ニュース
» 2020年04月09日 07時45分 公開

「精製水どこにも売ってない」難病の子を持つ母親から悲鳴 品薄の理由は間違った「消毒液の作り方」

精製水は人工呼吸器付属の加湿器に必要不可欠で、不足は患者の命に関わります。

[沓澤真二ねとらぼ]

 息子は難病で人工呼吸器がないと生きられないのに、そのための“精製水”がどこにも売っていない――。精製水の品薄を嘆く母親のツイートが大きな反響を呼んでいます。編集部が投稿主とメーカーを取材したところ、品薄の原因は「精製水を使った消毒液の作り方」がメディアで紹介されたことと、さらにその情報が「誤って伝わった」ためであることが分かりました。



 話題のきっかけは、ナーコ(@nakosan37)さんのツイート。息子の人工呼吸器に付属する加湿器の稼働に使う、精製水が手に入らないと訴えるものでした。

 ナーコさんは朝から薬局など7件を回り、かろうじて500ミリリットル瓶2本を確保。人工呼吸器が必要な患者にとっては「命に関わる」とし、「精製水の買い占めとかやめてほしい」と、苦言を呈しました。


精製水は人工呼吸器の使用に必要不可欠

 編集部はナーコさんに詳しい事情を聞きました。人工呼吸器に付属する加湿器は、のどと鼻を潤わせて、細菌やウイルスの感染を防止するもの。息子さんが加湿器を使用するのは主に就寝時ですが、かぜ気味のときは一日中稼働する必要があり、その場合は精製水を1日で500ミリリットルほど消費するといいます。加湿器に使う水については水道水でもよいとする説もあるものの、呼吸器メーカーやかかりつけの国立病院にはやはり精製水を使うよう指導されているとのこと。


精製水 投稿主宅の人工呼吸器。付属する加湿器を使うために精製水が必要不可欠

 ナーコさんにとって精製水は息子さんを守るうえで必要不可欠であり、普段は約1週間分を常にストックしておき、使ったらまとめて補充するよう努めていたとのこと。以前は保険が適用されたため処方箋薬局にて心臓の薬とともに入手できましたが、薬機法改正で保険がきかなくなったため、今は少しでも安く入手できるよう、ネット販売やドラッグストアなどを利用しているそうです。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、精製水は手に入りにくくなってしまいました。不足している消毒液の代わりに、無水エタノールを精製水で薄めて作る方法を、一部のメディアが紹介したのが原因だろうとナーコさんは語ります。

 ナーコさんが薬局に聞くと、上記の方法が紹介されてからというもの、精製水とエタノールを同時に購入する人が増え、品薄となり入荷も不安定に。ナーコさんはここ2週間ほうぼうの店を探しましたが、清潔さを保ちやすく使い勝手も良い500ミリリットルボトルは品切れでした。ネットを見ても、フリマサイトやオークションにやや割高の出品があるのみ。ナーコさんは結局、比較的入手しやすいとリプライで教わった、20リットルサイズの品を確保したそうです。


メーカーは「無用の精製水を間違って買う人がいる」と指摘

 この不自由な状況をメーカーはどう見ているのか、ねとらぼ編集部は精製水を手がける昭和製薬にも話を聞きました。そもそも、同社はこのごろの需要増を受けて精製水を増産しており、平時の約2倍の量を製造しているとのこと。それでも供給が追い付かない原因は、買い占めよりもやはり「無水エタノールを精製水で薄めて消毒液を作る」という情報の拡散によるところが大きいといいます。


精製水 ナーコさんがようやく入手した精製水

 ただこの「無水エタノールを精製水で薄めて消毒液を作る」という情報自体は間違っておらず、問題はもう1つ、別のところにあると担当者は指摘します。

「無水エタノールの場合は確かに精製水で薄める必要がありますが、薄めなくていい通常の『消毒用エタノール』と一緒に精製水を買ってしまうケースが相次いでいるようです。こちらにも毎日200件近い問い合わせが来ていますが、大半は『消毒用エタノール』と精製水を一緒に買ってしまったがどうしたらいいか、といったものです」

 広報担当者によると、精製水で薄める必要があるのはあくまで「無水エタノール(水を含まない高純度のエタノール)」の場合ですが、どうやら精製水が必要ない「消毒用エタノール(消毒用に最初から80%程度に薄めてあるエタノール)」と一緒に精製水を購入してしまう人が多いのではないか、とのこと。また薬剤師が常駐していないドラッグストアなどの場合、知識のない店員が消毒用エタノールと一緒に精製水を勧めてしまうケースもあるのではといいます。

 同社には今も「どうやって薄めたらいいか」「店員に薦められて買ってしまったがどうすればいいか」といった問い合わせが相次いでおり非常に困っているとのこと。また、品薄で買えない場合どうしたらいいかについても聞きましたが、「医薬品なのでこちらから直売はできず、ドラッグストアなどで買っていただくしかありません」との回答でした。




 精製水の不足について、必要とする人と供給元を取材したところ、双方とも情報の錯綜に困っている事実が分かりました。ナーコさんは「人工呼吸器に精製水が必要だという事実が知られていないからこそ、無意味な品薄が起こる」と考えており、元のツイートもその周知のために投稿したと語っています。

画像提供:ナーコ(@nakosan37)さん

4月9日追記:記事の公開後、「手元にある精製水を困っている人に届けたい」との申し出が何件か届いています。ねとらぼ編集部では安全面や個人情報取り扱いの観点からこうした仲介には対応しておりません。ご理解のほどよろしくお願いいたします(4月9日13時15分)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2312/01/news138.jpg 伊藤沙莉、“激痩せ報道”の真相暴露→広瀬アリスの株が上がってしまう 「辱めったらない」告白に「アリスちゃん、ええ人や〜」
  2. /nl/articles/2312/01/news121.jpg “鬼ダイエット”で激やせの「Perfume」あ〜ちゃん、念願の姿に「着れる日が来るなんて」と大喜び
  3. /nl/articles/2312/01/news115.jpg 「心底惚れて」「毎日うっとり」 宮里藍、新たな愛車を公開→国産車のチョイスに反響「庶民的」「きれいな色」
  4. /nl/articles/2311/30/news047.jpg 「あなたは日本人?」突然送られてきた不審なLINE、“まさかの撃退方法”に反響 「センス良い」「返しが秀逸」
  5. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. /nl/articles/2312/01/news065.jpg 「惨めな人生を送ってる」 パリス・ヒルトン、0歳息子の容姿揶揄をまたもバッサリ “頭が大きい”と受診勧めた人々振り返り「気の毒」
  7. /nl/articles/2312/01/news014.jpg ワンコ大好きなインコに“恋がたき”登場で174万再生! まさかの展開に困惑するワンコに「爆笑w」「ダブルだw」
  8. /nl/articles/2312/01/news019.jpg 寝込んだママが心配でたまらない元保護犬と小学生息子 それぞれが見せるけなげな姿に「泣けてきた」「なんて優しい子!」
  9. /nl/articles/2311/30/news031.jpg シロフクロウが自分とそっくりのぬいぐるみをくわえ…… 自慢げな表情に「本物の赤ちゃんかと」「ヘドウィグが!」と453万再生
  10. /nl/articles/2312/01/news105.jpg 俳優の井川瑠音さんが31歳で逝去 体調不良から復帰ならず、最後の投稿では「忘れられないようまだまだ精進」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  2. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」
  3. 愛犬と外出中「飼いきれなくなったのがいて、それと同じ犬なんだ。タダで持ってきなよ」と言われ…… 飼育放棄された超大型犬の保護に「涙止まりません」
  4. ミキ亜生、駅で出会った“謎のおばさん”に恐怖「めっちゃ見てくる」 意外な正体にツッコミ殺到「おばさん呼びすんな」「マダム感ww」
  5. 永野芽郁、初マイバイクで憧れ続けたハーレーをゲット 「みんな見ろ私を!」とテンション全開で聖地ツーリング
  6. 道路脇のパイプ穴をのぞいたら大量の…… 思わず笑ってしまう驚きの出会いに「集合住宅ですね」の声
  7. 柴犬が先生に抱っこしてほしくて見せた“奥の手”に爆笑&もん絶! キュンキュンするアピールに「あざとすぎて笑っちゃった」
  8. 病名不明で入院の渡邊渚アナ、1カ月ぶりの“生存報告”で「私の26年はいくらになる?」 入院直後の直筆日記は荒い字で「手の力も入らない」
  9. 小泉純一郎元首相、進次郎&滝クリの第2子“孫抱っこ”でデレデレ笑顔 幸せじいじ姿に「顔が優しすぎ」「お孫さんにメロメロ」
  10. デヴィ夫人、16歳愛孫・キランさんが仏社交界デビュー 母抜かした凛々しい高身長姿に「大人っぽくなりました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
  2. 会話できる子猫に飼い主が「飲み会行っていい?」と聞くと…… まさかの返しに大反響「ぜったい人間語分かってる」
  3. 実は2台持ち! 伊藤かずえ、シーマじゃない“もう一台の愛車”に驚きの声「知りませんでした」 1年点検時に本人「全然違う光景」
  4. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 西城秀樹さんの20歳長男、「デビュー直前」ショットが注目の的 “めちゃくちゃカッコいい”声と姿が「お父さんの若い頃そっくり」「秀樹が喋ってるみたい」
  7. “危険なもの”が体に巻き付いた野良猫、保護を試みると……? 思わずため息が出る結末に「助けようとしてくれてありがとう」【米】
  8. 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. おつまみの貝ひもを食べてたら…… まさかのお宝発見に「良いことありそう」「すごーい!」の声
  10. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」