【無料配信記念】コナンファンが劇場版名探偵コナン「天国へのカウントダウン」の魅力を語る
2020年4月25日〜26日に無料配信。
4月17日から順次、「名探偵コナン」劇場版第1作〜第10作がさまざまなプラットフォームで無料配信されています。2日間ずつ交代での無料配信で、25日〜26日に配信されているのは第5作「天国へのカウントダウン」(2001年公開)です。
コナンファンの赤いシャムネコさんに、同作のオススメポイントを極力ネタバレなしで聞きました。
劇場版史上最高傑作
来ちゃいましたね、最高傑作が……。レビュー企画のために本作を見返したわけですが、何十回も見ているというのに、面白すぎてずっと画面を食い入るように見てしまいました。
舞台となるのはオープンを控えたツインタワービル。前半ではツインタワービル関係者たちの間で起こる連続殺人事件が描かれます。異なる殺人に共通するのは、現場から割られた“おちょこ”が見つかること。背後で黒の組織・ジンとウォッカが謎めいた動きを見せる中、後半では劇場版でも最大規模の爆破劇、燃え盛るビルからの脱出劇が描かれます。
本作でフィーチャーされるのは灰原哀と黒の組織。黒の組織が劇場版コナンに出てくるのは本作が初めてです。当時の宣伝では、「灰原哀が実はコナンたちを裏切り、組織と内通しているのではないか……」という方向性で推されていました。今の視聴者からすると灰原=味方なのは自明ですが、2001年当時はまだ灰原のポジションが落ち着いておらず、だからこその揺れる展開が用意されています。ジンとウォッカも映画初登場ならではの“強敵”としての存在感を見せつけてくれます。
語ることはたくさんありますが、まずミステリ部分の魅力からいきましょう。「コナン映画である」ということをいったん忘れて“普通のミステリ映画”として見たとしてもSSRクラスの最高傑作です。
なんといっても映像で描かれた伏線がうますぎる! このころの劇場版コナンは、ホワイダニット(動機)に重きが置かれており、「なぜこの殺人が起きたのか?」が明かされるところが見せどころになっています。
本作は動機が明らかになった瞬間、たった一枚の絵で視聴者が全てを理解できるうえに、今まで見てきた映像の端々に、あからさまと言えるほど堂々と“答え”が写っていることに気づかされます。こんなうまい手がかりある? と何度見ても新鮮に感動しますし、見返したくなる作品です。動機と深く結びついている死体のカットの美しさも素晴らしい。また細かい技ですが、とある殺人の真相にコナンならではの策略が用いられているのもポイントが高いです。
そして後半は、A棟とB棟に分かれ、中層階と高層階に1つずつ連絡橋のあるツインタワービル――という立体の舞台を極限まで生かしたアクションが見どころ。同じビルの中で都度ステージを変え、さまざまなピンチとそれを乗り越えるアクションが描かれています。いくつもの階層を行ったり来たりし、複雑な爆破の展開なのですが、絵や動きでの説明がうまいのでとてもわかりやすいです。
過去に本作を見たことがある方は、登場人物の動きとA棟B棟の爆破の状況をしっかり把握しながら見てみてください。コナン、蘭、灰原、少年探偵団が窮地に追い詰められていく過程が全く無理なく構成されています。一切作為的に見えず、キャラクターの行動原理や性格を踏まえると必然的にこういう展開になることに驚くはずです。アクションを通じてコナンの「秘密道具」が余すところなく用いられるのも、パズル的な気持ちよさがあります。
ひとつの建物を舞台にした爆破アクションとしては、この作品が最高峰。第1作「時計仕掛けの摩天楼」で感じた「ビルの爆破、もうちょっと派手にできなかったのかな」というちょっとした不満も、本作で完璧に消化されます(「時計仕掛けの摩天楼」の登場人物と絡む要素があるのも、シリーズファンに対するくすぐりがあってよいですね)。
タペストリーのように編み上げられた展開
筆舌に尽くしがたいのが、コナンたちが完璧に追い詰められ、ついに残り4分となったあとの絶体絶命の展開のうまさです。
最初はギャグや何気ない会話として入れられたせりふや、他愛ないものに思えたエピソードが、次から次へと回収されていくのには圧倒されます。「瞳の中の暗殺者」も伏線の回収がすさまじい映画ですが、同作が布石と回収をクライマックスのワンシーンに集約していたのに対し、「天国へのカウントダウン」はさながらタペストリーのように編み上げられており、気持ち良さが連鎖していくようなつくりです。
「あのセリフや展開はこのためにあったのか!」と叫びたくなるシーンが一体いくつあることか。どこか1カ所を変えるだけで成立しなくなってしまうほど、パズルのピースが無駄なく完璧に組みあがっているんですね。しかもこれが、コナンの登場人物ひとりひとりのキャラクターを完全に踏まえているのが信じがたい偉業。みんなが「らしい」言動をして、その結果、アクションシーンを通じてレギュラーキャラ全員を好きになってしまう。ミステリとしてはもちろん、キャラクター映画としてもよくできていると思います。
コナンに欠かせない「ラブ」要素から見ると、ヒロインたちのポジションが見事に嵌った映画でもあります。蘭、灰原、そして歩美の3人にそれぞれ見せ場があり、ひとりでも欠いたらこのビルから脱出できない。アクションと恋愛が、物語上最高の形で対応しており、それぞれの行動を通じてキャラクターが描かれていく。三者三様の描き分けられ方に注目です。余談ですが、哀ちゃんの「重力加速度」のせりふは、劇場版で一、二を争う「覚えたくなるせりふ」。子どものころ本作を何度も見たおかげで。物理で「g」が出てきた瞬間「コナンで知ってるやつだ!」となりました。
コナン映画を見たことがない人に何か1本勧めるのであれば、本作を挙げたい。ミステリ、アクション(爆発)、ラブロマンス、全てが満点。奇跡的な傑作だと思います。いい意味で重苦しくなく、見終わったあとに「楽しい映画を見たな〜!」となる作品なので、何度でもどんな気分でも見れてしまいます。
最後にエンディング映像について。エンディングテーマは倉木麻衣の「Always」で、命からがらの脱出劇のあとに聞くと、この歌詞に登場人物たちの心境を重ねてしまいます。おなじみの実写映像も必見。真相を知って見れば、「この映画のもうひとつの舞台はここだったのね……」と納得するという、ミステリ的な余韻も残る素晴らしいエンディング映像です。
この映画が気に入った人へのオススメ
- 「から紅の恋歌(ラブレター)」 ミステリとラブが絡んだ展開、クライマックスのアクションシーンは本作の変奏曲
- 「沈黙の15分(クオーター)」 少年探偵団が中心となっているお話。灰原さんの活躍回がもっと見たい
- 「純黒の悪夢(ナイトメア)」 最近の黒の組織とのバトルを見たい方はこちらをどうぞ
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