【無料配信記念】コナンファンが劇場版名探偵コナン「ベイカー街の亡霊」の魅力を語る

2020年4月27日〜28日に無料配信。

» 2020年04月27日 19時00分 公開
[赤いシャムネコねとらぼ]

 4月17日から順次、「名探偵コナン」劇場版第1作〜第10作がさまざまなプラットフォームで無料配信されています。2日間ずつ交代での無料配信で、27日〜28日に配信されているのは第6作「ベイカー街(ストリート)の亡霊」(2002年公開)です。

 コナンファンの赤いシャムネコさんに、同作のオススメポイントを極力ネタバレなしで聞きました。

コナン 「ベイカー街の亡霊」の魅力をファンが語ります
コナン 無料公開のスケジュール

コナン史上最大の異色作

 劇場版コナン史上、最大の異色作と言っていいでしょう。見返すたびにこの作品はある意味“外れ値”だなという印象が深まっていきますね。

 悲劇の起こりは、一人の天才少年・ヒロキが作り出したAI(人工知能)「ノアズ・アーク」。自ら命を絶ったヒロキの遺志を継ぐようにして、ノアズ・アークが“復讐”を始めます。

 本作では、2つの事件が並行して描かれます。ひとつの舞台は、コナンたちがプレイするゲーム「コクーン」で展開される仮想現実(VR)の世界。ノアズ・アークは50人の子どもをゲームの世界に閉じ込め、生き残りをかけたゲームを仕掛けます。コナンや少年探偵団たちが挑戦するゲームの舞台は、19世紀ロンドン。ジャック・ザ・リッパーが世間を騒がせている闇のロンドンの中で、コナンや少年探偵団たちが切り裂きジャック事件の真相に迫ります。

 そしてもうひとつの舞台が、現実世界で起こった「コクーン」開発プログラマー殺人事件の謎。こちらを解くのは、コナン(新一)の父親であり圧倒的な推理力を誇る小説家工藤優作――と、工藤親子がそれぞれの謎を解き明かす筋立てです。優作は劇場版に初登場です。

 ファン投票で上位を獲得することが多い、人気のある作品。2002年当時としては「AIが仮想現実を展開し、生き残りを賭けた戦いを仕掛ける」という展開が新鮮で魅力的だったのだと思います。VRゲームなどが一般的になり、デスゲームものも多く見るようになった2020年に見るとややリアリティラインが気になるところもありますが、スケールの大きさや派手さは今でも薄れていません。また、ゲストキャラであるヒロキのもつ物語のシリアスさも魅力のひとつでしょう。

 ゲームの中の世界――ベイカー街でのパートでは、19世紀末ロンドンの雰囲気や、シャーロックホームズの部屋を訪れるシーンなど、ホームズファンにとってうれしいシーンが多いです。新一がホームズファンということを踏まえて、ホームズに詳しい人が見ると「このキャラが出てくるのか」「このエピソードと絡むのか」という面白さやくすぐりを味わえます。

 一方で、「コナン映画」としてみると、少し違和感があるのも正直なところ。登場人物が次から次へとゲームオーバー=命を落としていくのですが、前作「天国へのカウントダウン」であれほど粘り強く行動し大活躍したキャラクターたちがあっさりと退場していくことに不満は残ります。一部の登場人物が「命を投げ捨てる」という選択をとるところや、コナンが一度は完全に諦める描写があるところも、“コナンらしさ”がないな、と感じるところがあります。

 また、ミステリ的にはややアンフェアというか、解けることをそもそも想定して作られていない印象があります。ジャック・ザ・リッパーの正体は、映像の手掛かりが一瞬のため視聴者には特定できません。優作が解き明かす現実の世界の謎も、倒叙ものの形をとっているので視聴者からすれば犯人は明らかなのですが、犯人が凶器にこだわった理由や、優作が犯人を特定するにいたった理由がやや弱い。しかし、それを引き換えにしてでも達成しようとした「動機」の壮大さは、作品を貫くテーマとあわせて印象に残るものとなっています。

 テーマと書きましたが、ここまでひとつのメッセージが前面に表れているのも、劇場版コナンとしては珍しいのではないでしょうか。ヒロキの死の真相、ノアズ・アークがゲームを乗っ取った目的、「ジャック・ザ・リッパー」と現代の事件2人の犯人の動機、すべてが同じテーマのもとに重なり合っていく、ハーモニーのような構造になっています。

 それを踏まえた上でたどり着く、ラストシーンがいいですね。工藤優作とコナン(新一)の関係は大注目です。お互いにわかりあっている親子の信頼が描かれていて、優作ファンにとってうれしい見せ場が楽しめます。ロンドンの街をぜいたくに映したエンディング映像も必見です。

この映画が気に入った人へのオススメ

  • 「紺青の拳(フィスト)」 コナンのポイント“どうやって海外を舞台にするか”に正面から向き合った最新作
  • 「水平線上の陰謀(ストラテジー)」 同じく倒叙(犯人が最初からわかっている)作品で、意外な一ひねりがありミステリ的に納得感のあるこちらを推したい
  • ロンドン編(ホームズの黙示録) 映画ではないですが……“本物のロンドン”を舞台に繰り広げられる真の傑作です

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