漫画海賊版サイト「漫画村」にサーバを提供していた米Cloudflareに対し、漫画家が運営者情報の開示を求める訴訟を起こしていたことが分かりました。管轄は東京地方裁判所で、訴状は4月16日付で受理されています。漫画村問題でCloudflareが提訴されるのは初。
原告は「人生リセット留学。」や、ドラマ化された「ウォーキン・バタフライ」などの著作を持つ、漫画家のたまきちひろさん。自身の作品が漫画村に無断で掲載されていたことから、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者(漫画村運営者)の情報開示を求めてCloudflareを提訴しました。代理人は弁護士法人東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士。
Cloudflareの本社はアメリカ(カリフォルニア州)にありますが、裁判は日本国内で、日本の法律に基づいて行われる形。中島弁護士によれば、Cloudflareは東京と大阪にデータセンターがあり、また日本向けにサービス提供を行っている実態もあることから、東京地裁での裁判が認められたといいます。
裁判の行方については、「(情報開示を)認められる判決が出る可能性は高いと考えています」と中島弁護士。「もしもCloudflareが開示に応じない場合は、アメリカでの判決の承継や、デジタルミレニアム著作権法に基づき、Cloudflare側が反復侵害者(漫画村)に対し、適切な措置をとらなかった責任追及を検討します」とのこと。ただし、Cloudflareは既に日本のメディアの取材に対し、任意に一部の情報を開示しているため、Cloudflare側も開示を拒否する可能性は低いのではとのことでした。ただ、情報が開示されたとして、それで即“運営者特定”となるかは不透明で、その後どうするかについては「結果次第」だといいます。
たまきさんと中島弁護士は以前から付き合いがあり、重大な著作権侵害行為に対して誰かが行動しなければとの思いから、弁護士報酬は発生させない形に。他の漫画家からも「漫画村を訴えたい」という相談を受けていたことから、今回の訴訟に踏み切ったといいます。訴訟の目的について中島弁護士は次のように語りました。
「そもそも『漫画村が違法』という点について、公の判断はまだ下されていません。まずは『明白に権利侵害があった』(プロバイダ責任制限法4条1項1号)と司法に判断してもらうというのが1つ。そしてもう1つ、日本やアメリカの判例では、権利侵害を認識し、それを放置した場合などには、サーバ会社も責任を負う可能性がある旨が示されています。したがって『サーバを貸している会社も同じように責任を問われる』可能性があるということを示せれば、今後類似のサイトが出てきても対処しやすくなるのではと考えています」(中島弁護士)
第1回公判は9月に予定されており、最短で審理が進めば年内には判決が出る可能性も。漫画村は4月以降閲覧できない状態が続いており、実質閉鎖したとみられていますが、誰が運営していたのかなどについてはいまだ不明なままとなっています。
※画像提供:中島博之弁護士
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