【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】アニメーションを見れば分かる「カラテカ」が“ゲーム界のオーパーツ”である理由(1/2 ページ)

リアルなゲームが作れるようになった現在では当たり前の技術が、35年以上前の作品なのに使われているとか。

» 2020年12月29日 21時00分 公開
[ねとらぼ]

 年末企画「自分の好きなゲームが世間ではクソゲーと言われている人インタビュー」。今回は「細か過ぎて伝わらない『カラテカ』のアニメーション技術のスゴさ」を伺いました。

企画:好きなゲームが世間のクソゲー

「これはクソゲー」「あれはクソゲー」と世間は気軽に言うけれど、遊び方も感性も人それぞれ。むしろ、そんな風に言われている作品の魅力を知っている人に話を聞いてみよう。Twitterで募集をかけたら、2〜3人くらい手を上げてくださるのでは?

……と思っていたら、100人くらいから連絡が来ちゃった企画です。編集部のリソース的に可能な範囲で記事化。1日1本ペースだと公開しきるまでに数カ月かかるので1時間に1本ずつ公開します。

「カラテカ」(ニカイドウレンジさん/@R_Nikaido

※なお本記事は「Googleドキュメントでまとめていただいた原稿を、編集部が記事として構成する」というプロセスで制作。そのため、読み物らしい雰囲気の文章になっております

 ゲーム「カラテカ」と聞いたとき、あなたは何が思い浮かぶだろうか。シュールな礼、構えないと即死、崖から落ちて即死、ギロチントラップで即死といった、要するに「クソゲー」というイメージにつながる要素が出てくるのではないだろうか。

 確かに「カラテカ」はそういった分かりやすい部分でネタにされることが多いゲームなのだが、実は数多くのチャレンジと高い技術が詰まった意欲作なのだ。

 例えば、当時としては珍しいリアル等身のキャラクター、ロトスコープという技法を用いた滑らかなアニメーション製作手法、カットシーンや場面転換などの映画的演出、環境音を用いたサウンド、体力の自動回復によって生まれる駆け引き……など、語りたいことは山ほどあるのだが、今回は「キャラクターの動き」にフォーカスしたい。

 本作の滑らかに動くアニメーションには「複数の動きを組み合わせて、1つの動作を作る」という技術が使われているのだが、これには“より人間らしい、よりリアルな、格闘技らしい動きを実現する”という効果があるのだ。

1:アニメーションが途中で分岐する

 蹴りの動作を見てみると、本作では「蹴りの途中でアニメーションを分岐させている」ということが分かる。

  • 蹴るだけ:蹴る→上げた足が元の位置に戻る(キャラクターの位置は変わらない)
  • 蹴り+動作中に前進ボタン:蹴る→上げた足が前方に下りる→キャラクターが半歩前進する
  • 蹴り+動作中に後退ボタン:蹴る→上げた足が後方に下りる→キャラクターがすり足で大きく後ろに下がる

 内部処理がどうなっているのかは確認のしようがないが、挙動を見る限り、蹴った後の移動は、すり足で歩くときの動作と同じものを使っていると思われる。例えば「蹴り+動作中に前進ボタン」という操作を行うと「蹴るアニメーション+すり足で前進するアニメーション」の組み合わせになるようだ。

 これによって、プレイヤーは「すり足で前進→蹴り→動作中に後退ボタンを押す(蹴った直後に相手から離れる)」のように間合いを考慮した複雑な動作が可能になる。


「蹴り+動作中に前進」(蹴りからの前進)を行うと、「蹴り」と「半歩前進」の前後半を接続した動きになる

実際にやってみた。順に「普通の蹴り」「蹴り+動作中に後退ボタン」「蹴り+動作中に前進ボタン」「すり足で前進→蹴り→動作中に後退ボタンを押す」

2:上半身と下半身が独立して動く

 次は突き(パンチ)の話だ。AppleII版「カラテカ」では、歩いている最中はいつでも突きが出せる。

 歩き始めでも歩き終わりでも、半歩移動でもすり足移動でも、前方移動でも後方移動でも、いつでも構わない。蹴りの途中はさすがに例外だが、上半身が構えポーズであれば下半身がどのような状態でも突きが出せる。

 上半身と下半身がそれぞれ独立して個別に制御されていなければ、こんなことはできないだろう。


なお、この処理はファミコン版では除外されており、AppleII版特有の機能だ。今回はそのスマホ移植版「Karateka Classic」で挙動の確認を行った

 これを前段で紹介した蹴りの例と組み合わせると「蹴りを繰り出しつつ半歩前進して、間合いを詰めたところで突きを出す」という操作が可能になる(蹴り+動作中に前進→突き)。

 「アニメーションが途中で分岐する」「上半身と下半身が独立して動く」という仕組みによって、キャラクターの動きにさまざまなバリエーションを生み出し、現実の格闘技のような連携技を可能にしているのだ。

各動作に突きを挟むとこんな感じ。ちなみに、この動画には入れなかったが、蹴りの前に突きを入れることも可能
1、2を組み合わせて演舞のような動きをやってみた

 このような技術は、実写と区別がつかないほどリアルなゲームが作られるようになった現在では当たり前に使われている。しかし、本作が誕生したのは1984年、今から30年以上も昔のことだ。

 「カラテカ」は、ゲーム界のオーパーツなのである。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」