【22年間同じRPGを遊んでる人取材】“古き良きRPG”の全てが詰まった「LUNAR SILVER STAR STORY」
「『ゲームをプレイする』というよりは『物語を追体験する』ような感覚」
毎年のように話題の新作が登場するゲームの世界。その一方で、長年にわたって同じ作品を遊び続けている人たちもいます。そこで本記事は「10年以上、同じRPGを遊び続けている方」にその作品と出会ったきっかけ、遊び続けている理由などを伺う読者募集企画。
今回のテーマはPS向けソフト「LUNAR SILVER STAR STORY」(1998年)。「グランディア」などで知られるゲームアーツから1992年に発売されたRPGシリーズ第1作のリメイク版を、20年以上遊び続けている方にお話を伺いました。
はじめに:投稿者からの一言
「私は、どんな作品においても、全ての先入観を廃して作品を受け止めるのが一番ぜいたくな楽しみ方だと思います。これを読んで興味の湧いた方は、この先を読まずにプレイすることをおすすめします」
そんなわけで、本記事は「このゲーム面白そうだな」と思った時点でブラウザの戻るボタンを押すことを推奨します。古いタイトルではありますがさまざまなハードに移植されており、最新はPSP向け「LUNAR HARMONY of SILVER STAR」(2009年/ダウンロード販売も)。
「LUNAR SILVER STAR STORY」との出会い
今はなき“古き良きRPG”の全てが詰まった作品だと思います。剣、魔法、美しく優しいヒロイン、山賊、海賊、神官、空を飛ぶ島、ドラゴン……ここまでベタなRPGも少ないのではないでしょうか。
このゲームを知ったきっかけは、子どものころ、祖父母に連れられて買い物に行った商店街で手にした、本作を紹介する小冊子です。「白竜の洞窟」「赤竜の火山」「ナンザスの関所」等々、男の子の心をくすぐる単語が並んでいました。正統派ファンタジーの世界に触れたのは、このときが初めてでした。
購入したのは、家にプレイステーションがやってきた10歳(小学4年生)のときです。頻度はそこまで多くありませんが、今でも年に1度くらいのペースで遊び続けています。クリア回数は15回程度で、累計プレイ時間は300〜350時間くらいでしょうか。私は現在32歳。最近は「ゲームをプレイする」というより、「物語を追体験する」感覚ですね。
このゲームの魅力
「このゲームのこういうところが好き」というよりも「このゲームが私の好きの原点」の1つです。
設定資料集にもありますが、舞台となる世界はヨーロッパをベースにしています。北欧のイメージと書かれていましたが、個人的には、主人公・アレスの吹くオカリナの音色やヒロイン・ルーナの衣装もあって、イギリスやアイルランド由来のケルティックな雰囲気を感じます。
作中の音楽もケルトやアイリッシュ系のトラッド音楽とオーケストラを下地にした感じで、街や村でのBGMは牧歌的な曲が多いです。そのためか作品全体が柔らかく明るい印象で、暗くなりすぎないのが良いですね。
丁寧に作りこまれたキャラクター
ストーリーの好きなところは、個別に挙げていくとストーリーをほぼ網羅してしまいそうです。これから楽しみたい人のことを考えると、語らない方が良いでしょうか。
どのキャラクターも、今で言う「属性」と言うほどではないバランスで、個性的に描かれています。とりわけ、主人公のパーティは全員が長所と短所が丁寧に設定され、とても魅力的に描かれています。個性が悪目立ちせず、セリフや行動の1つ1つがとても自発的に感じられます。キャラクターが制作者の手を離れて生きているような印象ですね。歳を重ねた今でも違和感なく楽しめるのは、これが理由かもしれません。
設定資料集を読むと、こうした自然なキャラクターの振る舞いはかなり意図的に作られたようですが、それにしても制作者の意思を超えた魔法がかかっているように感じます。
古い作品なので、当時にしては多かったとはいえ、たくさんセリフのある作品ではありません。そのため、私自身の思い入れで補完してしまっている部分もあるかもしれませんが……。誰かへの思いやりや優しさをきっかけに、自分自身の弱さを乗り越え、戦いに身を投じていく彼らの姿は胸が熱くなりますね。
ゲーム音楽の魅力
ちょうど今、サントラを聴きながらこの文章を書いているのですが、ヒロイン・ルーナの歌声が流れると寂しいような、懐かしいような……私にとってこの作品のもう1つの魅力は音楽です。
故郷を離れる船上で、ルーナが歌う「風のノクターン」。村に戻るつもりだったルーナを、なかば勢いで船に乗せてしまったアレス。彼女のベッドが空になっていることに気付き、アレスは甲板に上がるのですが、ルーナに声をかけずに去ってしまいます。
ルーナが抱いている不安、アレスへの想いを乗せたような歌。そして、それに気付きながらも、あえて彼女を1人にしたアレスの気遣い。アレスの優しい愛情が垣間見え、キャラクターが自然に振舞っていると感じられるシーンの1つですね。
作品を代表する曲の1つ、「そして冒険の扉は開かれる」。作中にたびたび使われるテーマなのですが、「青龍の神殿」を呼び出すとき、アレスはルーナを想い、オカリナでそのメロディを吹きます。このシーンでは、さらわれて部屋に閉じ込められていたルーナも、オカリナの音色に応えるように歌い始めます。
この曲もトラッド音楽特有の牧歌的な感触があって過度に感傷を誘う曲ではないのですが、それが余計に感傷を誘うというか。アレスのオカリナとルーナの歌声が同じメロディをなぞるのも、アイリッシュと同じスタイルでとても良いです。長い年月をかけて磨かれた小石の美しさを感じますね。
ダンジョン内で時々かかる「Mysterious Cave」はCave(洞窟)感もさることながら、Mysterious(ミステリアス)な雰囲気がよく表現されていて、笛の音が入っていたり、でろでろのシンセが低音で鳴っていたり、やたらメロディアスなサビに入っていったりとなんともプログレッシブ。私の音楽の嗜好を捻じ曲げた曲の1つかもしれません……。
音楽を嗜む以前からずっと好きなのは、やはりボス戦の曲「伝説からの帰還」。張り詰めた緊張を感じるリフレインから始まり、じわじわ盛り上がるのがいいですね。曲がループしてもその緊張感や高揚感が続く、ボス戦という山場にふさわしい曲だと思います。
この曲に関しては「シナリオライターの重馬さんに『熱すぎる』と言われてかなり削った」という逸話を読みましたが、その“熱すぎるバージョン”を聴いてみたいですね。
※出向先で書いているため、曲名はLUNAR THE SILVER STARのサントラから持ってきています。PS版はどれも英語のタイトルがついていたはずです。
20年以上たった現在の楽しみ方
初めてこのゲームを遊ぶ場合、クリアまでにかかる時間は30時間前後でしょうか。クリアしたダンジョンへの逆戻りや、冗長なイベントが無いので、スムーズに進むと20時間程度でクリアできてしまいます。レベル上げやお金稼ぎに時間を費やす必要の無いように作られているようで、中だるみせず、純粋にRPGを楽しめます。街を歩く一般人にも丁寧にセリフが割り当てられているのも、RPGのあるべき姿のように感じます。
前述の通り、「ゲームをプレイする」というよりは「物語を追体験する」感覚で、長期休暇のときにプレイすることが多いです。遊んでいるとキャラクターたちの姿に勇気づけられるような感覚もあり、今になって振り返ってみると環境が変わったとき、ふと思い出して遊んでいることが多い気もします。
例えば、受験の年、大学入学や就職、人事異動になったときでしょうか。ちょうど昨年、転職して関西から東京へ出てきたのですが、全く未経験の業種・土地という不安だらけのなか、上京の前後で2回クリアしました。
主人公パーティのキャラクターたちは今でこそ私よりも年下ですが、初めて出会ったとき私はまだ小学生でした。あのころに戻って、一緒に遊んでもらうようなイメージなのかもしれません。懐かしい音楽とともに彼らのことを思いだして、「久しぶりに会いに行こう!」という気持ちになりますね。
本企画では取材させていただける読者の方を募集しています
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