ブタさんがブヒブヒする日常ドキュメンタリー映画「GUNDA/グンダ」が新しい形の脳トレだった(2/3 ページ)
本作にナレーション、字幕、音楽が一切ないのは、プロパガンダになってしまうのを避けることに加え、「制作者の感情を排除し、動物たちの息遣いや、どうコミュニケーションを取るのかを見せたかった」という明確な意図に基づくものだ。
ドルビーアトモスの技術で複雑な自然音を取り入れ、モノクロームの映像にすることで生々しい血の色や鮮やかな色味で観客を誘導をしないようにするなど、種々の要素からも作家としての確かな信念がみて取れる。
ただ、本作はイルカやパンダなど一般にかわいいとされる動物の映画ではなかったため、資金調達は困難を極め、ノルウェーの会社がリスクを冒して制作を引き受けてくれたのは、なんと構想から30年後のことだったという。
それでいて撮影時間はたったの7時間で、編集はスムーズに進んだそうだ。そうとは思えないほどに画は洗練されており、「どうやって撮ったの?」と驚く構図もあり、妥協を感じさせることはなかった。
そのかいあって、本作では動物の生態や神秘を解明するネイチャードキュメンタリーでも、「生き物を食べることを学びましょう」と宣う食育映画でもない、観客が主体的に考えながら見る、独特の感覚を得られる映画となった。こんな映画は、二度と誕生しないかもしれない。
驚嘆し圧倒される衝撃のラスト
本作には驚嘆し圧倒される、とんでもない結末が用意されている。もちろん詳細は一切書けないが、これは構成がよく考えられているからこその衝撃のラストだった。単に映像を羅列しただけでは絶対にこうならない、編集も上手いからこその面白さもある作品だとうならされた。
そのラストを含め、これまで書いてきた作品の特徴を目の当たりにして、前述した名だたる映画監督の絶賛も理解できた。本作からは、ポール・トーマス・アンダーソン監督が「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でみせた狂気を伴う感情の動き、アルフォンソ・キュアロン監督が「ROMA/ローマ」の長回しとモノクロームの映像で提示したミニマムかつ壮大にも思える内容、果てはアリ・アスター監督の「ヘレディタリー/継承」のような「家族という呪い」や「逃げ場のない恐怖」さえも感じられる。
そして、本作を配信やソフト化を待って見る、という選択肢は全くおすすめできない。なぜなら本作が、動物たちの動きや小さな音の1つ1つに集中できる映画館でこそ、真価を発揮する作品だと断言できるからだ。もしも家庭で同じ内容を見たとしても、他の雑音などで気が散ったりしてしまったり、そもそも説明がない映像に没入しにくくなってしまうだろう。ぜひ劇場で、ブタさんのブヒブヒを聞きながら同時に「世界」も感じる、かつてない映画体験をしていただきたい。
(ヒナタカ)
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