誰かが会いに来てくれるだけで…… ひきこもりが震災ボランティアで知った「大事なこと」を描いた漫画に反響(1/2 ページ)
仮設住宅に住むおばあさんが望んでいたことは……。
東日本大震災から10年。被災地へボランティアに行ったしゅう(@vanitas00)さんが、仮設住宅での出会いを通して学んだことを、漫画「ひきこもりが震災ボランティアに行った話」で描いて反響を呼んでいます。
しゅうさんは小学校時代に不登校になり、仕事も職場の人間関係の悩みで辞めてしまいます。数年間ひきこもり、働けないことに対する親や社会への強い罪悪感で自分を責めていましたが、テレビで見た東日本大地震の様子に心動かされ、半年後にボランティアに参加しました。
最初に参加した住宅内の清掃や農業用具の洗浄などは、黙々とできる作業で精神的に楽だったといいます。しかし、1カ月後に参加した「訪問」――仮設住宅を1軒1軒訪ねて要望などを聞き取る活動は、会話が苦手なしゅうさんににとってハードルの高いものでした。失敗の連続で、訪問先で怒鳴られ悩んだことも。
それでも「訪問」を続けるなかで、ひとり暮らしのおばあさんに出会います。必要な物資についてたずねると、おばあさんはしばらく沈黙した後、支援物資は充分なので誰かに会いに来てほしいと言います。知り合いのいない仮設住宅生活では、会える人がいないのです。
しゅうさんは仮設住宅で孤独に過ごすおばあさんを「ひきこもりの僕と全く一緒」と感じます。「何もできない 僕は価値がないと 孤独な自分自身を責め 家の中で必死にもがいて生きるしかなかった自分」と重ね合わせたのでした。そして、おばあさんの来てくれてうれしいという言葉に、「無価値な人間だと思っていた自分は 苦しい日常を生きる人にとっては必要とされる人間でもあったのだ」と救われたような気持ちに。
その後も被災し孤独を感じる人々に出会ったしゅうさん。被災者には復興に取り組める人だけではなく、傷つき動けなくなる人も。震災もひきこもりも誰にも起きる可能性があり、そうなったときに自分の存在を受け入れてもらえたら生きる希望が湧いてくる――しゅうさんは、そういった大事なことを10年前の被災地で学んだとしめくくっています。
しゅうさんの漫画には、ひきこもる人の立場から、存在を認めてもらいたい、誰かの役に立ちたいという強い気持ちについて語るコメントが多数寄せられていました。また、おばあさんの「誰かが私に会いに来てくれるだけで良い」という言葉に重みを感じた人や、被災地でのボランティアを経験し、しゅうさんの頑張りに賛辞を送る人も。
漫画「ひきこもりが震災ボランティアに行った話」は、しゅうさんがボランティア体験を書いた小説『おーい、中村くん――ひきこもりのボランティア体験記』を漫画化したもの。小説には漫画のもとになったエピソードのほかに、被災地でのさまざまなできごとが盛り込まれています。
現在は仮設住宅から「災害公営住宅」(震災により住居を失った人のための住宅)への住み替えが進められています。新しい「災害公営住宅」に住むことができても、孤立したまま亡くなる人もいて、漫画に登場したケースは過去の話ではないようです。
作品提供:しゅう(@vanitas00)さん
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