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» 2019年04月08日 21時53分 公開

「少年マンガを少年に」 ジャンプとマガジン初の共同企画 "22歳以下限定”の狙いは

[黒木 貴啓,ねとらぼ]

 集英社の『週刊少年ジャンプ』と講談社の『週刊少年マガジン』――発行部数2トップの少年マンガ誌による初の共同プロジェクト「少年ジャンマガ学園」が、4月8日に発表された。両誌と姉妹誌5媒体の連載作品、150作品以上が無料で読める、2カ月限定のWebサイトとなる。

左から、週刊少年ジャンプ編集長の中野博之さん、週刊少年マガジン編集長の栗田宏俊さん


 互いに創刊50年を超えるライバル誌が、出版社の垣根を超えてタッグを組んだのはなぜか。8日に都内で開かれた記者発表会では、「少年マンガだからこそ若い世代に読んでほしい」という思いが繰り返し強調された。

22歳以下を対象とした「マンガの学校」

 「少年ジャンマガ学園」では、『週刊少年ジャンプ』「少年ジャンプ+」『週刊少年マガジン』『別冊少年マガジン』「マガジンポケット」、計5媒体の連載作品164タイトルを無料で配信する。


 全タイトル1話目は公開されており、その後読める話数は作品による。『ハイキュー!!』(古舘春一)は79話まで、『七つの大罪』(鈴木央)は109話までと、アニメ化された人気作品もコミックス10巻分ほど一挙無料で公開されている。

 大きな特徴は、利用対象を22歳以下にしぼっている点。初めてサイトにアクセスした際は「生まれた年」を入力して認証される仕組みになっている。サイトのコンセプトも「マンガの学校」。『ハイキュー!!』ならバレーボールを学べる……など各作品を“授業”に見立て、若年層に「マンガから楽しく学ぶ」ことを呼び掛ける作りだ。

 また「学校行事」と称して、SNSを活用したさまざまな企画も展開していく。第1弾となる「マンガリレー」は、TwitterやLINEで読んだ作品のURLを“バトン”として他の人に共有し、リレーの数が増えるほど無料で読める話数が増えていく企画。教室で紙のマンガを友達と貸し借りする体験を、デジタル世代にも楽しんでもらうのが狙いとなっている。

マンガリレー


長期連載が多くなった両誌 若い人に読んでもらうきっかけを

 企画を担当した週刊少年マガジン編集部の橋本修さんと、週刊少年ジャンプ+編集部の細野周平さんは、経緯について「両者でマンガ界のデジタルについて情報交換を定期的に行う中で実施の決定に至った」と話す。どちらかが持ちかけたというわけではなく「ジャンプとマガジンがコラボをすると、若い人たちに注目してもらえるんじゃないか」と雑談の中から話が広がり、2018年10月に正式に取り組むことが決定。以降、密な打ち合わせを繰り返し半年後のオープンとなった。

週刊少年ジャンプ編集部の細野周平さん(左)、週刊少年マガジン編集部の橋本修さん(右)

 昨今のマンガの海賊版問題や出版不況は背景にあるのか。細野さんは「海賊版などは直接的な関係はないです。シンプルに若者向けに新しいことをやりたいというところから始まった企画になります」と、一番の目的はあくまで“若い読者の獲得”にあることを強調。

 橋本さんは「時代が進んでデジタルでこうした取り組みが容易にできるようになったところです。10年前には同じような取り組みはできませんでした。大きな危機感があったというよりも、楽しそうなことができるようになったぞ、やるか! という気持ちで始まっています」と、技術面も要因にあったと振り返る。

 若者をターゲットにした点について細野さんは、「(マガジンもジャンプも)長期連載作品が多いです。若い人にとっては物心ついた頃にはすでに始まっていたという作品が多いでしょうから、1話目から読んでいける仕組みを意識しました」「少年に作品を1話目から読んでほしい気持ちが、作家さんにも編集部側にも強くあります」と、“少年マンガ誌の少年離れ”が課題となっていることを示唆した。

橋本修さん

 サイトに広告はなく、作品のPRがメインとなっている。今後の展望については「これがマーケットや世界に受け入れられたら次の展開はあるかもしれない」としつつも、「何よりもまず今回の企画を成功させること」と橋本さん。「これをきっかけにマンガを読む習慣が若い世代に広がれば成功だと思います」と意気込みを口にした。

 ちなみに、2月に「少年ジャンプ+」のギャグマンガ『トマトイプーのリコピン』(大石浩二)で「ジャンプ作品がマガジン編集部をレポートする」回が公開され、“ライバル誌の垣根を超えた暴挙(快挙)”として大きく話題になった(関連記事)。振り返ると今回の「少年ジャンマガ学園」の布石だったように見えるが、あの回はまったく関係ないところで偶然進んだネタだったそうな。大石さんは今回の「少年ジャンマガ学園」について、「コラボ企画のきっかけが自分の作品のように思われたらいいな」と企んでいるという。

両誌の結束を示す、ジャンプ・マガジンのヒーローたちが並び立つ黒板アート

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