日本初の路面電車に実在した少年乗務員「告知人」の悲しくはかないお話(1/4 ページ)

6月10日は路面電車の日。明治時代、ボーズ頭の少年が「あぶのおまっせー!」と叫ぶ路面電車の仕事がありました。

» 2020年06月10日 11時00分 公開
[鶴原早恵子ねとらぼ]

 6月10日は、6(ろ→路面)と10(テン→電→電車)の語呂合わせで「路面電車の日」です。

 日本初の路面電車は、京都で1895(明治28)年2月1日に開業した京都電気鉄道会社(京電)。この京電には一時期、運転士・車掌とともに電車に乗って安全確保の仕事をした「告知人」(あるいは「先走り」)と呼ばれた「少年」がいました。

告知人 運転士の横に立つ少年が「告知人」(画像:京都府立京都学・歴彩館所蔵「石井行昌撮影写真資料」)

 この「告知人」はどんな仕事だったのでしょう。なぜ「少年」だったのでしょう。調べてみると、この仕事はとても過酷で、驚かされるものでした。今回は日本初の路面電車にのみ存在したという幻の鉄道係員「告知人」の悲しくはかない歴史を紹介します。

「電車がきまっせー! あぶのおまっせー!」 “電車の前を走って”注意を促す業務

 告知人として働いたのは「12〜15歳の少年たち」でした。現代だと小学校6年生から中学生。彼らはそろいの法被(はっぴ)を着て、運転士、車掌とともに車両に乗り込んで働きました。

告知人 運転士の横に立つ法被を着た少年が告知人。交通事故が起こらないよう、人通りの多い場所などで電車に先行して走り、注意を促す仕事だった(画像:京都府立京都学・歴彩館所蔵「石井行昌撮影写真資料」)

 告知人の仕事は、電車と歩行者の「事故が起こらないように注意を促す」こと。その方法は「路面電車の“前”、5間(約9メートル)以内を、昼間は赤旗を振って、夜間は赤ちょうちんを持って走る」というものでした。

 告知人は、路面電車が人通りの多い区間に差し掛かると、赤い旗を手に電車から飛び降りて走り出します。

 「電車がきまっせー! 危(あぶ)のおまっせー!」

 こう叫んで周囲の歩行者に注意を促します。区間が過ぎるとまた電車に飛び乗り、次の場所まで待機します。

 夜間はさらにハードです。暗くて見えませんから、告知人は赤いちょうちんを手に、何と「全区間」車両の前を走って注意を促していたそうです。

 今より街灯も少ない時代、京都市内であっても日が落ちれば本当に真っ暗だったことでしょう。暗闇の中、「電車の前」を、ちょうちん片手に叫びながら走リ続ける……。つまづいて転んでしまったらどうなるの……? 疲れてしまったらどうなるの……? 想像しただけで大変そうです。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  5. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  8. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  9. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
  10. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」