「アベンジャーズ/エンドゲーム」より長い2019年の傑作映画4選 “見るマラソン”を制してこその感動があった!

「『アベンジャーズ/エンドゲーム』の3時間2分は短い! と思わせてくれる傑作映画たち。

» 2019年11月09日 11時00分 公開
[ヒナタカねとらぼ]

 突然だが、“上映時間の長い映画”の鑑賞に躊躇してしまうことはないだろうか? 忙しい現代社会、娯楽も多様化し、誰しも時間に追われる中、わざわざ劇場へ足を運ぶとなれば、長尺映画は選びにくくなっているのかもしれない。

 2019年のメジャー公開作での長尺映画には「アベンジャーズ/エンドゲーム」(3時間2分)、上映中の「IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」(2時間49分)、12月20日公開の「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」(2時間35分予定)などがある。それぞれが人気シリーズの最終作であり、きちんと“終わらせる”ために上映時間が伸びるのは致し方ないが、それでも見る前に「冗長になってしまうのは避けて欲しい」「主に膀胱が心配……」と心配になってしまう方もいるだろう(筆者含む)。

「アベンジャーズ/エンドゲーム」より長い2019年の傑作映画4選 “見るマラソン”を制してこその感動があった!「アベンジャーズ/エンドゲーム」より長い2019年の傑作映画4選 “見るマラソン”を制してこその感動があった!「アベンジャーズ/エンドゲーム」より長い2019年の傑作映画4選 “見るマラソン”を制してこその感動があった! 長尺映画戦国時代……。/(C)2019 MARVEL/(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED./(C)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 しかし、やはり世の中の長尺映画には長いなりの理由が十二分にあり、その長い時間を(“見る”というよりも)“体感”してこその感動があるのも事実だ。ここでは、2019年に公開された映画から、相対的に「『アベンジャーズ/エンドゲーム』の3時間2分は短い!」と思えるかもしれない、知る人ぞ知る4本の傑作長尺映画を紹介しよう。


1:「象は静かに座っている」

 まず紹介したいのが「象は静かに座っている」だ。上映時間は3時間54分。休憩(インターミッション)なしでの上映のため、事前のトイレはもはや必須事項だ。

「エンドゲーム」より長い2019年の傑作映画4選 “見るマラソン”を制してこその感動があった! (C) Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen

 内容を端的に記せば、鬱屈した人生の真っ只中にいる4人の男女の1日を描くというドラマだ。友人をかばって不良を突き落としてしまった少年、家に居場所がなく教師と関係を持つ少女、親友を自殺に追い込んでしまった青年、娘夫婦に邪険にされ老人ホーム行きを拒もうとしている初老の男と……それぞれがジョーカーになってもおかしくないほどに人生がどん詰まり状態になっている。

 そんな4人は、2300キロも離れた遠くにいる、一日中ただ座り続けているという奇妙な象のうわさを耳にする。それは彼らの人生とは何の関係もないはず……そう、“はず”なのだ。その座っている象のうわさが、彼らにとって希望になるのか、はたまた関係のないまま物語が終焉するのか……そこも見どころとなっている。

 長い上映時間は、“長回し”に由来するものがほとんどだ。カットを切り替えることなく、人物の歩む道のりや表情をじっくりと映すショットそれぞれが、地方都市の閉塞感と、彼ら彼女らの“最悪の1日”を描くために必要不可欠だったのだ。

11月2日からシアター・イメージフォーラムほかにて絶賛上映中

2:「サタンタンゴ」

 「サタンタンゴ」の上映時間はなんと7時間18分! 途中休憩も2回用意されており、休憩時に軽食を口にしなければ確実にお腹が空いてしまうという、どうしたって1日仕事になる尋常じゃない上映時間だ。


 物語を端的に記すと「経済的に行き詰まって疑心暗鬼が蔓延している村に救世主がやってくる」というもの。後ろ向きで暗い物語ではあるのだが、なぜか観終わった後にはすっきりとした心持ちになった。おそらく、内容が退廃的すぎて逆説的に現実で前向きに生きようと思えたこと、何よりも8時間近い時間を乗り切ったという達成感があったことが、その理由なのだろう。

 筆者は休憩時に「全然いけるわね!」「余裕よ余裕」といった会話を聞くことができ、“みんなでマラソンしている感覚”も味わうことができた。

・関連記事:上映時間7時間18分の映画「サタンタンゴ」を見ると人間は「サタンタンゴを見た状態」になれるという話


3:「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」

 「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」の上映時間は3時間26分で、途中休憩が1回用意されている。実在の図書館の舞台裏を描くというストーリー性のないドキュメンタリー作品なのだが、「えっ? 図書館ってそんなことまでするの!?」という驚きの連続だ。

「エンドゲーム」より長い2019年の傑作映画4選 “見るマラソン”を制してこその感動があった! (C)2017 EX LIBRIS Films LLC - All Rights Reserved

 図書館は地域貢献や教育にがっつりと関わっており、学芸員たちは予算の捻出のために会議を重ねる。奴隷や宗教など人類史に根ざしたアカデミックな講演や会議も展開され、その全てが興味深い。作中では「図書館はただの本の置き場ではない」という主張もあり、まさにその通りだった。

 蔵書にはさまざまな歴史が集積しており、図書館は“文化”や“人”と切り離せない存在である。そんな図書館の意義と可能性を知る意味でも、見ていただきたい一作だ。


4:「読まれなかった小説」

 最後に紹介するのは、11月29日に公開となる「読まれなかった小説」。上映時間は3時間9分。

「エンドゲーム」より長い2019年の傑作映画4選 “見るマラソン”を制してこその感動があった! (C)2018 Zeyno Film, Memento Films Production, RFF International, 2006 Production, Detail Film,Sisters and Brother Mitevski, FilmiVast, Chimney, NBC Film

 主人公は作家を夢見て小説を出版しようするが誰にも相手にされず、現実的な就職先である教職も倍率が高く……と、夢も、現実も進退窮まる状況に追い込まれてしまった青年。そんな彼はイライラの原因でもある父親、高校時代の同級生の女性、地元で著名な小説家などと、ひたすら問答を繰り返していく。

 一見すると文芸的でとっつきづらい印象を受けるかもしれないが、実際は夢と現実の間で苦悩する青年と、彼から疎ましく思われている父親との関係をリアルに描いた、普遍的なドラマだ。展開は淡々としており物語の起伏は少ないが、哲学的な問いかけは全てが既知に富み濃厚であるため、興味が尽きない。その末に導き出されるラストシーンには、言葉にならないほどの感動があった。


「アベンジャーズ/エンドゲーム」は短い?

 この他の2019年公開の長尺映画には、リバイバル上映された「東京裁判」(4時間37分)や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」(2時間45分)、11月15日公開の本編尺が10分間拡大した「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド エクステンデッド・カット」(2時間51分)、11月15日一部劇場公開/11月27日配信となるNetflix映画「アイリッシュマン」(3時間29分)、約30分の新規場面が追加された11月20日公開の「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(約2時間40分予定)もある。

 さらには、日本未公開であるが第72回カンヌ国際映画祭で途中退席者が続出したという「Mektoub, My Love : Intermezzo」は、3時間32分の上映時間のうち3時間は女性たちが振り続ける尻がクローズアップで映るという(色んな意味で)すさまじい内容らしい。

 どうだろうか、「『アベンジャーズ/エンドゲーム』の3時間2分は短い!」と思えてこないだろうか(思えてほしい)。本当にそう洗脳……じゃなかった、そう認識できるほどに、本稿で挙げた4作は劇場の椅子にどっしりと座り、長い時間をかけて見届けてこその感動がある、掛け値なしで素晴らしい映画だ。いずれも上映期間および劇場が限られているため、公式サイトから劇場情報を確認し、機会があればお近くの映画館に駆け込んでほしい。

ヒナタカ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/05/news022.jpg 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. /nl/articles/2410/05/news040.jpg 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  3. /nl/articles/2410/02/news116.jpg 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  4. /nl/articles/2410/05/news023.jpg 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. /nl/articles/2410/05/news018.jpg 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  6. /nl/articles/2410/05/news012.jpg 「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
  7. /nl/articles/2410/04/news048.jpg 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  8. /nl/articles/2410/04/news040.jpg 50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
  9. /nl/articles/2410/04/news025.jpg 「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
  10. /nl/articles/2410/05/news032.jpg 大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
  2. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  3. トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
  4. 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
  5. そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
  6. 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
  7. 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
  8. “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
  9. 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
  10. 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声