「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が終わってしまった 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME:3」レビュー(1/2 ページ)
本当につらい。
エンドクレジットが過ぎ、シリアルの乾いた咀嚼(そしゃく)音と満足感に身を委ねながら、同時に深い喪失感に包まれたのは私だけではないだろう。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のトリロジーは、これ以上ない完璧な形で幕を閉じた。
ピーター・クイル=スター・ロード、ガモーラ、ネヴュラ、ドラックス、マンティス、グルート、クラグリン、ヨンドゥ、そしてロケット・ラクーン。公開済の劇場作品のみでも既に30作品を超えるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の異端児、魅力的なキャラクターたちの、ゴキゲンな音楽をたずさえたビビッドなスペースオペラを、これ以上見ることはかなわない。今のところ。
今でも第1作「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の公開当時を思い出す。終始シリアスで重厚なポリティカル・スリラー「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」のリリースからそれほど間を開けることなく公開された本作は、その予告編から異質さを放っていた。
「アベンジャーズ」でのロキとの戦いから舞台は一転、宇宙をかけるならずものたちの冒険。果たしてこの物語はどこに向かうのか? 彼らをどうアベンジャーズと絡めるつもりなのか?
主演、クリス・プラット(誰?)。ブラッドリー・クーパーの役はアライグマで、ヴィン・ディーゼルに至っては木人間(何で?)。監督ジェームズ・ガンは「悪魔の毒毒モンスター」で知られるトロマ出身(「本当に誰?」)……。
私の抱えていたそれら一抹の不安は、上映開始わずか数分で吹き飛ぶことになる。“カム・アンド・ゲット・ユア・ラヴ”のファンクなイントロを引っ提げて、スクリーンを埋め尽くすこれ以上ないほどデカデカと掲げられた「GUARDIANS OF THE GALAXY」のロゴを見た瞬間、どうでもよくなってしまったのだ。
次々と現れる一癖も二癖もあるキャラクターたち、休む間もなく放たれる彼らの言葉の掛け合い、キレキレな色使いにハイレベルなアクションシーン、何よりも全てがピーター・クイルと母親との刹那に収束していく鮮やかな脚本と、それを彩る往年のベスト・ヒット。120分弱という上映時間も鑑みて、40年前に「スター・ウォーズ」に初めて触れた観客はこういう気持ちだったんじゃないかなと本気で思うほどに、劇場を出た後の足取りは軽かった。
3年後の「Vol.2」(邦題「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーリミックス」)ではますますセンスに磨きがかかる。もはや笑っていない時間のほうが少ないのではないかと思うほどに詰め込まれたコメディーの渦に絡めとられながら、最後にはきっちりと父と息子、関係性についての話に着地する。もはやこれからの人生、“ミスター・ブルー・スカイ”を聴きながら、ヨンドゥのことを思い浮かべないのは難しいだろう。
そしてついに公開された「Vol.3」では、これまで片りんを見せつつも隠されてきたロケットの過去について語られる。なぜ彼は仲間を心では信頼しつつも、裏切られるかもしれないとおびえ続け、あえて彼らを危険にさらすような行動をとってしまうのか。
「Vol.2」でのヨンドゥからの指摘を経て、自分が向き合わなければならないものを自覚した彼の物語は「Vol.3」で結実する。そのバックグラウンドの描き方は非常に重く、これまでの「ガーディアンズ」と比較しきれないほど心を締めつけるものだ。
「この三部作はロケットがどこからきた何者なのかという物語が核」「(いつからロケットを主役にしようと考えていたのか、という質問に対し)本当に最初からです」ジェームズ・ガン(パンフレットより)
「ガーディアンズ」の面々は強さや明るさと引き換えに、誰もが寂しく、欠けた部分を持つ。愛する者の相次ぐ喪失に囚われていたクイル。復讐に燃えながらも大きな悲しみを抱えるドラックス。自分の行動理念が見つからないマンティス。父・サノスの存在におびえながら、姉へのゆがんだ感情を抱えていたネヴュラ。自分を認められないロケット。
こうしたいびつさを埋め合うためのチームが「ガーディアンズ」という擬似的な家族だ。同時に、だからこそ彼らが自らの望むものを口に出し、それぞれの道へ進むという結論でしか、この物語が終わることはない。そして、そのように終わった。
物語を続けようとすればいくらでもできるだろう。それこそクラグリン、グルートを含む新チームの活躍、インフィニティ・ストーンによる人類消失を生き残った者同士であるネビュラとロケットの絆、ラヴェジャーズでのガモーラの物語、アダムのその後……。これらの続編やスピンオフが見たくないとは言わないが、今回の結末以上のものは決して出てこないだろう。今はそのことに関する深い納得と、どうしようもない寂しさがある。
ガンは今後マーベル映画を離れ、DCコミックスの映画シリーズを統括するDCユニバースの責任者として就任することが決定している。もし「ガーディアンズ」ロスを感じており、マーベル映画の中でも特に「ガーディアンズ」での語り口やコメディーセンスが好きだという方がいたら、是非ガンの監督したDCドラマシリーズ「ピースメイカー」をお勧めする。
同作は「ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結」(2021)のスピンオフドラマではあるものの、単体でも楽しめる。キャラクターはやはり非常に濃く、奇しくも「ガーディアンズ」トリロジー、とりわけ「Vol.3」と非常に近いテーマが描かれている。
監督の新天地での活躍を祈りながら、帰還をもどこかで期待してしまう。しかしながら今は彼ら、MCUの中でも極めて特異な愛すべき物語を生み出してくれた監督、キャストたちを筆頭とする、全ての製作陣に深い感謝を述べたい。まさに最強の作品だった。
(将来の終わり)
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