かにを知り尽くした駅弁屋「アベ鳥取堂」、そのオリジナルへのこだわり(1/12 ページ)
毎日1品、全国各地の名物駅弁を紹介! きょうは、元祖かに寿し「アベ鳥取堂」のかに・米・その他さまざまな食材のこだわりをお届けします。










日本で初めて「かに寿し」駅弁を発売した鳥取駅弁「アベ鳥取堂」。いまから60年以上前、独自の保存技術を開発して、「かに」を使ったさまざまな駅弁を通年で販売しています。今回は「かに」をはじめ、米や酢といったさまざまな食材へのこだわりを取材しました。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第25弾・アベ鳥取堂編(第4回/全6回)
全国各地で引退が相次ぐ国鉄形車両。そのなかにあって山陰地方では、いまも国鉄生まれの気動車や電車が、リニューアルを受けながら健在です。とくに鳥取県内の非電化区間を走る普通列車では朱色に塗られたキハ47形気動車が大半を占めます。この日も2両編成の普通列車が、春の日差しを受けながら、鳥取市郊外の菜の花畑を横目に、山陰本線をのんびりと駆け抜けて行きました。
そんな鳥取の駅弁を製造する「アベ鳥取堂」。株式会社アベ鳥取堂の阿部正昭社長にさまざまな食材へのこだわりを伺いました。
丸釜で炊くお米が美味しい!
―:アベ鳥取堂の駅弁に使用しているお米、炊き方、水加減など、こだわりの点は?
阿部:お米は、100%地元鳥取産のお米をブレンドして使用しています。一部は、農家さんに契約栽培してもらったお米を使っていて、7升の丸釜に5升入れて、ガスの火で炊いています。丸釜でないと、お米の対流が悪くて、美味しく炊き上げることができないんです。水は多めにして、やわらかく炊き上げるようにしています。
―:酢飯へのこだわりは?
阿部:酢飯、茶飯には、いまも100%鳥取県産の酢、醤油を使用しています。とくに「元祖かに寿し」は、鳥取の水でご飯を炊き、山陰の海で獲れたかにを調理して、鳥取の酢を合わせていくのが基本です。ただ、流通が発達して(地元の調味料メーカーなども少なくなり)、当初のかに寿しのように、全てを鳥取産でまかなうのが、正直難しくなっていますね。
「かに寿し」と「かにめし」では、「かに」の産地が違う!
―:カニの仕入れ、品質管理には、とくにこだわりがありますよね?
阿部:「かに寿し」のベニズワイガニは、いまは、ほとんど香住に集約されてきています。本ズワイガニなどを使用する際は、境港産や場合によって海外のものを使います。でも、どこの産地のかにを使っても「アベ鳥取堂」のかにの味に仕上げています。ココがいちばん大事で、「元祖かに寿し」と「山陰鳥取かにめし」に使用するかには、ともにベニズワイガニですが、それぞれ産地が違います。産地を入れ替えて使っても、それぞれの駅弁の味が出せなくなってしまうんです。
―:具体的には、どのように違うんですか?
阿部:かに寿しのベニズワイガニは、加工する直前まで生きているものを使用しています。基本的に、船内冷凍など一切していませんので、とくに新鮮なかになんです。かに寿しができた当初は船内冷凍設備もなく、その製造手法を守っていまに至ります。でも、「(山陰鳥取)かにめし」に使用する(かにの)炊き込みご飯には、「かに寿し」に使用するかにの身は向かない(美味しくない)んです。
鮮度がモノを言う、かにの味わい!
―:かには鮮度で大きく味が変わる……そのくらい繊細なものなんですね?
阿部:アベ鳥取堂の冷凍庫のなかには、用途別に何種類ものかにの身があります。弊社の駅弁には、類似したかにの駅弁がたくさんありますが、調理方法に合わせてまったく違うかに、最も適したかにを使っていますので、ぜひ食べ比べていただけたらと思います。じつは私自身も、かに寿しのかにをずっと「まぁ、こんなもんだ」と思っていましたが、他の(地域の)かにを味わってみると、かにの味がこんなに違うんだと驚いたほどですけれどね。
―:調理方法で工夫されている点はありますか?
阿部:錦糸玉子がオリジナルです。液卵も使いませんし、汚れた卵、ひびが入った卵も使いません。どこかで人の手(意思)が入っていると、自然のままより、リスクが高まりますので。卵はかける熱が低いだけに、新鮮なものを使うようにしています。刻み生姜も、添加物をできるだけ取っ払ったオリジナルです。
「元祖かに寿し」でおなじみのかにのちらし寿しをメインに、アベ鳥取堂自慢のおかずもたっぷり味わうことができるのが、「かに幕の内」(1600円)です。昔の「元祖かに寿し」を彷彿とさせる、少しレトロな掛け紙が使われていて、手に取ると、ズシリとした重みとともに、何となく懐かしい気持ちが感じられます。名物駅弁とともに、おかずもしっかりいただきたいときに重宝しそうですね。
【おしながき】
- かに寿し(酢飯、ベニズワイガニ、錦糸玉子、刻み生姜)
- 赤魚竜田揚げ
- 蒲鉾
- 玉子焼き
- 牛肉煮
- 煮物(信田巻、里芋、椎茸、絹さや、人参)
- ひじき煮
- 紅白なます いくら醬油漬け
- 奈良漬
- 塩昆布
- オレンジ
幕の内らしい蒲鉾、玉子焼きはもちろん、魚は少し変化球で「赤魚の竜田揚げ」となっている、アベ鳥取堂の「かに幕の内」。「元祖かに寿し」同様、鮮度にこだわったかに・酢飯の美味しさはもちろん、オリジナルの錦糸玉子、刻み生姜、奈良漬、塩昆布までしっかり入っています。その意味では、アベ鳥取堂の技が最も詰まった駅弁! かに寿しのワクワク感を一層、引き立ててくれる構成となっています。
鳥取を走る普通列車用の車両を改造して、平成30(2018)年に生まれたのが、全車グリーン車の観光列車、快速「あめつち」です。週末を中心に鳥取〜出雲市間で1往復が運行されており、下り列車では事前予約制でアベ鳥取堂が製造しているオリジナルの食事をいただくこともできます。
駅弁膝栗毛の人気特集企画「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第25弾・アベ鳥取堂編。阿部正昭社長のインタビュー、次回は社長に就任されてからのご苦労などを伺います。
(初出:2021年4月14日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
おすすめ記事
Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.
「ウソだ…」「言葉が出ない」 幼少期から絵を描き続けた少年→15年後…… 大人になって描いた絵が100万再生【海外】
「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
2日かけて組み立てたのに動かない!? 自作PC初心者あるあるの再現が1460万再生「いまいましい」「同じミスしたよ」【海外】
「これは名品」「大当たり」 ユニクロの新作春夏コレクション、“売り切れ続出”だったアウター3商品とは
親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」話題になった飼い主に聞いた
皇后さま、「ロイヤルブルー」で華やかさ演出 天皇陛下は黒の蝶ネクタイ【10万いいね】
折り紙を三角に折り続けていくだけで……「天才だ!」 驚きの作品に「すげーーーーー!!」「折ってみます!」
磯で見つけた“謎の穴”に釣り糸を垂らすと…… 「デカい!」牙をむいた“海のギャング”に「こんなことあるんですね」
湘南の砂浜に打ちあがった“超危険生物”を飼育したら…… 貴重な姿に「初めて見ました」「かっこいい」と大反響→2年後の現在について話を聞いた
「1回もエンジン掛けてない」 寺門ジモン、“希少な高級外車”を7年放置で廃車寸前に……ボロボロで激ヤバな相棒へ「ごめんな〜!」
- 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
- パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
- 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」
- なんとなく捨てにくい紙袋→2カ所切り込みを入れるだけで…… 目からウロコの“活用術”に「これすごくいい!」【海外】
- 「見習うことばかり」 80代おばあちゃんの春服&収納術がステキ! 上品かつオシャレで「憧れです」「尊敬します」
- ファスナーに直接毛糸を編み付けていくと…… 完成した“便利でかわいいアイテム”が100万再生「天才だ」「これ大好き」【海外】
- 「尊厳を踏みにじる行為」 八代亜紀さんの“物議のCD”は「流通会社がすでに流通を中止」 タワレコが回答
- 古くなったジーンズは捨てないで! 目からウロコの“アイデア”に大反響「なにこれかわいい!」「こんなの作れるんだ」【海外】
- 指先サイズの小さな器に木を植えて、育てたら…… 「芸術だ」「半端ない」鳥肌モノの“神盆栽”に反響
- 義母「ランドセル代を振り込みました」→銀行口座を見ると…… 2児ママ絶叫の“神対応”が1520万表示「凄すぎる!」
- 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
- 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
- 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
- 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
- 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
- 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
- コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
- 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
- Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
- 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】