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» 2019年12月01日 18時30分 公開

「lainというコンテンツが生き延び続けていく。それを見守りたい」 serial experiments lainファンイベント「クラブサイベリア layer:03」レポート

制作陣も登壇した「クラブサイベリア layer:03」の様子をレポート。

[将来の終わり,ねとらぼ]

“lainを好きになりましょう。lainを好きになりましょう。lainを好きになりましょう。”


Photo by 日浦一郎

 1998年に放送されるや否や、瞬く間にカルトアニメとしての地位を確立した「serial experiments lain」。その第12話、遍在するlainに共振したアナウンサーが幾度も画面の外に呼びかける印象的なセリフをサンプリングした「"S"peEd〜玲音を好きになりましょう」が、渋谷の地下に鳴り響く。ドラッギーな幾何学模様と爆音に支配されたこの様相は、昨年(2018年)に続き開催されたserial experiments lainファンイベント、「クラブサイベリア layer:03」の一部。

  • 昨年行われた第1回「クラブサイベリア」のレポートはこちら

 作中DJである"JJ"を演じたWASEI"JJ"CHIKADA氏が「これは『lain』の続きの物語だ」との言葉と共に送り出した新盤、「Cyberia Layer:3」の先行販売も行われたフロアでは、前回の倍の数に匹敵する「lain」ファンたちが歓喜の中拳を突き上げ、lainを、レインを、れいんを――岩倉玲音の名を叫んでいた。


Photo by 日浦一郎

Illustrated by あきま

ファンとの共振で生まれた一大イベント

 東京では2度目の開催となるこのイベントは前回同様、シオドア氏をはじめとするファン有志たちの手によって実現されたもの。もともとは「lain」20周年の思いつきとしてTwitter上での同時視聴を呼びかけたところ、本作のシリーズ構成・脚本を手掛けた小中千昭氏がこれに反応。当時の思い出を振り返るブログ「Welcome Back to Wired」を開設し、これにより同時視聴の輪が拡大していった。

 「実際のクラブでイベントを行うことでlainファンの橋渡しができたら」と考えた小中氏の声かけに応じる形で、プロデューサーの上田耕行氏、岩倉玲音役の声優・清水香里氏、キャラクターデザイン安倍吉俊氏が登壇、WASEI"JJ"CHIKADA氏がDJプレイを行うという、ファン主催としては異例ともいえる一大イベントとなった。


Photo by 日浦一郎

超プレミア付きPS版「lain」。今年もありました/Photo by 小馬谷優介(Navel Film)

 昨年同様、今年も2人のDJ・VJによるプレイを挟み、続いて関係者によるトークショーが行われた。「いつかまた周年の際にやれたら」と思っていたという小中氏に加え、清水氏も続投。安倍氏も昨年同様、トークの合間にライブペインティングパフォーマンスにて引き続き登壇し、今年はさらにスペシャルゲストがもう1人。既に芸能界を引退していたタロウ役の滝本啓人氏が登壇すると、観客からはどよめきの声が上がる。それもそのはず、氏はチケットのもぎりスタッフとして会場に紛れ込んでいたからだ。収録当時は小学生、子役として活躍していた滝本氏も今や立派な大人に。清水氏が「大きくなったねえ……」と感慨深そうに漏らすと、会場は笑いに包まれた。


左から滝本氏、ライブペインティング中の安倍氏、小中氏、清水氏/Photo by 小馬谷優介(Navel Film)

「すごく前の作品なのに(参加者に)若い方が多くて、どうしたと!(笑)放送から21年経って広がってるってすごいな」(清水氏)

「見返してやっぱ思うことは『わけわかんねえ』(笑)当時自分が10歳でして、母に録画してもらって見ていましたが、母親も他の親達に教えるか困っていたと思う」(滝本氏)

 など、率直な言葉が飛び交うセッション。当時の収録秘話(※1)や滝本氏のこれまで(※2)について触れながら、会場の客層に自身の年齢について挙手を募ると、実に半数以上が20代。また初参加者がほとんどという結果になり、「lainでどれだけ人を集められるのか。あえて今回はプロモーションを(自分からは)行わなかった」という小中氏をはじめ、登壇者はみな驚いていた。


小中氏と清水氏/Photo by 小馬谷優介(Navel Film)

 小中氏からは「若い方には伝わらないかも」と前置きながら、lainの発想の起点となった映画についての話(※3)や、用意している新作(※4)についての情報など、1時間以上にわたる濃密な話を展開。そしてトークショーも終わりに近づき、満を辞して"JJ"が登壇。滝本氏を登壇させた立役者(※5)である彼が見事に最後をかっさらっていった。

※1……清水氏のシリアスなシーンの収録中に滝本氏が台本を落としてしまうも、ギリセーフ!」となった。
※2……小中和哉監督「ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦」などに出演後、子役を引退。引退後は「lain」の影響か、クラブミュージックに熱中し在学中はDJを行うほど。「lainのせいでクラブカルチャーが嫌いになっていなくてよかった(笑)」とは小中氏。
※3……「ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』以前であり、サイバーパンクという言葉もない時代の映画。自分ではクローネンバーグ『ビデオドローム』の影響かと思っていたけれど、同監督の『スキャナーズ』だったことに気付いた。作中の電話回線を通じて念動力で攻撃するシーンが『lain』に反映されている」とのこと。
※4……安倍吉俊氏との合同プロジェクトであり、「2021年に発表できれば」。
※5……「layer:02」発売時、デジタル版との多重発注を行った発注者にJJが連絡をとり、滝本氏が名乗ったことが本イベント登壇のきっかけ。

 作中に登場する電子ドラッグ・アクセラを幻想的に再現した映像や、作中シーンのカットアップと共に流れる冒頭にあげた「"S"peEd」に続く曲では、JJが滝本氏と共にDJブースに立つ姿も。lain放送当時、滝本氏同様年端もいかなかった人々が1カ所に集い、クラブアレンジされた「Duvet」のサビやエンディグテーマ「遠い叫び」のフレーズ、「永遠のならず物達を……」と歌いあげる様は、胸に込み上げるものがあった。


Photo by 日浦一郎

会場ではlain POP UP STORE Ver.1.30(「messa store」と「CHAOS MARKET」による)にて、公式ライセンス・アパレル商品が先行販売された。現在は東京・中野ブロードウェイ地下1階のカオスマーケット内で購入可能/Photo by 小馬谷優介(Navel Film)


「lainTTL」:突然の二次利用ガイドライン公開、そして

 今年7月、上田プロデューサーが突如「『lain』について発表がある」とツイートを行い、翌日深夜に発表された「lainTTL」。これは"Time to Live"の言葉のごとく、lainを力強く生き返らせようとするファンに対し、無償で一定期間・一定範囲内での二次利用行為を許諾するものだ。


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 この流れを受けて、主にTwitter上ではlainの創作イラスト、小説等がハッシュタグ#lainTTLで投稿され続けている。本イベント主催のシオドア氏もこれに応じ、現在lainに関するコンベンションイベントを計画中。本記事のタイトルはトークショー中の小中氏の言葉から挙げさせてもらった。オリジナルの作り手の想定を超え、いまだに拡散を続けていくlainは、時代の進化と呼応しながら遍在し続けている。


ピーピーガー/Photo by 小馬谷優介(Navel Film)

 「serial experiments lain」は12月現在、Amazon prime videoで各話レンタルが可能となっており、HuluU-NEXTバンダイチャンネルなどで定額見放題配信中。lainを好きになりましょう。

将来の終わり


Club Cyberia layer:03(2019.11.16) Staff

ライブペインティング/安倍吉俊

トークセッション/安倍吉俊/小中千昭/清水香里/滝本啓人

スペシャルゲストDJ/WASEI"JJ"CHIKADA

DJ/32/眠樹

VJ/フジワラコウスケ

lain POP UP STORE Ver.1.30

messa store/CHAOS MARKET

カメラマン/小馬谷優介

カクテル購入特典イラスト/久賀フーナ/薫人/Rosa

カクテルメニューイラスト/横

スタッフ/土方ペチカ/かがみ(神様)/いのっち/いずみさや/Rosa/38/窓/ぐるめぐ/黒猫

オーガナイザー/シオドア

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