キキが「魔女の宅急便」を開業するには、どんな手続きが必要? 映画の世界に「税金があったら」を妄想してみました

映画の裏で、こんなやりとりがあったかも。

» 2020年12月30日 18時35分 公開
[さんきゅう倉田ねとらぼ]

 映画を見ているとよく出てくる、お金にまつわるやりとり。フィクションの世界にも、現代の日本と同じような税制があったら? と考えると、映画の見え方が一気に変わるかもしれません。

 今回は、スタジオジブリ作品の中でも珍しい個人事業者が主人公の物語『魔女の宅急便』から「ジブリの世界に税金があったら?」を元国税局員のさんきゅう倉田と想像していきましょう。

さんきゅう倉田

大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。法人税の調査などを行ったのち同退職、芸人となる。芸人活動の傍ら、執筆や講演で生計を立てる。好きな言葉は「増税」。公式サイトTwitter


魔女は個人事業者が多い?

魔女の宅急便

 まずは、主人公キキと、キキのお母さんのシーンです。お母さんは魔女です。液体を調合して、魔法薬のようなものを作っています。出来上がったものは、譲渡したり一般販売を行ったりするのでしょう。

 キキのお母さんは個人事業者なのでしょう。すると、この魔法薬の売上は事業所得になります。娘のキキを扶養にしている場合は、会社員と同じように扶養控除が受けられますが、キキは16歳未満の子どもなので、扶養控除の対象となりません。

 扶養控除の額は、控除の対象となる扶養親族の年齢によって異なります。扶養控除の対象となるのは扶養親族のうち16歳以上の人で、控除額は28万円です。また、19歳以上23歳未満の人は特定扶養親族となり、控除額は63万円になります。

魔女の宅急便開業のために必要なこと

魔女の宅急便

 キキは、魔女のいない街にジジと一緒に旅立ちます。街に着くと、キキは配送業を開始します。こちらも、お母さんと同じく個人事業者となります。

 事業を始める際は、可能な限り速やかに税務署に開業届を提出する必要があります。また、翌年には1年分の売上や経費を計算して確定申告をしなければいけません。確定申告をせずに税務調査を受けた場合、「知らなかった」では済まされないので、個人事業者である以上は経理や税務についても自主的に勉強する必要があります。

 また、確定申告を青色申告で行う場合は、その承認申請書の提出も必要になります。青色申告は白色申告よりも手間はかかりますが、納税に関する特典があり、結果としてお得になります。

 こうした経理・税務がよくわからない場合は、お金を払って税理士の先生と契約しましょう。世の中には、同人作家に詳しい先生やプロレスラーとばかり契約している先生もいるので、魔女とたくさん契約している先生も探せばいるかも知れません。

「住み込み」は給与として扱われる

魔女の宅急便

 キキは、パン屋さんで住み込みで働いています。店先には、自身の配送業の看板をかけてもらっていますね。この看板の製造代金は経費になります。広告費として計上しましょう。

 キキは職業「配送業」の個人事業者ですが、パン屋さんから受け取る賃金は給与所得になります。これは、配送業の事業所得とは異なり、給与所得となるので注意が必要です。確定申告書を記入する際に欄が異なるほか、経費が認められない代わりに給与所得控除が受けられます。また、収入が控除額以下であれば、所得税はかかりません。

 なお、店主であるおソノさんから現金を受け取っていなくても、食事や住居の提供など経済的利益を受けている場合は、給与として扱われます。アルバイト先で無料の賄いを食べている場合は、それも給与として扱われるんですよ。

ほうきの耐用年数は?

魔女の宅急便

 キキが、大雨の中で配達をするシーン。このときに乗っているほうきはお母さんから承継したものだったと思いますが、今後、新しいものを買った場合は減価償却資産として計上し、買った年の経費にせず、耐用年数の中で少しずつ経費にしていきます。

 減価償却資産には、耐用年数表というものがあって、モノごとの耐用年数が記載されています。空を飛ぶためのものなので「航空機」。そのうち飛行機やヘリコプターではない「その他のもの」に分類されますから、耐用年数は5年になりそうです。


 みなさんも、ジブリ作品を見た際には、税法上どのように扱われるか考えてみてください。アニメなどを入り口に、子どものうちから税金やお金に慣れ親しんでもらえるとうれしいです。

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