2020年2月、フランスにいた留学生の記録 漫画でつづる「新型コロナ」感染拡大と帰国判断の難しさ

ついに大学が閉鎖に……。

» 2021年03月02日 20時00分 公開
[SONOねとらぼ]

 2020年3月、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行が原因で、多くの留学プログラムが中止になり、緊急帰国を余儀なくされた学生が続々と日本に帰ってきました。

 かくいう私もその1人。帰国直後は、念願の留学がこんな形で終わってしまったことがショックで、なかなか筆が進まなかったのですが、ようやく当時を振り返ることができるようになってきました。

 この連載では、マンガと文章でコロナ流行当初の雰囲気や状況の流れをお伝えします。

前回の記事はこちら

書いた人:SONO

 1995年生まれ。漫画家。

 キリスト教、歴史を題材にした漫画を執筆している。著作に『教派擬人化漫画 ピューリたん』(キリスト新聞社)がある。

Twitter:@0164288

2月のバカンス明けの緊迫

コロナ 帰国日記

 2月末〜3月初頭の休暇が終わり、大学の授業が再開されたころの出来事です。コロナは怖いけれど、学生である我々の目下の敵は、3月末にせまる期末試験。ところが授業開始直後の3月10日、日本外務省が、フランスを感染症危険レベル1(=十分注意してください)に指定しました。この影響で、いくつかの日本の大学が留学プログラムを中止し、留学生たちに帰国要請を出しはじめました。

 出身大学や、参加していた留学プログラムやビザの種類にもよりますが、都内某私立大学から留学していた友人たちは危険レベル1が出された日に「来週の飛行機で帰国するように」との指示を大学から受けたそうです。

 留学生を帰国させる決定をしたのは日本だけではありませんでした。アメリカ、アジア、EUの他の国からきている留学生なども、次々に荷物をまとめて帰国しているようでした。おそらく、大学の要請を受ける前に、自主的に帰国する決断をした人もいたのではないでしょうか。

 私が住んでいた学生寮(フランス人学生も留学生も入居している)でも、帰国の準備をする学生たちが目につき始め、廊下やロビーでは帰国するか否かを真剣に話し合っている学生たちの姿がみられました。

 私自身は、こうした状況の急変にとまどいつつも、妙に落ち着いた気持ちでいました。自分の出身大学からは、まだ帰国の要請は出ていなかったし、大学院生だったので、取るべき単位もなく、就活する予定もない。「日本に帰ってもすることないし、私は帰国しなくていいかな〜」などと考えていたのです。

大学が閉鎖に

コロナ 帰国日記

 そして、3月14日土曜日の朝。コロナの感染拡大を防ぐため、月曜日から大学が休講になるという知らせがきました。この時の私の気持ちは「コロナが怖い」よりも、「定期試験のために準備してたのに!ひどい!」「でも、しばらく勉強する時間ができるぞ!ラッキー」というものでした。

最後の外食になった中東料理

コロナ 帰国日記

 とはいえ、不安な状況には変わりなく、勉強もなかなか手につきません。癒やしを求めて、同じく日本人留学生の友達と猫カフェへ行くことにしました。リヨンには2軒の猫カフェがありますが、1軒目は満席だったので、2軒目へ。猫を愛でながらの話題は「フランスが、イタリアみたいに外出禁止になったらどうしよう?」「学校もお店も閉まってたら、どうやって過ごそうか? Netflixに加入すべき?」「せめて試験を受けて、単位をもらってから帰りたい」「滞在を続けるために、どうやって大学とか先生とか親を説得しようか?」などと言う、ぼやき&愚痴&妄想。このときは、十分な情報もなく、見通しの立たない状況のなかで、少しでも気分を晴らしたかったのだと思います。

 その後、夕食をとるために立ち寄った中東料理レストランで、当日深夜からのバー・レストランなどの休業要請が出されたことを知りました。さらに、翌々日の16日にはマクロン大統領が演説をし、コロナ対策について詳しく説明するとのこと。

 店員さんに「このお店も閉めるんですか!?」と聞いてみると、意外にも「こんな状況じゃしょうがないから、バカンスだと思ってしばらくお休みするよ。明日から車で南仏にいくことにしたよ〜」とのんびりとした返事がかえってきて、少し安心したのでした。実際にはこの後、緊急の理由がない長距離移動が禁止になってしまったので、彼はきっと南仏には行けなかったでしょう……。

ついに帰国要請の予告が

コロナ 帰国日記

 そして翌朝15日、ついに私の派遣元である日本の大学から「外務省の感染症危険レベルが2に達した段階で交換留学プログラムを中止し、帰国を要請する」という予告メールが届きました。この時ようやく、「もしかして私も帰国させられるの!? 他の留学生たちみたいに!?」という不安が実感として襲ってきました。

 はたして、私は帰国させられてしまうのか? それとも、意地でもフランスに残るのか? 第3回に続きます。

第3回に続く

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/01/news003.jpg パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. /nl/articles/2412/01/news031.jpg 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. /nl/articles/2412/03/news082.jpg 「ほ、本人……?」 日本に“寒い国”から飛行機到着→降りてきた“超人気者”に「そんなことあるw?」「衝撃の移動手段」の声
  4. /nl/articles/2412/03/news111.jpg 才賀紀左衛門、娘とのディズニーシー訪問に“見知らぬ女性の影” 同伴シーンに「家族を大切にしてくれない人とは仲良くできない」
  5. /nl/articles/2412/02/news009.jpg 【今日の難読漢字】「誰何」←何と読む?
  6. /nl/articles/2412/05/news006.jpg 「今やらないと春に大後悔します」 凶悪な雑草“チガヤ”の大繁殖を阻止する、知らないと困る対策法に注目が集まる
  7. /nl/articles/2412/03/news148.jpg 武豊騎手が2024年に「武豊駅に来た」→実は35年前「歴史に残る」“意外な繋がり”が…… 街を訪問し懐古
  8. /nl/articles/2412/03/news092.jpg 大谷翔平、“有名日本人シェフ”とのショット 上目遣いの愛犬デコピンも…… 「びっくりした!!」「嬉しすぎる」
  9. /nl/articles/2412/03/news055.jpg ハローマックのガチャに挑戦! →“とんでもない偏り”に同情の声 「かわいそう」「人の心とかないんか」
  10. /nl/articles/2412/03/news034.jpg 古着屋で“インパクト大”なブランケットをリメイクすると…… 劇的な仕上がりに386万再生「これはいいね、欲しい!」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  4. 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
  5. 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
  6. パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
  7. アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
  8. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
  10. PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」