すっごく元気でめちゃくちゃおバカ。テレビアニメ放送中の「手品先輩」(原作/アニメ)は、失敗率が限りなく100%に近いポンコツ手品コメディ。いろいろあやういハプニングとめげなさすぎる先輩との楽しくて厄介な日々、これもまた青春。
先輩が夢中になっては失敗ばかりしている、手品・奇術。作品中に登場する奇術は、かなり幅広いジャンルをカバーして取り扱われています。その一部をチェック。
スライハンド
作品タイトルは『手品先輩』ですが、彼女が守っている部活動の名前は「(たのしい)奇術部」です。
手品と奇術の語の意味は、基本的には同じです。英訳するとどちらもmagic。文章によっては、目の前で見せるトリック的なものを「手品」、それらをひっくるめて大規模なものや科学的なものなど驚かせるテクニック全てをまとめて「奇術」と分けることもあります。
この考え方でいくと、相手がびっくりすることなら全部アリ、というの先輩の考え方は「奇術」寄りです。
観客の目の前で見せる一般的なスタイルのマジックを「クロースアップマジック」または「テーブルマジック」といいます。
「いろんな意味でツッコミたい……」という助手の発言にツッコミたいところですがそれはさておき。カードやコインなどを手の内で巧みに操って見せるジャンルが、スライハンド。先輩の解説が光る。
このページの場合、口からカードが出る仕組みはある程度分かっていても、それを実際に目の前でやってみせる技術が面白い。「※イメージです」って書いているけど、先輩も人前じゃなければできそうな気がする。
四つ玉もメジャーなスライハンド。タネ明かしはここに書かれていますが、分かったところでまねができない。こういうのがちょっと理解できている上で見ると、さらに感動が増します。そして先輩の努力たるや涙ぐましい。
「べひもす君」こと、スプリングアニマル。これもテクニックを見せること自体がメインです。なお先輩はあまりうまくありませんが、助手は特に練習しなくても適性抜群なのかスイスイ動かしていました。奇術に興味がない彼でも、これはお気に入りらしい。
コイン貫通マジックもスライハンドの1つ。先輩は奇術の天才ではありませんが、ものすごい努力家で常時練習して、技術を身につけ続けています。もっとも本人はこれらの練習を苦だと全く思っておらず、常に楽しんでいます。はたから見るとちょっと間の抜けたシーンですが、何らかの練習に夢中になったことのある人は先輩側に感情移入できるのでは。
ギミック
スライハンドが技術重視なのに対し、仕掛けをがっちり作っておくのがギミック型マジック。仕込みをしっかりしておくことや知識量が重要になってきます。あとだいぶお金がかかる。
先輩が使っていたフラッシュペーパーも奇術ではよく見るもの。手から一瞬炎を出すときに使うものです。正式名はニトロセルロース。燃やしても、灰も煙も出ません。綿状の「フラッシュ・コットン」、ひも状の「フラッシュ・ストリング」というものもあります。
化学反応を使ったもので、物を買えば誰でもできる。ただこれ一回のネタに使うにはそこそこ高い。数枚で1000〜2000円近くします。
ハトを出すマジックも大体がギミック型。ちなみにハトや花や杖やボトルなど、何かを出すマジックをプロダクションと呼ぶそうです。
先輩が解説している通り、手品でよく使われている白いハトはギンバト。白が好まれるのは、華やかさ重視のため。ちなみに一般的には数千円くらい。
手品先輩はどちらかに特化するのではなく、スライハンドの練習をしつつ、ギミック手品にも挑んでいるため、時間もないしお金もない。手品の大変さを知れば知るほど、高校の3年程度じゃ足りないというのがよく分かります。ハトを買うためにバイトをしていたこともありました。
イリュージョン
仕掛けのあるネタの中でも、大掛かりなものを総称してイリュージョンと呼ぶこともあります。テーブルマジックに対して、ステージ上や広場などで行う場合が多いです。先輩、もちろんこっちにも手をつけています。
人体切断や串刺し、空中浮遊のようなド派手なものは、テレビではおなじみだけれども目の前で見る機会はそう多くはないかも。
この手のイリュージョンは時代ごとにタネが明かされることがあるものの、さらにそれすら超越したものが次々出てくるから恐ろしい。でも先輩の串刺しマジックのタネは「避ける」でした。力技にもほどがある。
脱出イリュージョンは超大型マジックの1つ。ただし危険度はものすごく高い上に、訓練もものすごく必要なので、実践できる人は限られています。当然、手品先輩のような素人がやってはいけない。
先輩も解説している脱出王ハリー・フーディーニ。水中の中から脱出するイリュージョンなど、より過激なものへと挑戦し、多くの人を驚かせました。割と歴史を調べている彼女なので、フーディーニに憧れるのも分かるけれども、こればかりは助手が必死に止めました。
何にだって挑む先輩
江戸時代の日本では、手品・奇術のことを「手妻」と呼んでいました。これは「手を稲妻のように早く動かす」という意味。現代では和妻と呼ばれるこのジャンルにも挑戦。しっかり勉強済み。できるかどうかは別。
奇術には多様なジャンルがありますが、先輩はなんでも楽しそうに試します。催眠術も試していましたが、マインド系はスライハンドやギミックのような奇術の考え方と基盤が違うので、当然できるはずもなく。
例えば1巻で先輩が助手の鍵を盗んでパンの中に入れていました。もう手品でもなんでもなく、「ドッキリ」に近い。驚かせる何かをしたい、その練習をするのが楽しい、でも緊張してできない、だからもっと挑戦したい。それがどんなものであろうと、何もかもが楽しいんでしょう。
作中で何度か、手品先輩がマジックうんちくをベラベラしゃべるシーンがあります。聞く相手としては、オタクトークが続くのはしんどくて仕方ない。けれども第三者としてみていると、奇術が大好きでしかたない! という先輩のキラキラした瞳は、あまりにもまぶしい。
いっぱい勉強して、いっぱい練習して、いっぱい失敗して。好きだからずっと一人で奇術の練習をしてきたけれども、今は助手と、咲ちゃんと、まーくんがいる。彼女の充実した日々の、上がり続けるテンションを止められる人なんていません。
(たまごまご)
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ちゃらんぽらんの度が過ぎると無敵になります。