「精製水どこにも売ってない」難病の子を持つ母親から悲鳴 品薄の理由は間違った「消毒液の作り方」
精製水は人工呼吸器付属の加湿器に必要不可欠で、不足は患者の命に関わります。
息子は難病で人工呼吸器がないと生きられないのに、そのための“精製水”がどこにも売っていない――。精製水の品薄を嘆く母親のツイートが大きな反響を呼んでいます。編集部が投稿主とメーカーを取材したところ、品薄の原因は「精製水を使った消毒液の作り方」がメディアで紹介されたことと、さらにその情報が「誤って伝わった」ためであることが分かりました。
話題のきっかけは、ナーコ(@nakosan37)さんのツイート。息子の人工呼吸器に付属する加湿器の稼働に使う、精製水が手に入らないと訴えるものでした。
ナーコさんは朝から薬局など7件を回り、かろうじて500ミリリットル瓶2本を確保。人工呼吸器が必要な患者にとっては「命に関わる」とし、「精製水の買い占めとかやめてほしい」と、苦言を呈しました。
精製水は人工呼吸器の使用に必要不可欠
編集部はナーコさんに詳しい事情を聞きました。人工呼吸器に付属する加湿器は、のどと鼻を潤わせて、細菌やウイルスの感染を防止するもの。息子さんが加湿器を使用するのは主に就寝時ですが、かぜ気味のときは一日中稼働する必要があり、その場合は精製水を1日で500ミリリットルほど消費するといいます。加湿器に使う水については水道水でもよいとする説もあるものの、呼吸器メーカーやかかりつけの国立病院にはやはり精製水を使うよう指導されているとのこと。
ナーコさんにとって精製水は息子さんを守るうえで必要不可欠であり、普段は約1週間分を常にストックしておき、使ったらまとめて補充するよう努めていたとのこと。以前は保険が適用されたため処方箋薬局にて心臓の薬とともに入手できましたが、薬機法改正で保険がきかなくなったため、今は少しでも安く入手できるよう、ネット販売やドラッグストアなどを利用しているそうです。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、精製水は手に入りにくくなってしまいました。不足している消毒液の代わりに、無水エタノールを精製水で薄めて作る方法を、一部のメディアが紹介したのが原因だろうとナーコさんは語ります。
ナーコさんが薬局に聞くと、上記の方法が紹介されてからというもの、精製水とエタノールを同時に購入する人が増え、品薄となり入荷も不安定に。ナーコさんはここ2週間ほうぼうの店を探しましたが、清潔さを保ちやすく使い勝手も良い500ミリリットルボトルは品切れでした。ネットを見ても、フリマサイトやオークションにやや割高の出品があるのみ。ナーコさんは結局、比較的入手しやすいとリプライで教わった、20リットルサイズの品を確保したそうです。
メーカーは「無用の精製水を間違って買う人がいる」と指摘
この不自由な状況をメーカーはどう見ているのか、ねとらぼ編集部は精製水を手がける昭和製薬にも話を聞きました。そもそも、同社はこのごろの需要増を受けて精製水を増産しており、平時の約2倍の量を製造しているとのこと。それでも供給が追い付かない原因は、買い占めよりもやはり「無水エタノールを精製水で薄めて消毒液を作る」という情報の拡散によるところが大きいといいます。
ただこの「無水エタノールを精製水で薄めて消毒液を作る」という情報自体は間違っておらず、問題はもう1つ、別のところにあると担当者は指摘します。
「無水エタノールの場合は確かに精製水で薄める必要がありますが、薄めなくていい通常の『消毒用エタノール』と一緒に精製水を買ってしまうケースが相次いでいるようです。こちらにも毎日200件近い問い合わせが来ていますが、大半は『消毒用エタノール』と精製水を一緒に買ってしまったがどうしたらいいか、といったものです」
広報担当者によると、精製水で薄める必要があるのはあくまで「無水エタノール(水を含まない高純度のエタノール)」の場合ですが、どうやら精製水が必要ない「消毒用エタノール(消毒用に最初から80%程度に薄めてあるエタノール)」と一緒に精製水を購入してしまう人が多いのではないか、とのこと。また薬剤師が常駐していないドラッグストアなどの場合、知識のない店員が消毒用エタノールと一緒に精製水を勧めてしまうケースもあるのではといいます。
同社には今も「どうやって薄めたらいいか」「店員に薦められて買ってしまったがどうすればいいか」といった問い合わせが相次いでおり非常に困っているとのこと。また、品薄で買えない場合どうしたらいいかについても聞きましたが、「医薬品なのでこちらから直売はできず、ドラッグストアなどで買っていただくしかありません」との回答でした。
精製水の不足について、必要とする人と供給元を取材したところ、双方とも情報の錯綜に困っている事実が分かりました。ナーコさんは「人工呼吸器に精製水が必要だという事実が知られていないからこそ、無意味な品薄が起こる」と考えており、元のツイートもその周知のために投稿したと語っています。
画像提供:ナーコ(@nakosan37)さん
4月9日追記:記事の公開後、「手元にある精製水を困っている人に届けたい」との申し出が何件か届いています。ねとらぼ編集部では安全面や個人情報取り扱いの観点からこうした仲介には対応しておりません。ご理解のほどよろしくお願いいたします(4月9日13時15分)
関連記事
- 「買い溜めした人の9割は『デマ』だと知っている」調査結果が発表 分かっていながら大量購入する理由は?
品薄は「無知」が原因じゃない? - “トイレットペーパー山積み”で話題のイオン、狙いを聞いた 「デマによる買い占めが続いている」「きちんと供給されている姿を示したい」
イオン広報に話を聞きました。 - 「すごくわかりやすい」「助かります!」 布マスクの洗い方を花王がTwitterで公開し反響
5ステップで簡単にお手入れできそう……! - セブン-イレブン、“マスク高額販売”で批判殺到 60枚で1万6900円、本部は「適正な価格で販売するよう申し入れている」
あくまで一部店舗の独自判断のようですが……現在は販売を中止しているとのことです。 - 「トイレットペーパー、ティッシュペーパーの供給力、在庫は十分にあります」 日本家庭紙工業会が“品薄デマ”受けて声明発表
経産省も「今後、順次解消していく見通し」とコメント。 - 米子医療生協、「トイレットペーパー品薄デマ」投稿者の1人が職員だったと謝罪
規定に照らして厳正な対応を検討すると述べています。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
-
「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
-
「ほ、本人……?」 日本に“寒い国”から飛行機到着→降りてきた“超人気者”に「そんなことあるw?」「衝撃の移動手段」の声
-
才賀紀左衛門、娘とのディズニーシー訪問に“見知らぬ女性の影” 同伴シーンに「家族を大切にしてくれない人とは仲良くできない」
-
【今日の難読漢字】「誰何」←何と読む?
-
「今やらないと春に大後悔します」 凶悪な雑草“チガヤ”の大繁殖を阻止する、知らないと困る対策法に注目が集まる
-
武豊騎手が2024年に「武豊駅に来た」→実は35年前「歴史に残る」“意外な繋がり”が…… 街を訪問し懐古
-
大谷翔平、“有名日本人シェフ”とのショット 上目遣いの愛犬デコピンも…… 「びっくりした!!」「嬉しすぎる」
-
ハローマックのガチャに挑戦! →“とんでもない偏り”に同情の声 「かわいそう」「人の心とかないんか」
-
古着屋で“インパクト大”なブランケットをリメイクすると…… 劇的な仕上がりに386万再生「これはいいね、欲しい!」【海外】
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
- 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
- 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
- パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
- アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
- 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
- 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
- PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」