越後湯沢駅「牛〜っとコシヒカリ」(1100円)〜駅弁屋さんの厨房ですよ!「川岳軒」編5 駅そばが救った越後湯沢駅弁(1/12 ページ)
毎日1品、全国各地の名物駅弁を紹介! きょうは越後湯沢駅「牛〜っとコシヒカリ」(1100円)です。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2021年1月1日)
令和3(2021)年も、「ライター望月の駅弁膝栗毛」をよろしくお願い申し上げます。
この年末年始は、全国の駅弁屋さんを訪ね、駅弁の製造過程とこだわりを伺っている、「駅弁屋さんの厨房ですよ!」23弾、越後湯沢駅弁「川岳軒」編をお届けしています。
越後湯沢には、「北越急行」ほくほく線からの直通列車も乗り入れています。
丁度、直江津〜越後湯沢間を約1時間で結ぶ超快速「スノーラビット」がやって来ました。
越後湯沢駅からは、平成9(1997)年から平成27(2015)年までの18年間、ほくほく線経由で、北陸・金沢方面を結ぶ特急「はくたか」が運行されていました。
しかし、北陸新幹線金沢開業で特急は運行終了、越後湯沢の利用者は大きく減りました。
それから5年、越後湯沢の変化といま・今後を、石打を拠点に越後湯沢駅弁を手掛ける川岳軒・牧野晶(まきの・あきら)社長に伺っていきます。
駅そばが救った越後湯沢駅弁!
──平成27(2015)年の北陸新幹線開業に伴う、在来線特急「はくたか」の廃止から5年、どのような変化がありましたか?
食材の原価がとても上がったこともあり、正直、店じまいを考えたこともありました。
でも、そのなかで、湯沢はインバウンドの追い風もありました。
そしてJR新潟支社さんの支えもあって、3年半ほど前から越後湯沢駅の立食いそば店「湯沢庵」を任せてもらえたことで、何とか続けることができています。
この立ち食いそばができていなかったら、たぶん閉めていたと思います。
──「湯沢庵」の存在は大きいんですね!
川岳軒における、駅弁以外の大きな収入の柱となっています。
また「湯沢庵」に社員がいることで、越後湯沢駅の駅弁の売れ行き状況を把握することができるので、売れていれば、急きょ駅弁を追加生産することができます。
(駅弁業者によってはそれが叶わないお店もあるので)その意味でも、川岳軒は、まだ恵まれているのかなと思います。
──「湯沢庵」のこだわりはありますか?
そば・うどんの麺は、大手メーカー「テーブルマーク」のものを使っています。
じつは、南魚沼市には「テーブルマーク」の工場があるんです。
とくにうどんは、この工場で作られたものですので、“地産地消”にもつながっています。
おかげさまで工場に勤務されているテーブルマークの社員の方が、越後湯沢のお店まで足を運んで下さることもあります。
Go To トラベルキャンペーンに救われた越後湯沢の観光業
──新幹線の空席も目立った2020年のコロナ禍、どのような厳しさがありましたか?
緊急事態宣言が出た4月から6月までは、営業を完全に休みました。
7月から週末中心に営業を再開しましたが、去年の20分の1くらいしか売れていません。
そのなかで10〜11月の「Go To トラベルキャンペーン」には、本当に救われました。
あと、持続化給付金、雇用調整助成金の制度がすぐに整備されたことで、従業員の時間短縮や休んでもらっても給料を支払えたことが、大いに助かりました。
──昨季に関して、3月のオンシーズンまでは、何とか乗り切った感じですか?
その意味では、コロナ禍でも、(湯沢は)助かったところも大きかったと感じています。
川岳軒は例年(湯沢が本格的なスキーシーズンとなる)12月から翌3月まででしっかりと利益を出して、あとはできるだけ赤字を出さないようにしていくのが基本です。
他の駅弁屋さんにはできない経営かも知れませんが、最近は「ドラゴンドラ」をはじめ、湯沢も通年のレジャーが増えて、ビジネスチャンスも増えているのが有難いですね。
創業90年! これからも駅弁を「旅のお供」に!
──いよいよ創業90年の年ですが、「川岳軒」が駅弁作りで最も大切にしていることは?
「旅のお供に駅弁」ですね。
やはり、列車のなかで車窓を眺めながら駅弁を召し上がっていただきたいので、箸の入れ忘れ等ないよう、十分に注意して仕上げるようにしています。
今後、牛と豚を両方楽しめるような加熱式の新作を作りたい夢もありますが、このご時世、まずは「川岳軒」を残すこと、それを第一に力を入れていきたいと思います。
──牧野社長お薦め、川岳軒の駅弁を“美味しくいただくことができる”車窓は?
冬の上越線、とくに石打から塩沢にかけての車窓は、旅情を誘います。
東側には雪山が連なり、その眼下には「川岳軒」の駅弁で使われている塩沢のコシヒカリが作られている田んぼが広がります。
季節によっては、雲海が広がります。
残念ながら、上越新幹線ですと、ほとんどトンネルなんですよね。
──牧野社長は、これからニッポンの駅弁をどんな形で盛り上げていきたいですか?
まずは、多くの皆さんに「魚沼産コシヒカリ」を召し上がっていただくこと。
場合によっては、(話題性の観点から)新米のシーズンから冬季限定で、高額な駅弁を作ってみるのもアリかと思います。
いずれにしても、駅弁業界はとても厳しい状態です。
お客様の温かい手を、少しでも駅弁に差し伸べていただけたら、本当に有難いと思います。
(川岳軒・牧野晶社長インタビュー、おわり)
【おしながき】
- 白飯(南魚沼塩沢産コシヒカリ)
- 牛肉煮(南魚沼市・桜井畜産の黒毛和牛) はじかみ
- 玉子焼き
- 蒲鉾
- 干し大根
令和3(2021)年は丑年。
そのスタートにピッタリの駅弁が、川岳軒の「牛〜っとコシヒカリ」(1100円)です。
日本のトップブランド・南魚沼塩沢産のコシヒカリの白いご飯の上に、甘辛く味つけられた地元・南魚沼市にある桜井畜産の和牛がたっぷり載っています。
越後湯沢で販売される肉系駅弁では、随一の人気を誇ると言います。
いまから90年前、清水トンネルが開通し、上越線の全通と共に誕生した「川岳軒」。
石打における機関車の付け替えが駅弁を生み、戦後のスキーブームが駅弁を育んで、上越新幹線の開業と特急「はくたか」が、駅弁業に大きな実りの季節をもたらしました。
そして、今日も川岳軒は“南魚沼・塩沢産コシヒカリ”という絶対的なブランドへの自信を胸に、少数精鋭のスタッフが1つ1つ手作りで駅弁を作り続けています。
ちょっと落ち着いたら、日本随一の美味しいお米を誇る駅弁を片手に、雪景色を静かに眺めに出かけてみませんか?
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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