「噴水に座って写真を撮る」のは迷惑行為なの? ディズニーシー「ジャスミンの噴水」騒動に思うSNS映えへの敵視とファンのあり方
アラビアンコーストのエリアにある、プリンセス・ジャスミンが描かれた噴水は撮影スポットとして人気を集めていました。
東京ディズニーシー内の、映画「アラジン」をイメージしたエリア「アラビアンコースト」にある「ジャスミンの噴水」が、先週より植栽によって囲われており、この理由がSNSに写真をあげるために噴水の縁に座ったゲスト(来園者)が多くいたためではないか、とTwitterで憶測が広まりました。これについて運営元のオリエンタルランドは「改修のため」と説明しています。
ジャスミンの噴水の囲いは、撮影を防ぐためではなかった
「ジャスミンの噴水」は、映画「アラジン」に登場するプリンセス・ジャスミンが描かれた小さな噴水の通称で、見た目のかわいらしさから近年は写真スポットとしても人気を集めています。SNS上には、この噴水の縁に座って撮った写真が多数投稿され、このように写真を撮ることは比較的メジャーな記念写真の撮り方となっています。今回この噴水が植栽に囲われたことで、その理由が「縁に座るのはルール違反なのに、こうして写真を撮った人が多くいたため、閉鎖されてしまったのではないか?」という憶測がTwitterを中心に広まりました。この噴水の「淵に座る」行為は本当に迷惑行為・危険行為なのでしょうか?
オリエンタルランド広報は、囲いの設置は撮影マナーが原因ではなく「該当の噴水にかかわらず、パーク内では安全性の向上や修繕を目的として工事をさまざまな場所で行っており、今回もその一環です」と回答しています。
アトラクションと同じように、街並みも点検や工事を行っている
東京ディズニーリゾートに遊びにいったことがある方は、その際に何かしら「休止中のアトラクション」があったのを覚えているのではないでしょうか。これが「安全性の向上や修繕を目的として工事」中の施設にあたります。アトラクションは遊びにいった際に「乗れなかった」「目の前まで行ったのにやっていなかった」などの記憶があったり、公式にスケジュールを告知されていたりすることが多いため、点検や修繕工事をしているのが分かりやすいのではないでしょうか。アトラクションと同じように「ジャスミンの噴水」などの街並みやオブジェも、その美しさや安全性を保つために日々修繕工事が行われているのですが、アトラクションとは違って告知などがないため、目立つ場所が修繕に入った際にファンの間で話題になりやすいのです。
思い出されるトゥーンタウンの「木箱騒動」
この「ジャスミンの噴水」と同じように、ファンの間で修繕工事が話題になった場所があります。それは、東京ディズニーランドのトゥーンタウンに設置された「木箱の遊具」です。この木箱は、10個ほど積まれた木箱のオブジェの一部に取っ手がついており、それを引っ張ると動物の声がするという仕掛けが施されたもので、子どもに人気のある遊具として設置されていました。
しかし、SNSを中心にこの木箱の上に乗って写真を撮る行為が流行し、次第に写真撮影スポットとしての人気が上昇。木箱の上に乗った写真を撮るために、行列ができるようにまでなりました。その後、木箱のふた部分に「NO STEP(乗らないで)」の文言が追加されるなど、「木箱には乗らずに写真を撮ったり、音がなる遊具として本来の遊び方をしてほしい」という姿勢が公式に打ち出されるようになりましたが、木箱の上に乗っての撮影行為はなくならず、木箱はそのまま修繕工事に入ることになりました(2019年8月26日現在も木箱エリアは植栽で囲われており、再開は未定)。
この木箱は、もともと遊具として作られており、中に音の鳴る仕掛け(機械)が入っていること、また、それは上に乗ることを想定して作られたものではないと予想されること、そして何より「NO STEP(乗らないで)」と明記されていたことから、「乗るものではなく、また乗るべきでなかった」ということが明確であると言えます。
SNS映えへの過剰な敵視
この「木箱の遊具」の件と、今回の「ジャスミンの噴水」に共通することがあります。それは、一部ディズニーファンがそれらの場所で撮影をしているゲストをSNSなどで断罪するような行為が見られたことです。その行為とは、撮影した写真をアップしているSNSアカウントのスクリーンショットや、その現場を遠巻きに撮った写真と共に、「ルール違反をしている人がいた」という旨の文章と共に投稿するというもの。時には過激な言葉が添えられていることもあり、写真に写っていた人へ必要以上と思われる攻撃が見られました。このような行為は、テーマパークとファンに限らず、今やさまざまなところで散見されています。
明確に乗ってはいけないことが示されていた「木箱の遊具」とは異なり、「ジャスミンの噴水」は、少し高さがあるものの、その縁には簡単に座れます。また、一部が動いたりといった仕掛けも施されておらず、座ったことによって何かが破損したりということも考えられません。多くの人が座ったことで、噴水の縁の中央部がダメージを受けてはいましたが、これは淵に手をついて写真を撮ったり、ぬいぐるみなどを載せて写真を撮っても同様のダメージが見られたのではないかと考えられます。また、「キャスト(従業員)にここで噴水の縁に座った写真を撮ってもらった」という声も多く見られ、公式に「座ってはいけない」場所だということは考えにくいと言えます。
今なお拡散するディズニーファンの自警ツイート
今回の「ジャスミンの噴水」の修繕工事に関するディズニーファンのツイートでは、噴水を「乗ってはいけない場所」として、そこで写真を撮る人を非難するものが多数見られました。また、同時に注意喚起画像が拡散されていますがこれはファンが作ったものであり、そこに描かれているいずれの行為も公式に「座る場所である」「禁止である」ということが示されたことはありません。
もちろん、パークの中で組体操をしたり、装飾に立ったり座ったりした上で危険な行為をするなど、自身や周りの人にけがをさせたりする恐れのある行為は、キャストが個別に注意をして止めることはあると思われます。その声を無視して撮影を続行したり、そうして撮影したものをSNSにアップするのはもちろん良くないことですが、ディズニーファンによる必要以上の自警によって、他のゲストがパークを楽しんでいるのを阻んだり萎縮させたりするのは、ファンの域を出た行為と言えるのではないでしょうか。
想像力を持ち、写真表現を楽しんで
「インスタ映え」がそこかしこで叫ばれる昨今、それに伴う迷惑行為、危険行為が問題になっています。一方で、写真を使った表現にこれだけ多くの人が興味を持っているのに、その感性や創造性までもまとめて「インスタ蝿」「バカスタグラム」などと揶揄(やゆ)し、同じ「迷惑」に押し込めてしまうのは軽率で無遠慮だと感じます。
奇麗なもの・楽しいものが多く、来た人の想像力を刺激してくれる東京ディズニーリゾート。安全とキャストさんの指示を守り、また同じように楽しんでいる他のゲストにも想像力を働かせ、ステキな写真を撮りたいですね。
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