【たぶん日本最速レビュー】ありそうでなかった「大喜利」に日本初対応!? 10年ぶりに改訂された『岩波国語辞典』はここがスゴい(1/4 ページ)

たぶん日本のWebメディアで一番早いと思います。

» 2019年11月26日 18時50分 公開
[ながさわねとらぼ]

『岩波国語辞典』第8版特設サイトより

 刊行が待ち望まれていた『岩波国語辞典』(『岩国』)の10年ぶりの改訂版である第8版が、去る2019年11月22日、ついに書店に並びました。

 その2カ月前のこと、私は神保町ブックフェスティバルの会場にいました。『岩国』を刊行する岩波書店もブースを出しており、そこに『岩国』の外箱と、内容見本のリーフレットが置かれていたのです。

 「うひょー! 箱の写真撮ってもいいですか!」

 「はあ、はい……お好きなんですか?」

 「大ファンです!

 「はは、ありがとうございます……」

 岩波書店の営業さんをドン引きさせるほど興奮してしまいましたが、リーフレットを読み、熱狂はさらに絶頂へと向かいます。

おおぎり【大切り】(3)……。転じて、出題に対して滑稽な回答や転機を競い合う演芸。▽(3)は「大喜利」とも書く。

 ほげえええええ!!! すごいよ!!!!!!!

 何がすごいのか分からない方のために説明すると、「大喜利」はもともと「寄席の最後にその日の出演者たちが行う余興」を意味していたのが、お題に対して面白いことを言う余興そのものが「大喜利」と呼ばれるようになったということを記録しているわけです。

 確かにネット上でみんなが1つのテーマに対してボケを連発するようすを「大喜利状態」なんてたとえたりしますよね。で、この用法をキャッチできている辞書は他にまだなく、おそらく『岩国』が最初なのです。いやあ、すごい観察眼です。

 「そんなの、『岩国』がいちばん新しい辞書なんだから、他の辞書になくても仕方ないでしょ」と思われるでしょうか。ところが、そうとも言えないのです。

 第8版の序文には、以下のようにあります。

 「新しい語、新しい意味・用法については、他の辞書に比べて若干慎重な姿勢をとり、十分に定着したと判断されるものを掲載するようにしている

 「他の辞書に比べて若干慎重な姿勢」をとっているにもかかわらず、他の辞書にまだない「大喜利」の新用法を載せていることが何を意味するか。「お前ら、こんな意味も見落として、観察が足りねえんだよ」という、『岩国』から他の辞書に対する痛烈なメッセージなのです(私の勝手な解釈です。念のため)。

ライター:ながさわ(Twitter:@kaichosanEX/ブログ:四次元ことばブログ

数百冊の辞書を保有する辞書コレクター。暇さえあれば辞書を引いている。「四次元ことばブログ」(http://fngsw.hatenablog.com/)で辞書や日本語について発信中。


【たぶん日本のWebメディアで一番早いと思います】『岩波国語辞典』第8版レビュー

 こういう方針の辞書なので、新しく追加された項目には「こんなことばがもう辞書に載っているなんて!」とびっくりするような新語はあまりありません。ためしに、先頭から順に、新しく加わったことばを20語抜き出してみます(語義の追加は除く)。

アーティスティックスイミング/IoT/相異なる/愛車/アイシング/アイスキューブ/アイスダンス/ID/相半ばする/アイバンク/iPS細胞/アイマスク/アイライン/アウェー/アウター/アウトウェア/アウトソーシング/青紫蘇/青田売り/青房

 「IoT」など新しめの語もあるにはありますが、必要なことばをしっかり補う、堅実な追加という印象です。そう、この堅実な改訂こそが、『岩国』の真髄なのです。

 話題性のために、全く新しいキャッチーなことばを辞書に入れるのは簡単ですし、宣伝にもなります。しかし、そうはしないで、明治の後半くらいから現代までの日本語に広く目を向け、急がずじっくりと加筆修正を施していく。この地道な営みに敬意を表します。『岩国』の信頼感はここに裏打ちされているのです。

 では、どんな項目が修正されているか、詳しく見てみましょう。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/06/news012.jpg 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  2. /nl/articles/2502/08/news008.jpg 「本当にこれでいいの?」 親子の“価値観の違い”で対立も…… 100万箱以上売れた「家庭科のドラゴン」、人気再燃の理由
  3. /nl/articles/2502/08/news087.jpg 木村拓哉がタイプロで「弁当」差し入れ→“衝撃の価格帯”に騒然 「ぶったまげた」「庶民には買えない」
  4. /nl/articles/2502/08/news038.jpg スーパーで買ったちりめんじゃこをよく見たら…… 紛れていた“まさかの生き物”が2000万表示「これは当たり!」
  5. /nl/articles/2502/07/news132.jpg 「いまこんななの?!」ディズニーリゾート内の商業施設、“ゴーストタウン化”に衝撃の声 改装前の閉店ラッシュに「寂しい」
  6. /nl/articles/2502/08/news091.jpg 北海道の“雪のヤバさ”が伝わる写真に460万表示の反響 衝撃的な光景に「何かの冗談でしょ?」「見たことない景色」
  7. /nl/articles/2502/07/news135.jpg 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい〜」「読める人同世代w」
  8. /nl/articles/2502/08/news016.jpg 「味見したら止まらなくて危険」 “何度も作ってしまう”簡単サラダが間違いない! 「思う存分作って食べます」と95万再生
  9. /nl/articles/2502/08/news015.jpg パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  10. /nl/articles/2502/06/news004.jpg 14歳のとき、親友の兄と付き合うことになった女性→13年後…… “まさかの結末”に「韓国ドラマみたい」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議