「レッド・デッド・リデンプション2」をクリアしたのでレビュー……ですらない、「RDR2面白かったよね会」をしました:マシーナリーともコラム(2/3 ページ)
なぜ悪事を働くのか なぜバッドエンドにたどり着いたのか
しげる:いやなんか今ね、俺も俺でけっこうショックを受けてる。「そこからか!?」みたいなところで。
とも子:ね。なんかマジでそもそも論みたいな話で30分くらい話しちゃったけど大丈夫ですかねこの対談。そもそもなんで「この企画“成り立つ”ぞ!」って思ったんだっけ。
しげる:なんでとも子はRDR2でひたすら悪いことしてたんだ? 信じられないって話になったのがきっかけだよね。
池谷:そうそうそれそれ。あのね、Twitterに上げてた動画とか見たけどちょっとヒいたからね。
しげる:俺もヒいた。
とも子:いやでも、私基本悪いことができてしまうゲームって悪いことするんだよ。「スカイリム」でも衛兵を殺しまくったりしたし、「Fallout」でもガンバってカニバル(死体を食べられるようになる特技)を会得してそのへんの人を殺して食べまくったりとか……。なんか「悪いことしたポイント」が上がるのが楽しいんだよね。
池谷:それはまあ……理解できる。だって「スカイリム」とか「Fallout」はプレイヤーキャラクターにそんなに人格が設定されてないじゃない。プレイヤーが遊びたいように遊べるように。でも「RDR2」はアーサーやジョンっていう、しっかりした自意識のあるキャラクターを操るわけで、そこの違和感とかはなかったの?
しげる:「無理やりお前にアーサー・モーガンを追体験させてやる!」ってゲームだもんね。RDR2は。
とも子:いや、そこはね。私自身「スカイリム」とか遊んでるときとはやっぱり感触が違うな〜ってのはありましたよ。
池谷:だからね、普通は……ここで“普通”とか言っちゃうととも子みたいなプレイスタイルの人を敵に回すかもしれないけど、普通の人の気持ちだったら終盤、あれだけアーサーが死ぬ前にいいことしたいぜ! ってガンバってるときにまだ悪行を働いてやるぜってなりにくいからね!?
しげる:いや、ヒいた。あれは本当にヒいた。
とも子:待って! 待って。アレはね、理由がいくつかあって。一つは純粋にゲームとして楽しんでやってるんだよ。「スカイリム」とかと同じ理由でね。だって実際に日常生活で悪いことってできないじゃないですか。
しげる:まあね。人殺したら捕まるからね。
とも子:そう。でもゲームのなかだったらできちゃうでしょ? 単純にそれをしてみたいってのと……。あとね、なんだかんだ言ってゲーム開発者ってけっこう性善説っていうか、「殺せるからってお前ら人殺したりできないだろ?」って思ってるところがあるわけ。
池谷:まあ……そういうところはある。一連の終盤のアーサーの選択肢にしたってそうだろうし。
とも子:そういう、「こんな状況でまさか悪い選択はしないだろう」と開発者が想定してるところを、ブチ破ったらどうなってしまうんだろう? というところに興味がある。イレギュラーな選択の先を見てみたいんですよ。これがゲーマーとしての欲求な。これが一つめの理由よ。
しげる:はあ……。まあ、言わんとすることは分かる。
とも子:で、もう一つがRDR2ならではの理由な。例えばアーサーについてはね、「いまさらいい子ちゃんぶるな」という気持ちがあった。お前は、アウトローなんだから、最後までその生き方を貫き通してくれよ! という気持ちがね……。
しげる:お前……タイトルに「リデンプション(贖罪・償い)」ってついてるだろ!!
とも子:アーサーに日和ってほしくなかったんだよ。だってアイツ……病人をボコボコに殴って「借金返せ!」って迫るんだぜ?
しげる:そんなこといわれても……。
池谷:RDR2のストーリーがそういうアーサーに償いのチャンスを与えてるのに、しないんでしょ? とも子は。
とも子:しない。
しげる:怖っ。
池谷:あとアーサーの最後の選択ね。「ジョンを逃がす」か「金を取りに戻る」かでグッドエンドに進むかバッドエンドに進むか決まるんだけど(※)、よくそこで金を取りに戻れたな!
とも子:それもすごい周りから言われたんだよ。どう考えても金を取りに行くシチュエーションじゃないだろうって。
しげる:ホントだよ! 不自然だよ。
とも子:でも私もすごいそれについて言いたいことがあって。あのね、私もさっきはアーサー、日和るなよとか言いましたけどね。基本的にはアーサー・モーガンという男が大好きなんだよ。
しげる:どの口が言うんだよ。
とも子:そしてね、幸せに暮らすためには金が必要なんだよ。
池谷:あー、まあ、現実的な考えとしてね。
とも子:アーサーは終盤、当時ほぼ不治の病だった結核になるじゃん。でもサンドニでお医者さんと会話しただろ? 空気がよくて静かなところで暮せば治るかもしれないと……。アーサーもそうしたいが今は金がないと……。
しげる:いや、そうは言うても最終盤のアーサーとか死にかけとるやろ。
とも子:ワンチャンあるじゃん!
しげる:いやいやいやいや。
とも子:それにさ、マーストン夫妻にも金が必要なわけだよ! それは絶対に。
しげる:そうだけども。
とも子:それに最後、アビゲイルから金庫の鍵を託されるじゃん。だからその鍵は死蔵しないで使わなきゃ! と思うじゃん。
池谷:そう……か。そうか……?
とも子:「ジョンを逃がすか」「金を取りに戻るか」っていうのはね、要するに「逃げるか攻めるか」なんだよ。ジョンを逃がすっていう選択は、逃げの選択肢なんだよ。金を取りにいくのは攻め。幸せに生きていくためにはチャンスが少なくても攻めないと! って思ったんだよ。金を取りに戻って幸せに暮らしたい! こうアーサーは思うはずなんだよ。それにね、金を取りに戻ったら必然的にピンカートンの連中とかマイカと出くわすはずじゃん。
しげる:うん……。
とも子:だからね、金を欲しいというのと同時に、ダッチとマイカを殺さなきゃ! 全てにケリをつけに行こう、アーサー! と、こう思ったわけよ。
しげる:それはね……アレだね。すごいフレッシュな気持ちでRDR2やった人の意見だね。だって前作やってたらダッチがRDR2では死なねえって分かるもん!
とも子:違う、違う。知ってるんだよ。さすがに私もチャプター6とかまで進んでたらさ、ある程度前作のこと調べたりしてたから知ってるわけ! ダッチが死ぬのはRDR1の話だって知ってるわけ! でもさ……アーサーはそのことを知らねえだろぉう!?
しげる:それはそうだけども!!!
池谷:えっ……そういう方向では感情移入してるんだ!?!?
しげる:いや、そうか……それは……俺が悪かったよ。俺がメタ視点で見すぎていたよ。
池谷:でもRDR2ってけっこう終盤、プレイヤーを善業に善業に誘導しようとしているよね。
しげる:あからさまな選択肢を出して「正規ルートはこっちやで〜」って言ってくるよね。
とも子:そうそう! それで言うと私、ひとつすげー納得いかないミッションがあってさ。レオポルドの最後のミッションで、家出する親子から借金を回収しようとするミッションがあるんだよ。借金をしてた旦那が死んでてさ。
しげる:あったあった。
とも子:そこで選択肢が出るんだけど、その二択が「借金を帳消しにする」か「借金を帳消しにして金を渡す」なんだよ! ウソだろ、Rockstarって思った。そこは「借金を回収する」を選択肢に含んでくれよ。
池谷:ああ、うん、それは確かに選択させてくれるべきだと思うわ。
とも子:だからムカついて、さすがに金は渡さなかったんだけどあまりにムカついたからイベントが終わって親子が引っ込んだあとに小屋に火炎瓶を投げてやりました。
しげる:恐怖を感じる。
とも子:あれはね、私なりの神への……Rockstarへの反逆。
池谷:まあ火炎瓶を投げるのはどうかと思うが、そこで憤りを感じるのは正しいと思うよ。電ファミのRDR2レビューを読んですごくしっくり来たんだけど、このゲームって偏執的なまでに作り込まれていて、狩りもできるし、馬の世話もできる、銃をガンオイルで手入れすることもできるし、列車強盗をすることもできる。それがなぜかというと「リアリティーというのは、プレイヤーが取らなかった選択肢の多さに宿るんだ」っていうことを、レビューのなかで書いてるのね。
例えばメインクエストで移動してる最中に、ウサギがプレイヤーの前を横切る。もちろんクエストの途中だからわざわざそんなことはしないんだけど、でも、やろうと思えばプレイヤーはそのウサギを狩って、皮をはいでお金に替えることもできる。そういう無数の「できるけど、しなかった」の積み重ねが、「このゲームはリアルだ」という実感につながっているんだと。
とも子:人生と同じだね。
しげる:サイボーグが人生を語るな。
池谷:だからそういった意味だと確かに、このゲームはプレイヤーを善のほうに善のほうに誘導しようとしているんだけど、悪の選択肢も用意したうえで、「でも俺はこっちにするんだ」って選択の体験をさせることが大事だと思うんだよね。それで言うと、そのイベントで「それでも借金を回収する」という選択肢がないのは確かにおかしい。
とも子:そう! そうなんだよ。それだったら、逆にそれまでのイベントでも借金を回収しないという選択を作るべきなんだよ。
池谷:でも、まあ、それでも最後にジョンを逃さないで金を取りに戻るのはおかしいと思う……。
しげる:おかしい。2周目なら分かるが……。
池谷:アレも開発者の意図としては「君は金を取りに戻ることもできるが、でもまあジョンを逃がすよね」って配置だろうからね……。
しげる:俺はもともとRockstarのゲームが大好きっていうのもあるし、取りあえず「今回はどんな物語を楽しませてくれるのかな?」って姿勢でめちゃめちゃ素直に遊んでたよ。全然悪いことしてないよ。
とも子:それはよくないよ。権力に与するのはよくない。しげる君、君はダッチに嫌われるタイプだね。
しげる:ダッチの在り方を否定するゲームだろ!?!? 君はなんだ、素直にゲームをキチンと進めようって気はないのかね。
とも子:あぁ……それで言うとさ。私、チャプター3とか4あたりからアーサーがだんだんうつ病みたいになってくるじゃん。こんな生活もう嫌だ〜〜って感じに。
しげる:なるねえ。もうダッチの言うことは訳が分からないし、借金取りだのなんだのはやらされるし……。
とも子:アレがかわいそうでさあ。メインクエスト進めたくなくなっちゃって。雪山があるじゃない。デカい湖がある……。あそこにテント張ってさ。ゲーム内時間で10日くらいひたすらそこで魚釣って焼いて食って寝るって生活してたんだよ。
しげる:ウソだろオイ……。
とも子:いやすげー楽しいんだよ。夜とか空がキレイだしさ……。アーサーも魚釣れると笑ってくれるしさ。別にゲーム内でパラメータが変動するわけじゃないけどプレイしてるとだんだんアーサーの心が晴れる気がしてめちゃめちゃ良かった。
しげる:なんか感情移入する角度がまったく俺と違ってて怖くなってきちゃった。
とも子:それもやっぱり、RDR2というゲームがいちいち段取りをやらせてくるっていうところから産まれる楽しさだよな。あのゲーム、コーヒー飲むのもいちいちキャンプしてコーヒー粉使っていれて飲むってやるじゃん。それが楽しいんだよね。10日間山にこもってたときの気分としてはほぼ「ゆるキャン」だったわ。
しげる:俺はそのへんまで進めると、もう物語の行く末が気になっちゃってさあ。確かにアーサー落ち込んでるしかわいそうとは思うけど、癒やしてあげなきゃっていうよりはこの物語はどこに落ち着くんだろう? っていうのが気になってガンガン進めちゃったよ……。メインクエスト進めなきゃ! って気持ち沸かなかったの?
とも子:沸いた沸いた。基本的に早くクリアしたかったし。でもさ、メインクエスト進めるぞ〜! って遊び始めて強盗とかしちゃうと、いろいろ落とし前つけるのに1時間とか2時間とかかかるんだよ。
しげる:強盗するなよ!
とも子:強盗してさ、警察をまくじゃん。んで、夜になってるから寝て、朝になるとすぐ近くまで賞金稼ぎが来てるんだよ!
しげる:そりゃ来るわ。懸賞金とか払わないの?
とも子:払わない。お金が欲しくて強盗してるのに払うわけないじゃん。
しげる:怖っ!
池谷:そんなに無法働いててストーリー進めるのめんどくさくならない? デメリットがいろいろあるわけでしょ?
とも子:それがね。賞金首になるメリットがあるんですよ。あのね、懸賞金が1000ドルとかになるとね、一度に賞金首が10人くらい来るの! マジで死の危険を感じる。でもね、その人数でもね、家とか砦とか遮蔽(しゃへい)物があれば取りあえず返り討ちにできるのよ。
しげる:そうだね。ストーリー中でもそういうシチュエーションあるもんね。
とも子:で、殺した賞金稼ぎの持ち物あさるじゃん? ベルトのバックルとか結婚指輪とかさ……。それを盗品商に持っていくとね、一度に200ドルくらいになんの。
池谷:金の方からやってくると。
とも子:そう。それに賞金稼ぎって一人につき20ドルくらい現金も持ってるのよ。
しげる:発想がホンモノの無法者じゃねえかよ。
とも子:それを既にアーサー編で知ってたからさ。ジョン編になってさ、「俺はまっとうな人間になるんだ!」って銀行行ってさ、サインしてさ、すげえ金額を借金してきたぜ! っていうからオー、よっぽど大金借りれたんだなマーストンって思ってたらアイツ500ドルくらいしか借りれてねえんだよ! ウソでしょ? って思って。
しげる:(引き笑い)
とも子:ムカついたらすぐにサンドニに行って人を殺して200ドルくらい稼いできた。
しげる:そういうことやめましょうってゲームだろ!?
とも子:いや、なんかそこはジョンに分からせてやろうって感情が働いて……。
池谷:そこまでそっち方面に感情移入しちゃったらストーリーと乖離(かいり)が激しくて違和感覚えたりしない……?
とも子:いやそんなんでも……。バッドエンドっつってもアーサーは割と満足気に死ぬし。最後、割とみみっちいんだけど本人はやることやったぜみたいなふうに死ぬんだよ。
しげる:満足気に死ぬんだよ〜とか言ってるけどお前それバッドエンドだからな。
とも子:いやだから、最初バッドエンドだと思ってなかったからね。なんというか「しょせん無法者の死に方っていうのはこういうものなんですよ」っていう、そういう切ないストーリーだと思ってた。チャプターの節目節目に狼が出てくる(※)のも「ああ……アーサーはしょせん一匹狼なのだっていう暗喩なんやな……」って理解してたし……。
※ストーリー中である程度区切りがつくと、アーサーが見る夢のようなイメージで鹿や狼が出てくることがある。これは鹿が出てくると善行を働いた(グッドエンドに近づいている)、狼が出てくると悪いことをした(バッドエンドに近づいている)ということらしいのだが、とも子は狼の夢ばかりを見た
池谷:勝手な解釈しないで!
とも子:アーサーは本来、ダッチギャングみたいな群れにいるような男じゃない。ローンウルフであれという意味の……。
しげる:別に鹿も群れで出てこねえから! 一匹だけだから!
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