「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が終わってしまった 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME:3」レビュー(1/2 ページ)

本当につらい。

» 2023年05月13日 20時30分 公開
[将来の終わりねとらぼ]

 エンドクレジットが過ぎ、シリアルの乾いた咀嚼(そしゃく)音と満足感に身を委ねながら、同時に深い喪失感に包まれたのは私だけではないだろう。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のトリロジーは、これ以上ない完璧な形で幕を閉じた。

 ピーター・クイル=スター・ロード、ガモーラ、ネヴュラ、ドラックス、マンティス、グルート、クラグリン、ヨンドゥ、そしてロケット・ラクーン。公開済の劇場作品のみでも既に30作品を超えるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の異端児、魅力的なキャラクターたちの、ゴキゲンな音楽をたずさえたビビッドなスペースオペラを、これ以上見ることはかなわない。今のところ。

動画が取得できませんでした

 今でも第1作「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の公開当時を思い出す。終始シリアスで重厚なポリティカル・スリラー「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」のリリースからそれほど間を開けることなく公開された本作は、その予告編から異質さを放っていた。

 「アベンジャーズ」でのロキとの戦いから舞台は一転、宇宙をかけるならずものたちの冒険。果たしてこの物語はどこに向かうのか? 彼らをどうアベンジャーズと絡めるつもりなのか?

 主演、クリス・プラット(誰?)。ブラッドリー・クーパーの役はアライグマで、ヴィン・ディーゼルに至っては木人間(何で?)。監督ジェームズ・ガンは「悪魔の毒毒モンスター」で知られるトロマ出身(「本当に誰?」)……。

 私の抱えていたそれら一抹の不安は、上映開始わずか数分で吹き飛ぶことになる。“カム・アンド・ゲット・ユア・ラヴ”のファンクなイントロを引っ提げて、スクリーンを埋め尽くすこれ以上ないほどデカデカと掲げられた「GUARDIANS OF THE GALAXY」のロゴを見た瞬間、どうでもよくなってしまったのだ。

 次々と現れる一癖も二癖もあるキャラクターたち、休む間もなく放たれる彼らの言葉の掛け合い、キレキレな色使いにハイレベルなアクションシーン、何よりも全てがピーター・クイルと母親との刹那に収束していく鮮やかな脚本と、それを彩る往年のベスト・ヒット。120分弱という上映時間も鑑みて、40年前に「スター・ウォーズ」に初めて触れた観客はこういう気持ちだったんじゃないかなと本気で思うほどに、劇場を出た後の足取りは軽かった。

 3年後の「Vol.2」(邦題「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーリミックス」)ではますますセンスに磨きがかかる。もはや笑っていない時間のほうが少ないのではないかと思うほどに詰め込まれたコメディーの渦に絡めとられながら、最後にはきっちりと父と息子、関係性についての話に着地する。もはやこれからの人生、“ミスター・ブルー・スカイ”を聴きながら、ヨンドゥのことを思い浮かべないのは難しいだろう。

 そしてついに公開された「Vol.3」では、これまで片りんを見せつつも隠されてきたロケットの過去について語られる。なぜ彼は仲間を心では信頼しつつも、裏切られるかもしれないとおびえ続け、あえて彼らを危険にさらすような行動をとってしまうのか。

 「Vol.2」でのヨンドゥからの指摘を経て、自分が向き合わなければならないものを自覚した彼の物語は「Vol.3」で結実する。そのバックグラウンドの描き方は非常に重く、これまでの「ガーディアンズ」と比較しきれないほど心を締めつけるものだ。

「この三部作はロケットがどこからきた何者なのかという物語が核」「(いつからロケットを主役にしようと考えていたのか、という質問に対し)本当に最初からです」ジェームズ・ガン(パンフレットより)

 「ガーディアンズ」の面々は強さや明るさと引き換えに、誰もが寂しく、欠けた部分を持つ。愛する者の相次ぐ喪失に囚われていたクイル。復讐に燃えながらも大きな悲しみを抱えるドラックス。自分の行動理念が見つからないマンティス。父・サノスの存在におびえながら、姉へのゆがんだ感情を抱えていたネヴュラ。自分を認められないロケット。

 こうしたいびつさを埋め合うためのチームが「ガーディアンズ」という擬似的な家族だ。同時に、だからこそ彼らが自らの望むものを口に出し、それぞれの道へ進むという結論でしか、この物語が終わることはない。そして、そのように終わった。

 物語を続けようとすればいくらでもできるだろう。それこそクラグリン、グルートを含む新チームの活躍、インフィニティ・ストーンによる人類消失を生き残った者同士であるネビュラとロケットの絆、ラヴェジャーズでのガモーラの物語、アダムのその後……。これらの続編やスピンオフが見たくないとは言わないが、今回の結末以上のものは決して出てこないだろう。今はそのことに関する深い納得と、どうしようもない寂しさがある。

 ガンは今後マーベル映画を離れ、DCコミックスの映画シリーズを統括するDCユニバースの責任者として就任することが決定している。もし「ガーディアンズ」ロスを感じており、マーベル映画の中でも特に「ガーディアンズ」での語り口やコメディーセンスが好きだという方がいたら、是非ガンの監督したDCドラマシリーズ「ピースメイカー」をお勧めする。

 同作は「ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結」(2021)のスピンオフドラマではあるものの、単体でも楽しめる。キャラクターはやはり非常に濃く、奇しくも「ガーディアンズ」トリロジー、とりわけ「Vol.3」と非常に近いテーマが描かれている。

 監督の新天地での活躍を祈りながら、帰還をもどこかで期待してしまう。しかしながら今は彼ら、MCUの中でも極めて特異な愛すべき物語を生み出してくれた監督、キャストたちを筆頭とする、全ての製作陣に深い感謝を述べたい。まさに最強の作品だった。

将来の終わり

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/21/news163.jpg Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  2. /nl/articles/2503/20/news012.jpg 底なし食欲モンスターがいる池の水を、全部抜いてみたら…… 思わずブチギレた異様な光景に「半端ない」「複雑ですね」
  3. /nl/articles/2503/20/news026.jpg プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが550万再生「凄すぎて笑うしかないw」「チーズが、、、」 話題になった作者に話を聞いた
  4. /nl/articles/2503/22/news012.jpg 「ワークマン商品で1番使ってる」 2500円で買える“多機能バッグ”に反響続出 「これはすごく重宝します」「隠れた名品」
  5. /nl/articles/2503/18/news071.jpg 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  6. /nl/articles/2503/19/news030.jpg 19万8000円で購入した超高級魚を、4年間育てたら…… ド肝を抜く“大変化”に「どんどん色が」「すごい」
  7. /nl/articles/2503/19/news019.jpg 水族館のイカに“指でハート”をしてみたら… “まさかのお返し”が190万表示「こ、こんなことあるのか」
  8. /nl/articles/2503/21/news035.jpg 白髪染めをやめていた60代女性、4年ぶりに髪を染めると…… “-5歳見え”の大変身に「すごーい!」「声がでちゃった」
  9. /nl/articles/2503/21/news031.jpg 「UNIQLO製品で一番かも」 ユニクロ新作“5990円セーター”に大絶賛の声続出 「これは買って良かった」
  10. /nl/articles/2503/21/news116.jpg マクドナルド、次のハッピーセットをWで“チラ見せ”…… “レジェンド”なキャラの正体に「激アツ案件!!」「きゃー!たのしみ」【ハッピーセットまとめ】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  2. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  3. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  4. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
  5. ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  6. 「絶対当たったわこれ」→「は?」 ガリガリ君の棒に書かれていた“衝撃の文章”に「そうはならんやろ」 投稿者に当時の思いを聞いた
  7. コメダ珈琲店で「軽い食事」を注文 → 出てきた“まさかの実物”に思わず大仰天 「逆詐欺ですね」「軽食という名の主食」
  8. 最恐雑草“ヤブガラシ”根元をハサミでチョキッと切ると…… “驚愕の結末”に「すごい」「知りませんでした」
  9. 「笑い過ぎて涙が」 小学生次男、宿題で先生に不正を疑われる→まさかの原因が530万表示 「じわじわくる」 投稿者に話を聞いた
  10. 大阪梅田駅で撮影された“奇跡のような光景”に「今まで見たことない」「本当に贅沢な眺めだ」 全ホームにマルーンカラーが整列
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に