いまだ破られぬ詰将棋の手数最長記録(1525手詰) 作者に聞く「盤上の『ミクロコスモス』はいかにして生まれたか」(2/5 ページ)

» 2019年12月24日 18時00分 公開
[橋本長道ねとらぼ]

「私よりもこの作品の方が長生きするだろう」

―― 橋本さんはWebサイト上で「ミクロコスモス」について「私よりもこの作品の方が長生きするだろう」というコメントをしています。この思いは今も変わりませんか


1982年以降の発表作をまとめた「橋本孝治 普通詰将棋作品集」より

 「ミクロコスモス」のアピールポイントは第一にその長手数にあるわけですが、記録自体は更新される可能性があります。しかし、例えば、1755年に発表された伊藤看寿の「寿」(611手詰)は、今も名作として親しまれています。これを超える手数の作品が数多く作られている現代でも、その独創性は詰将棋愛好家に伝わっており、今もなお「寿」の存在感は失われません。


伊藤看寿は江戸時代の詰将棋作家として著名な人物。その年で最も優れた詰将棋作品に贈られる賞に「看寿賞」がある。橋本さんは「イオニゼーション」「ミクロコスモス」などで計4回の受賞経験

 長手数記録の実現に新しい発想が伴っている場合、記録が更新されても作品価値はなくなりません。その意味で、「ミクロコスモス」は私がこの世から去った後も、人々の記憶に残ると信じています。

―― そんな作品を22歳の若さで完成させたとき、どのように感じられましたか

 とにかく「早く誰かに見せたい」という気持ちでいっぱいでした。『詰将棋パラダイス』誌に投稿していたので、時がくれば発表されるわけですが、詰将棋史に残るかもしれないこの作を、自分の心の中にしまっておくには大変な忍耐力が必要だったのです。

 詰将棋の会合で親しい棋友に詳しく説明するつもりだったのですが、その日は関東に大雪が降り、電車はストップ。代わりにバスを利用するも、それも途中でストップ。やむなく雪の中、徒歩で帰宅しました。個人的なお披露目のチャンスはついえてしまいましたが、雪のおかげで頭が冷えたのか、それ以降は割と平静に発表を待つことができるようになりました。

―― 当時、詰将棋業界はもちろん、一般マスコミからも取材が殺到したそうですが

 確かに新聞や雑誌からの取材がいくつかあり、当時の自分にとっては大変な経験だったのですが、客観的に見れば全然大したことはなかったと思います。当時は下宿で、部屋に電話もなかったので、下宿先のおばさんには結構迷惑を掛けたと思います。最初は何をしでかしたんだと思われたでしょうね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news028.jpg 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
  2. /nl/articles/2411/19/news126.jpg 元「おニャン子」内海和子、娘・ゆりあんぬの“胃の粘膜ぶっ壊す”食事に激怒! 有名飲食店に謝罪し「出禁にして」「違う星の人そんな気がしてなりません」
  3. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  4. /nl/articles/2411/19/news083.jpg 「恐ろしい」 北海道の道路標識 → “見落としたら絶望”のとんでもない表示に衝撃走る 「普通にホラーでは?」
  5. /nl/articles/2411/18/news019.jpg 優しそうな“おかっぱ頭”の男性→プロがカットしたら…… “別人級の仕上がり”が470万再生「えっ!? って声出た」「EXILEみたい」
  6. /nl/articles/2411/19/news114.jpg 平愛梨、“夫・長友佑都選手”に眠れなくてLINE送信→“まさかの返信”に「なんやねん」「もう寝るしかない」
  7. /nl/articles/2411/18/news025.jpg “無給餌”で育てたメダカが2年後、驚きの姿に→さらに半年後…… 放置しておいたビオトープで起きた“奇跡”に「ロマンを感じる」
  8. /nl/articles/2411/18/news120.jpg 「天才が現れた!」 森永が教える“秋らしい”お菓子の作り方→たこ焼き器を使ったアイデアに「すごいすごい可愛い」
  9. /nl/articles/2411/19/news009.jpg 固い着物をリメイクしてみたら…… 生まれ変わった“まさかのアイテム”に「しゅげー!」「凄い素敵です」
  10. /nl/articles/2411/19/news062.jpg 「上げ底の先」 その名に偽りなし、高専の文化祭に出現した「限界節約ホットドッグ」が本当に限界だった
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた