クリエイターに聞く「今、どうですか?」 声優の収録、漫画家、トークライブハウス、音楽家、ライター──それぞれの実情(1/2 ページ)

収入に加えて、創作活動自体への影響もあります。

» 2020年05月01日 10時00分 公開
[堀田純司ねとらぼ]

クリエイターとおかね 第3回

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、政府は4月8日に非常事態宣言を7都府県に発令。4月16日には、あらためて全国に対象を拡げました。

 日用品が不足する小売業、営業時間が短縮・休業する飲食業、不要不急の外出の自粛など、新型感染症が私たちの日々の暮らしに与えた影響の大きさは、みなさんもきっと日々、痛感していらっしゃることでしょう。

 その波及は娯楽産業、表現、発信の分野までにも及び、公演の中止、映像作品の公開延期などが相次いでいます。こうした状況を受け、文化活動の助成を求める声も出てきました。

フォト 文化庁は文化芸術関係者に対する支援情報をまとめたページを公開しているが……

 出版分野でいうと、「ステイホーム」の影響でやはりデジタルコンテンツの売り上げは増えている。しかしその一方で、物流や販売体制の縮小を受け、大型書店、ネット書店での取り扱いに時間がかかるようになっている。しかし地元の小型書店での本の売り上げは増える傾向が見られるそうで、これはうれしい話ですね。

 クリエイターや発信に関わる職業の人は、その多くがフリーランスです。経済活動が収縮すると、仕事もなくなる。もっともその一方で「もともとリモートワーク」ということで、逆に強みもあるかもしれません。

 「実際のところ、みんなどのような影響を受けているのか?」

 この記事では、トークライブハウス「高円寺Pundit’」を経営する奥野徹男さん、音響監督の大沼隆一さん、シンガーソングライターの高田なみさん、フリライターの石山真紀さん、マンガ家ユニットの「うめ」小沢高広さんら、各分野のクリエーターや発信に関わる職業の人に取材、その「実情」をお知らせしていきます。

(なお時節柄、対面での取材は避け、Zoomによるビデオ取材、Googleドキュメントを介したクラウド上のやりとり、SNSのメッセージ機能など、多岐に渡る手段で行うことになりました。我ながら、きわめて今どきっぽい取材となりました)

4月は1日もお店を開けることができず、無収入

奥野徹男さん──トークライブハウス「高円寺Pundit’」(パンディット)経営。東京・高円寺(杉並区)といえば「日本のインド」といわれるカオスな地域ですが、パンディットもまたサブカルチャーからアカデミズムまで幅広いイベントを手がけるお店。席数は最大50。ファンも多く、昨年末などは連日イベントを行い、店舗の拡大も考える時期だったそうです。しかし……(奥野さんとのやりとりは、Facebookのメッセンジャー機能を使って行いました)。

高円寺Pundit’:http://pundit.jp/


フォト 高円寺Pundit’のWebサイト


――新型コロナの感染拡大の影響は?

 3月以降はほとんどのイベントが、自粛、危険回避などの理由でなくなりました。4月に至っては、まだ1日もお店を開けることができず、無収入です。

――イベントのキャンセルにはどう対応なさっていますか?

 すべて無償で対応させていただいています。公演がキャンセルになると、お客さまが負担したプレイガイドなどの購入手数料もお店が背負う形になり、無収入の身としてはさんざんな状態です。

――この先の展望を教えてください。

 今年に関しては、もう以前の様なスタイルでの営業は難しいと思っています。小さなお店で1オペだったので、少しは蓄えがあったものの、厳しいですね。

 番組の有料配信なども考えていますが、ABEMAやNetflix、AmazonのPrime video、YouTubeなど、これだけの選択肢があるなかで、そもそもどれだけ魅力的なコンテンツを造り出すことができるのか、不安ではあります。

 この5月までの自粛の期間を、さまざまなメディアがビジネスチャンスととらえて、配信サービスがものすごい進化を続けている。そうした中ですから、こちらも相応のアイデア、配信を使っての「売り物」をちゃんと考えないと競り負けてしまうでしょうね。

 やはりインフルエンサー、全国区の有名人などではないと、そもそもいくら宣伝したところで、いままでのようには稼げないと思います。

――しかし正直いって、ここまでのことは予想外でしたね。

 「ワシの若いころは、海外旅行とかいろんな素晴らしい娯楽があってな」って、若い人たちに語る世の中になるのでしょうか。今までに、もっといっぱい遊んどきゃ良かった……。

若い声優にとっては死活問題になっている

大沼隆一さん──音響監督。音響製作、音響監督をしています。「エンド・オブ・エタニティ」「ファンタシースターオンライン2」「メタルマックス4」「グリモア」「妖怪百姫たん!」「アイチュウ」「ギルティギア」「Star Wars ジェダイ フォールン・オーダー」「コード:ドラゴンブラッド」など多数の作品を手掛ける音響監督で、役者や事務所からの信頼も非常に篤い人だ(大沼さんの取材は、電話の音声通話で行いました。逆に新鮮でした)。



 やはり、言われている通りアニメや洋画関係の影響は大きいですね。みんなで録らないといけないから。テレビを見ているとわかりますけど、現状、4週間にわたってレギュラーのアニメも再放送や過去の総集編が流されていると思います。

 ただ僕の場合、ゲームという特殊な分野の音響監督なので、もともと、1人ずつ収録することが前提。だからむちゃくちゃな影響はないですね。それでも洋ゲームの吹き替えは4月ぜんぶ飛んでしまいましたが、今年の冬発売の国内ゲームは待ったなしで、これは今やらないといけないんです。

――仕事は減ってしなくとも、やり方に影響はありませんか?

 そこはかなりあるねえ。まず通気が大事ですから、今まで使わせてもらっていた小さなスタジオは使えなくなりました。入退室にはアルコールで手を消毒し、換気も1時間ごとに行うなど、尋常じゃなくメンテナンスには気をつけて進めています。

 マイクの前に立てる丸いポップというものがありますけど、あれももちろん1人ずつ交換する。スタジオで使うペンも使うごとに消毒しています。テーブルクロスも1人1人交換したり。かなり徹底してやっている感じですね。限定されたスタジオしか使えない状況なので、スタジオさんも大変だと思います。

 スタジオに入る人間をできるだけ減らすために、ふだんは声優さんにつきそうマネージャーさんも、今はスタジオに入らないことが絶対の条件になっています。事務所も基本テレワークで、交替で会社に入るようにしているそうですね。

――この先の展望は、どう見ていらっしゃいますか?

 ゲームに関していえば、この先、スマホアプリが巻き返してくるんじゃないかと思います。というのは今、ダウンロード数がハンパじゃないですので。

――あっ、みんな自宅にいるせいで!

 ええ。ただ、子どもたちが多いので課金につながらない。いかに親にもやってもらうかが、悩みどころになっていますね。また、傍目で見ていると、やはりセクシー系のゲームが増えたかなという感触はありますね。

――大沼さんから見て、声優さんの状況はどう感じますか?

 役者の影響は大きくて、やはり7割の人が、新型コロナウイルスのために仕事がなくなったといいます。ジュニアと呼ばれる若い人たちにとっては死活問題で、まだ役者の仕事が少ないところに、生計を支えるアルバイトもなくなっている。ここは一番つらいところですね。

 一方、大御所はリスクの高い年齢なので、新規の仕事は入れないようになっているし、これは若い第一線の人も含めて、スタジオでも個別に収録するようになっています。そうした影響は6月、7月くらいになって出てるくるでしょうね。ジュニアも含めてすごく慎重になって、仕事を控える人は当然ながら出てきていますね。

 ただその中でも、「わたしはエンタメのために生きているので、たとえ4時間後に死ぬことになったとしても収録には行く。スタジオに入る」という人もいます。人気のある有名な人ですけど、プロとして女性として、腹が座っているなと思います。

――今の時代、難しいところですが、大沼さんはどちら側ですか?

 それはもちろん、スタジオに入る役者さんがいるときに、自分が引きこもるわけにはいかないですよ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた