「どれだけ研鑽を積めばウメハラの領域にいけるのか」 東大卒プロゲーマー・ときどが語るeスポーツ界の新たな課題と“最強”への道筋(1/4 ページ)

人気・実力ともにトップクラスのプロゲーマー。

» 2019年11月02日 13時00分 公開
[イッコウねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 プロゲーマーの「ときど」といえば、今やゲーマーなら知らない人はいないほどの有名プレイヤーだ。東京大学を卒業したインテリでありながらプロ格闘ゲーマーとして生きる道を選択し、栄光と挫折を味わいながらも2017年に世界最大の格闘ゲーム大会Evolution(EVO)で優勝を果たし一気に飛躍。その優勝に至るまでの劇的な展開は、格闘ゲーマーの枠を超えて大きな話題となった。


ときど

 人気はもちろん実力も世界トップクラスであり、メインで活動する「ストリートファイター」シリーズのランキングでは常に上位を維持している。元々コアゲーマーからは知られる存在だったが、近年ゲーマー以外からの知名度が上がったことで、2017年には「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」に、2018年には「情熱大陸」に出演するなど、ゲーマー界だけでなく一般層にも比較的知られた存在といえる。

 ときどが周辺機器メーカーと契約し、プロゲーマーになったのは2011年。「eスポーツ」という言葉も浸透し、プロゲーマーの地位も向上しつつある中、プロ格闘ゲーマーの最古参の1人であるときどは、eスポーツ界の今をどう見ているのか。日本を代表するプロゲーマーの1人となったときどに話を聞くと「誰よりも強くなりたい」というシンプルな野望と、レジェンドプレイヤー・梅原大吾の領域に挑むチャレンジャーの姿が見えてきた――。

ときど(本名:谷口一)

ときど

現在34歳。ストリートファイターVをメインに活動するプロ格闘ゲーマー。ストリートファイターシリーズの公式ランキングでは常に上位を維持しつづけ、2017年には世界最大の大会「Evolution」において劇的な展開を経て優勝したことでも有名。人気・実力ともに国内トップクラスのプロゲーマー。東京大学出身。



「一番強いプレイヤーになりたい」

――EVO2017での優勝以降、ときどさんへの注目度が非常に上がっていますよね。ご自身の目から見ても環境は変わりましたか?

ときど:変わりましたよね。それまではテレビで扱っていただけることはなかったですし、eスポーツという言葉も通用するようになりましたし。徐々にゲームが認知されるものになってきたと感じます。

――有名企業からスポンサードを受けたり、情熱大陸に出演したり、日本のeスポーツを象徴する人物の中の1人になっていると感じます。

ときど:ありがとうございます。そう言われるとありがたいですね。

 ただ、プロゲーマーとしてあるべき姿みたいなのもあるんですけど、個人的な欲望としては「一番強いプレイヤーになりたい」というのが根本にあるんですよ


ときど 「一番強いプレイヤーになりたい」

――そういう意味で言うと、「ストリートファイターV」のリリース以降は大会成績もずっと好調ですし、ランキング上でも常に上位を維持していますよね。

ときど:でも、ゲームに対して真剣に取り組むプレイヤーが増えたので、大会では勝ちづらくなってきていますね。それに、大会で勝てている人が一番強いプレイヤーかというとそうではないと思うんですよ。やっぱ今のルールだと、遊び尽くすことのメリットってあんまり出ないので。

――遊び尽くすことのメリット?

ときど:例えば梅原(大吾)さんは、“特定のキャラクターVS特定のキャラクター”という一つの組み合わせに絞って10先などの長期戦で戦うと、すさまじい戦績を誇ってるわけですよ。こういったルールでは既存の大会のルールと比較して、より“ゲームを深堀りする力”が問われるんです。自分も昔ゲームセンターでやってきた身なので、そういうゲームを遊び尽くして強さを発揮するスタイルに憧れてるんですよ。いまだに。

※梅原大吾:格闘ゲームというジャンルの黎明期から活躍し、数多の伝説を残してきたレジェンドプレイヤー。日本における最初のプロ格闘ゲーマーとしても知られる。


※10先(じゅっさき):「10セットを先取した方が勝ち」というルールで行われる試合のこと。梅原選手はEVO2013王者のXian選手に10-0で勝利、EVO2012王者のInfiltration選手に10-2で勝利するなど、特定の相手に絞った10先で驚異的な戦績を残している。


 でも深堀りしすぎてしまうと……例えば「リュウだけで戦う大会」とかそのぐらいシンプルなら良いですけど、通常の大会では一つの組み合わせに絞って攻略を深める価値は問われない。もちろん、エンターテインメントですし見せ方もあるのでそういうルールにしなければいけないんですけど、もう少し深堀りすることに意味をもたせるルールも……でも、そのためにエンターテインメント性を犠牲にするのも難しいですよね。


ときど

 僕は(現在主流となっている形式の)大会向けの性格で、一定の期間の中で深堀りしすぎずに満遍なくやり込む能力は長けているので、大会の成績は安定しているんです。

――では、ときどさんは「現状の大会ルールでは“本当に強い奴”が上にいけるシステムにはなっていない可能性がある」と感じているわけですか?

ときど:昔に比べれば、強いプレイヤーはかなりの精度で上がれるようにはなったと思います。でももちろん乖離はありますよ。まあ大会ですし、ある程度ランダム性もないと新しい人も入ってこれないですし、今の大会ルールはそれなりのバランスにはなってると思いますけど。

――そういえば、私もときどさんのプレイ映像を初めて見たのは2003年の闘劇で梅原さんを倒して優勝したときでしたけど……。

ときど:年に1回しかない大会で、あのルールで勝ったって「最強」なんて言えないでしょ!?(笑) 今は大会の数も多いですし、だいぶ良くなりましたよ(笑)。


ときど 当時のルールの過酷さを語るときどさん

※大会ルール:現在の大会は2セットから3セットを先取すれば勝利となるルールで、かつ敗者復活システムが設けられているのが主流。2003年に開催された国内最高峰の大会「闘劇」では、1セット先取で負けたら即終了という過酷なルールだった。


――そういえば、ときどさんは「ストリートファイターIV」から豪鬼を使い続けていて、今では豪鬼使いのシンボルとなっていますが、豪鬼を使い始めるきっかけになったのは梅原さんだったそうですね。

ときど:そうです。梅原さんが「このゲーム、サガットとか豪鬼が強いから……豪鬼で良いんじゃない?」って。“どうせお前なんか豪鬼で良いだろ”みたいな意味だったかもしれませんけど(笑)。当時からポテンシャルを感じていたキャラだったんですが、使い込んでみたら結果的に超強かったですね。


ときど ときど選手の代名詞とも言えるキャラクター「豪鬼」。ストリートファイターIVでは屈指の強キャラであり、ときど選手が開発した「ときど式」と呼ばれるセットプレイがその評価を確固たるものにした一因(画像は「ULTRA STREET FIGHTER IV 公式サイト」)


梅原は「この領域まで行くのに、どれだけ研鑽を積んだのか」

――日本の格闘ゲームを象徴する存在といえば、誰もが挙げるのは梅原大吾。ときどさんはそれに次ぐ存在になっているように感じます。ときどさんにとって梅原さんはどういう存在ですか?

ときど:……生霊ですかね。亡霊でもいいですけど。


ときど ウメハラが亡霊……?

――……いや、さすがに分からないので説明してもらってもいいですか(笑)?

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」