母の遺言書「残ったお金は兄に相続させます」 弟妹は遺産を取り戻せるのか?「テレフォン人生相談」先週のハイライト(1/2 ページ)
勝手に遺言書を開封してはいけません。
「テレフォン人生相談」(ニッポン放送・月〜金曜11時〜 配信)先週のハイライト。お金絡みの生々しい相談が多かった中、今回ピックアップしたのは8月21日(水)放送のドリアン助川パーソナリティー回。
家を継いだ兄が、死んだ母親の遺産を独り占めしようとしているという相談。
葬儀代と相殺したら遺産がなくなった!?
相談者は64歳男性。相談者の兄姉である長男は20年前に他界しており、次男は69歳、長女67歳。父親は19年前に他界。母親は3カ月前に96歳で他界している。
19年前に父親が亡くなった時、父親の遺産を、母親の分も含めて全て兄(次男)がひとりで相続する代わりに、母親の面倒は兄が全て見るという約束になっていた。
ということで兄は、父親の建てた家で母親と同居することに。これに関しては兄弟間でトラブルが起こることはなかった。
しかし今回、母親が亡くなったことで、改めて母親の遺産を分割する必要が出てきた。
兄からの申告によると、兄弟3人で分けた場合、ひとり200万円程度の金額になるようだが(実際に母親が遺した金額は不明)、母親の葬儀に480万円かかったとのこと。
兄としては、この費用と遺産を相殺して、相談者と姉に10万円ずつ振り込むことで遺産の分配を終わりとしたいようだ。
3人で分けた場合ひとり約200万円……つまり600万円程度の遺産があるはず。480万円の葬儀代を引くと、約120万円残る。それなのに、相談者と姉に振り込まれるのは10万円ずつ。この段階で計算がおかしい。
そもそも480万円の葬儀も、兄が独断で決めたもので、相談者たちには事前に何の相談もなかったという。……本当にそんなにかかったのかどうかも不明だ。
さらに、母親が書いたと思われる「私が亡くなったときについて、残った金は全部この兄に相続させます」という由の遺言書のコピーも一緒に送られてきたのだという。
この遺言に素直に従うとしたら、兄が遺産をひとり占めできる。葬儀代で相殺云々なんて面倒くさいこと言っているあたりからも、いろいろと細工をして遺産をひとり占めしようという意図が透けて見えてしまう。
「あなた様は、お母さんと兄が暮らすご実家にひんぱんに通われていたんでしょうか?」
「もちろん、ちょくちょく言っていましたし、母親がどこか出かけたいということであれば……まだ足腰が丈夫だった時は一緒に言ったり、そういったことは姉弟みんなやっていました」
「つまりは実家と縁が切れたわけではなかったわけですね? しかし実際には、一緒に暮らしていた兄が全ての親の遺産を自分のものにしてしまったと。シンプルに言うとそういうことですね」
母親の遺言書(たぶん)がある状況で、兄から遺産を取り戻すことはできるのだろうか?
母親の「自筆証書遺言」はそのままでは有効ではない!
この日のアドバイザーは、今年に入ってから加入したばかりの新アドバイザー・弁護士の野島梨恵。
兄が提示してきた母親の遺言書が、本当に母親が自筆したものである場合、法律的には「自筆証書遺言」というものになるという。
その場合、「そこにこう書いてあるから」といって、直ちに効力を発揮するわけではなく、事前に裁判所で「検認」という手続きが必要になるそうだ。
「検認」とは、遺言書の内容を変造されることを防ぐため、家庭裁判所に遺言書を提出して、相続人が立ち会いのもとで開封し、内容を確認すること。
勝手に遺言書を開封したり、家庭裁判所で検認をせずに遺言に沿って手続きを進めると、罰金を科せられることもあるという。
し……知らなかった! 故人がチョロッと書いただけの遺言書にそのまま従って、遺産分配しているケースは多そうだ。
その上で、たとえこれが本物の母親の遺言だと確認され、文面通り、兄がすべて相続するという話になっても、相談者と姉は「遺留分」を請求することができるのだ。
これは、なんとなく聞いたことある! 配偶者や子どもの権利を守るため、メチャクチャに偏った遺言書があったとしても、一定の範囲内で遺産の権利を主張することができる制度だ。
「まず遺言の本物を見せてもらうためにも、検認という手続きをまずして、みんなでそれを確認すること」「そして、お母さんが遺した遺産っていうものがどれくらいだったのかをしっかり確認しないと」
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