開、2014年に台湾、2017年に米国、2018年に香港で子会社を設立しました。

「めちゃコミック」と「Renta!」

 29日の発表会でパピレス代表取締役社長の松井康子氏は、台湾、韓国、中国、北米を中心に日本のコミックスに対する海外のニーズはあるにもかかわらず、多言語化されているのは30万冊のうち2万冊程度しかないと、海外向けの正規版が少ない現状を説明しました。これによって海外ファンが仕方なく作品を無断で翻訳して海賊版を流通させ、出版社は海賊版によってコストが回収できないリスクを恐れて正規版を出せないという、負の連鎖が生まれているといいます。

海外の正規版が少ないことが、負の連鎖を生んでいると説明

 加えて日本の出版社は、海外配信に手を出せないさまざまな障壁を抱えているとのこと。配信先からきちんと代金を支払われるか、著作権が侵害されてしまうのではないかといった不安。さらに作家からの許諾取得に手間がかかったり、配信地域の文化に合わせて内容を編集するローカライズのノウハウがないといった課題もあります。

 この問題を解決する事業としてアルド・エージェンシー・グローバル(AAG)では、翻訳やローカライズ、海外配信先の確保、支払いシステムの提供など、出版社が海外でコンテンツを配信する際に必要なほぼ全ての業務を代行していきます。アムタスが国内で築いてきた出版社との信頼関係やブランド力、パピレスが海外の子会社であげてきた取次やローカライズの実績、2社がそれぞれ培ってきた強みを組み合わせる形です。

AAGの事業モデル

 想定市場は中国が150億円、北米が100億円、台湾が25億円。中国では若い世代を中心にマンガ好きが増えている一方で、中国政府の規制によって日本の作品を読みたくても読めない状況が続いており、潜在ニーズは非常に高いとのこと。アメリカではまだ日本のマンガという文化への認知が低いものの、若い世代に日本のポップカルチャーが流行りつつあるためマンガの普及は時間の問題だとし、海外市場参入に大きな可能性があることを示唆しました。

むしろ早く手を打たなければ海外市場参入が手遅れになる、とも

 重要なカギとして掲げていたのは“質の高い翻訳”。例えば正確な英語訳版を作れると、そこからスペイン語版、ポルトガル語版、ドイツ語版など多言語へ展開するのが容易になるとのこと。そのため汎用性の高い英語、中国語繁体字で質の高い翻訳ができるよう注力すると説明しました。


 AAGは7月に設立予定で、代表取締役社長には松井氏が就任。まずはパピレスの台湾、香港、米国の子会社へ取次事業を行うと同時に、台湾・中国・北米での配信先となる電子書籍事業者を開拓していきます。将来的にはヨーロッパやその他アジア地域でも展開する見通しです。

松井氏

 「日本のコミックを世界へ。このまま行くと、コミックが日本のものではないと言われそうな危機感があります。コミックは手塚治虫先生から脈々と続く歴史が必ずあって、そのなかで多様なジャンルが生まれ、さらに進化していくものだと考えています。それを世界へ広げるモデルをきちんと作っていければやりがいもあり、価値があるものだと考えています」(松井氏)

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