辞書作りの世界を描いた『舟を編む』、どれくらいリアルだったんです? 映画版制作に関わった『大辞林』編集長インタビュー(2/3 ページ)
『舟を編む』より『舟を編む』っぽいことしてません?
――― 逆に「『舟を編む』のここはちょっと違うぞ」というシーンは?
編集長:小説だと作者・三浦さんが「時代を限定したくない」ということで、いつの話なのか書かれていないですが、映画版はセットを使う都合もあって時代設定が設けられています。1995年〜2010年ごろが舞台になっていて、よく見ると1995年のカレンダーが映っていたり。
それで時代の変化について言うならば、「血潮」のシーンでしょうか。
――― 校正の途中で「血潮」の記載漏れが見つかり、1カ月間泊まり込みで確認作業を行うところですね。辞書作りへの情熱が試されるような印象的なシーンでしたが
ながさわ:そんなミスはありえない、ということですか?
編集長:いえ、「あの語がないじゃないか」「ここが違うぞ」というのはよくあるトラブルで、ヒヤヒヤしながら作ってますよ(笑)。血潮のような基本的な語が抜け落ちていることも、なくはない。
でも、現在はデジタル化が進んでいて。特に『大辞林』は編集支援システムを組んでいて、人手を使わなくても短時間で調べられるようになっています。大量動員して皆でゲラをめくって、誤りを見つけるというのは今は現実的ではありません。
ながさわ:「血潮」のようなミスがあっても、PC上から一発で検索できる、と。
編集長:そうですね。でも、それだけでは分からないところもあって、辞書づくりの基本は今でも「自分の目で見ること」です。そういう意味では『舟を編む』のリアリティーは揺らがないと思います。
――― 雑誌編集部にいたことがあるのですが、原稿にミスがないか1つ1つ自分の目でチェックしていく校正作業は重労働。『大辞林』ほどのページ数(3200ページ)となると……
ながさわ:そういえば、読者から「何校までやったんですか」という質問が来ていましたね。
編集長:大きいのは4校くらいまでで、責了(※)ということにしたのですが、責了の確認として念校(※)が出て。その後も再念校、再々念校。紙でいうと7校くらいまでやりました。
※責了:責任校了の略。訂正箇所が少ない場合などに印刷会社に責任をもって修正してもらい、校正を終了すること
※念校:責了後、念のために校正すること
――― ミスがないか細部まで確認する作業を7回も繰り返したわけですか、あのページ数で
編集長:再校(2度目の校正)までは「棒ゲラ」といって、書き込みスペースがある形で印刷するのですが、そうするとページ数が2倍の6000枚くらいまで膨れ上がります。
ながさわ:6000ページ×2周で、1万2000ページ。もうめくるだけでも相当なことですよね。
編集長:初代編集長の倉島は紙のめくり過ぎで指紋が消えたそうですが、私の場合は手首を痛めました。もっと紙をめくるフォームに気を付けるべきだったかもしれません、手首を返さないようにするとか。
ちなみに、デジタル版でもやっぱり紙で確認しないといけないところがあって、こちらも3校くらいやっているので、合計すると10校ですか。あと、最後のほうはスケジュール的に厳しくて。赤字(修正指示)が少なかったのもありますが、1カ月間で3校回していました。
――― 何だかんだで『舟を編む』の血潮のシーンより、辞書愛が試される展開になってません?
編集長:死ぬかと思いました(笑)
ながさわ:よくぞご無事で!
(続く)
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