世田谷文学館で開催中の「谷口ジロー展」がすごすぎて「すごい」としか言えなくなるのでみんな行きましょうマシーナリーともコラム(2/3 ページ)

» 2021年10月30日 20時20分 公開
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 で、このマンガの原作を担当しているのが関川夏央という男なのよ。このウイットに富んだ物語を書いたのはよ! も〜この人の書く人間模様というかユーモアがとにかく楽しくてね、そこに谷口ジローのうますぎシブすぎな絵が合わさると無敵最強になるんですよ。マージで空気感がいい。リズム感がいい。たまらん。

谷口ジロー展 マシーナリーとも子 『事件屋稼業』4巻146ページより。恵まれた画力からの圧倒的ウイットに富んだユーモアにわれわれ々は狂う!

 Kindleなど電子書籍も配信されている単行本1巻巻末には、この関川と谷口の出会いや当初連載していた雑誌の廃刊パーティーなどの様子についてウソ八百を並べたすばらしいコラムが掲載されていて、これがまた地獄のように面白いうえに、谷口ジローへの愛着を感じられるものになっていて、読むとこのコンビがねえ大好きになるんだよねえ。買って読んでみてください。かわぐちかいじがいしかわじゅんを投げ飛ばしたりしていてすごいよ。

 さらにこのマンガのすごいところは超・長期に渡って連載されていたことで……いや超長いっていったらこち亀とかゴルゴとかあるだろって話なんだけどまあそれはそれとしてこのマンガも長い。連載スタートが1979年。現段階での最新作が執筆されたのは1994年。数字だけ見るとじつに15年もの長期間連載され続けていた大作にも思えるが、実際のところ掲載は散発的。このあいだに描かれたお話は全44話となっている。

 でも15年だぜ15年。冷静に考えると『ONE PIECE』のほうが長い間連載されてるしマジで描き続けてるんだけど、でも谷口ジローが15年付き合い続けてたんだぜ。『ブランカ』描いてるときも『餓狼伝』描いてるときも『歩くひと』描いてるときもいつか心のどこかに「そろそろ『事件屋稼業』やるかぁ〜」と互いに思ってた(かどうかは知らんけど)と思うとなんだか心がポカポカしてくるよなあ。

 また『事件屋稼業』は描かれた時期時期、リアルタイムの時代が描かれていて、それに応じて登場人物たちの年齢も上がっていくのも泣かせる。どうも深町は関川・谷口両者の年齢と大体同じ〜ちょっと上想定で描かれていたらしく、いうなれば彼らの分身ってわけなんだな。

 そしてこのコンビが『事件屋稼業』に続いて生み出したのが『坊っちゃんの時代』よ。夏目漱石を中心として明治時代の文豪、そして周囲の人々、社会を描いた作品なんだがこれがまた骨太かつユーモアを忘れない作品ですごい迫力がある。

谷口ジロー展 マシーナリーとも子 『坊っちゃんの時代』1巻105ページより。全体的にはしっとりとした話なんだがこの誌面のエネルギッシュなこと、作画とネームのせめぎ合いと言ったらどうだい

 読んでて「なんだこのパワーは!?」って圧倒されてしまう。もうAmazonで試し読みできる冒頭見開きの部分で身体が震えるくらいすごい。ここに引用してもいいんだけどもう絶対自分で見たほうがいいから読んだことがなかったら今すぐ試し読みしてきなさい。すごいから。

 もう谷口ジローのすげえうまい絵のパワーと関川夏央のがっしりしたストーリーにユーモアを混ぜ合わせていくセンスが最強に組み合わさってものすごい読み応えとなっていてすげーんだ。すげーしか言わなくなってしまったすみません。

谷口ジロー展 マシーナリーとも子 『坊っちゃんの時代』1巻82ページより。あのねえ、絵がうまいんだよな

 そしてこの本の幕間には関川による「いかに苦労してこの作品を産み出したのか」が書かれているんだがこれがまた読んでいると気持ちがぶわーとなってきて、まあなんだ。谷口ジローとコンビが組めてほんとうに良かったね的な気持ちが湧いてきて、実際読むとシナジーがすごいのでもうなんかこのコンビがものすごく大好きになってしまったのね。

 いつか『事件屋稼業』の新作を書いてくれないだろうか。そんなことを考えながら過ごしていたら2017年、谷口ジローは亡くなってしまった。これは悲しかった。谷口ジローというマンガの塊のような男が絶筆してしまったことももちろん悲しいが、不謹慎ながら「ああ、これでもう『事件屋稼業』は読めないんだな」という悲しみも同時に襲ってきた。それくらい私にとっては大きな作品だったんだよな……。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」